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なんか幼稚園の頃泥だんご壊して逆ギレされた拓くんが宣伝してくれたみたいです。ってわけで、つづき、よろしくお願します




3日前の水曜日、教室で、「付き合ってくれ」と言ったのは涼太の方だ。ホームルームが終わり、クラスメート達が部活へ行ったため偶然2人きりになったときのことである。

晴夏も涼太も異性から人気がないわけではない。自分で言うのもおかしいがどちらもほどほどに端麗な容姿であるし、話しかけにくいわけでもないからだ。でもどちらもできるだけ目立たないようにしていたので、同じ香りがすることはクラス替えの直後から感じていた。1学期の半ば頃にはお互い若干ではあるが意識していた自覚がある。

晴夏はいわゆるお嬢様タイプの生徒であり、膝上5センチ程度に抑えられたスカートとハイソックスとの隙間に少しだけ見える白く細い脚を魅力的に感じる男子生徒も多いようだ。
事実、晴夏の父親は成長中の中小企業の社長であり東雲にあるタワーマンションの33階に100平米超の部屋を構えている。
金に不自由するわけないであろう晴夏だが、中2の頃から援助交際をしている。深い理由は特に無く、「2回やれば月の小遣いの額を超えるから」だそうだ。あの容姿と年齢からすれば1回あたり4万はいけるだろうと涼太は考えるが深く詮索はしない。
涼太達の通う山手の文教地区にある私立中では、生徒が援助交際をしているなどと教師は夢にも思わないようで未だに晴夏の実態はばれていないらしい。
というより、援助交際の事実を知っている生徒は当事者の晴夏を除けば涼太だけのようだ。

涼太はお坊っちゃまタイプではないものの実際は資産家の両親の元へ生まれた。先祖代々江戸の頃から渋谷区内の各所に土地を持つ家系であり両親の所有するマンションや駐車場の賃貸収入だけで毎月都内のサラリーマンの平均年収分位は口座へ入ってくる。父親は趣味で教師をしている。母親は専業主婦ではあるが田舎から嫁いだことを悟られたくないのか、日々社交ダンス教室や料理教室へ通っている。両親共に1人息子である涼太を甘やかして育て、欲しいと言ったものを買ってもらえなかった記憶は未だかつてない。もっとも非現実的なねだりものをしたことがないのも理由ではある。

入学時から目立たないようにしているものの、中学に入学してから一目惚れで3回ほど告白を受けたことがある。成績は上の中ほど、上位層と言っても良い程度を維持している。

2人が付き合うことになった理由はただ単にひと月ほど前にラインをするきっかけがあり、続けていたらお互い相当似たものどうしであることがわかったからだ。きっかけは晴夏が「明日の予定、なにー?^m^」と猫かぶった状態で聞いてきたことである。
根が正直な涼太は「え?なんで俺に聞く?接点ねーじゃんw明日は5教科と教養だよ」と返した。その結果なぜか晴夏に気に入られたようだ。
それ以来だんだんお互いの本性も見えてきた。そして、仲の良い「友達」になった。そして涼太は人生で初めて恋心を抱いた。向こうも(援助交際は除く)恋愛未経験であることはリサーチ済みだし感触も悪くなかったので告白に踏み切った。
放課後の教室で帰宅部の晴夏は1人で自習することを知っていたので持ち物整理をしているように誤魔化して2人きりになるタイミングを待った。
担任の川井が消えた。今だ。

