どうも、鉄道とゲーセンに人生の分岐器を握られてきた私です。
今回は、柏駅を利用していた鉄道民にとって、ひとつの時代の終着駅が訪れました。
■マルチカが、なくなる。
この一文だけで、心臓がワンコイン分キュッと縮んだあなた。同志です。
柏といえば、JR常磐線と東武アーバンペレンコドッペンコーライン(※未だに野田線って呼んでるやつ、正直に手を挙げよう)が交差する鉄道の十字路。そして、その十字路の地下深く、光の届かぬ階層に広がっていたのが、マルチカ——正式名称「柏マルチカプラザ」なる秘密基地。
駅の陽だまりに満ちたベネストリアンデッキ? そんなものは陽キャ専用通路だ。
我々陰の戦士たちは、あえて改札出てすぐの地下階段を選んだ。誰に案内されたわけでもない、むしろ「来るな」と言わんばかりの薄暗い階段。あそこを降りると、ガラッと世界が変わる。
■そこはもう一つの時空だった
最初に目に飛び込むのは、SEGA AM2研の体感ゲーム機。「アフターバーナー」「アウトラン」……時に操縦桿、時にバイクのハンドル。
そこでは乗り換えではなく“乗機”が求められた。切符じゃなくて100円玉が通貨。PASMOなど使えるわけもない。
常磐線の車内では口を開かないあの学生が、ストⅡの前では目つきが変わっていた。
東武線で黙々とスマホをいじっていたあのサラリーマンが、バーチャファイターで空中コンボを決めていた。
■マルチカの変遷、それは時代のレールを写すミラー
気づけばUFOキャッチャーの島が拡大し、
本屋が出現し(※なぜかBLコーナーが妙に充実)、
極めつけは「男性立入禁止」のプリクラゾーン——あれはまるで、特急列車のグリーン車に自由席切符で乗ってしまったような場違い感。
レトロゲームの列も縮小し、「ポリゴン疲れ」した我々の避難所は次第に失われていった。
それでも、マルチカは「まだある」という事実だけで、日常のストレスに立ち向かう心のホームだったのだ。
■マルチカのない柏は、ホームのない列車のようなもの
マルチカの閉鎖は、鉄道で言えば終電の案内を見て「あと1本はあるはず」と信じていた乗客が、現実を突きつけられる瞬間に似ている。
これからは柏駅に降りても、あの階段を降りても、もう別世界には行けない。
行き先表示の「マルチカ行」は、永久欠番となったのだ。
ありがとう、マルチカ。
君は100円玉で時空を超える列車だった。
鉄道好きとして、そしてゲーム戦士として、君の廃止を見送る手は少し震えている——
いや、これは涙で震えているんだ。
次はどの駅で、どんな「異世界」が待っているのだろうか?
次回、「大宮の地下にて未確認ゲーセンを発見?」でまた会おう。