「好きだ」のあと、何も続かず30秒程たったが

「うんわかった。あたしと付き合いたいんだよね?今まだ気持ち整ってないから後でね!」

最高に情けなかったがフォローに感謝した。

その場では聞けなかったものの結果は「え?うちと?いいよ。楽しくしろよ」とあまりスイートな返事は得られなかった。でもまあオーケーということだろう。返信を見ながら帰りの地下鉄でにやついてしまったのは事実だ。
返信を考えていたら「初デート。土曜日。絶対空けて。天王洲アイル、りんかい線改札。1時で」と来た。りんかい線で通学している晴夏にとって非常に手軽な待ち合わせ場所だが、デートのときは男が遠出すべきなのかなと恋愛経験のないなりに考え「オーケー。そっちこそドタキャンすんな。ライン続けるとデートで話すことなくなるから土曜まで返さんぞ」とだけ返した。1分と開かずに「あんたらしいわ。冷たいながらに優しいんだよね。楽しみにしといてやるよ。じゃあ、返信なしで」
そっけなく返ってきたのだが、返信の速さから自分のラインを待っていたのを感じさせられ幸せな気分になった。その日は浮かれたまま乗り換え通路で壁に頭をぶつけ額の上に小さなたんこぶを作り、外科へ直行する羽目になった。ロン毛のおかげで隠すことができたが思い出すだけで顔から火が出る思いである。



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とりあえず手を握ってみた。とたんに声がとんでくる

「え?案外積極的じゃんー。90点ってとこー?」

初デートなのでいきなりこうしていいのかわからなかったが晴夏にしてみれば満足だったらしい。

10月だが軽く歩いただけで汗ばみそうな陽気だ。手汗をかかなければいいなと思いつつ羽田線に沿って北へ向かう。なかなか変わらぬ信号を待っていてふと手を見るといつの間にか指が絡み合っていた。それがカップル繋ぎと言われるものだということはわかっていたがこんなに早く体験するとは思っていなかった。

「最初っからこれやってくれれば満点あげたのにねー。まあ初デートの童貞野朗に期待しちゃダメだったかな、あはは」

「うっせえ。だれが童貞だ!悪かったな、満点じゃなくて」

「あれー?童貞じゃなかった?あたしの目がおかしかったか..?」

「はいはいどーせ童貞ですよ!はっきり言わせんな」

「潔いねー。褒めてあ!げ!る!」

最後にハートマークがつきそうな勢いで言われたが全く嬉しくない。
信号が変わった。天王洲アイルの高層ビル群を目指して歩き出す。絡めあった指の感触が鼓動を大きくする。
互いに無言のまま涼太がリードして歩く。
モノレール駅の横から天王洲アイルに入るとシーフォートスクエアだ。

「昼飯、食った?」

自分が食べていないので聞いたが、1時10分を回ったところなのに失敗したかなと思った。
案の定

「終わったよ。まさか涼太まだってことないでしょー?」

と言われた。

「ま、まあな。でもいいわ。海見よーぜ」

「無理すんなって。まさか彼女と海見ながらお腹の音聞かせる気?あたしも実は少ししか食べてないんだー」

「なんか悪いな。で、何がお好み?」

「んー、和食系?」

意外な答えだ。丁度丸亀製麺が見えるのでうどんですませようと思った。

「じゃああそこでいいな。うどんも好きだろ?」

「うん!」

元気の良い返事がかわいい。可愛い顔と無邪気な声のコンビネーションは世の男の全てが好むだろう。
若干気味の悪いことを考えながらも再び手を引いて歩き出した。
土曜でも1時を過ぎた店内は空いている。

「カップル様ですねー、向かい合った2人席がございますのでお掛けください」

ちっくしょう。あの店員、絶対からかっている。顔が整っているから余計に腹が立つが顔に出すとまた減点されそうなので「ありがとうございまーす」とにこやかに着いていく。後ろで晴夏が吹き出しそうな顔をしているが、やはり気づかれたのだろう。
席についた途端

「あはは。あの店員さんの目超笑ってた!絶対楽しんでるだろ」

晴夏は大口を開けてテーブルを叩きながら笑い続けている。

「女子力...」

涼太はそれだけ言った。

「え?うちのこと?女子力高いって?ありがとー」

またもやハートマークがつきそうな勢いで言われた。

「だれがいつ女子力高いって言った?大口開けてテーブル叩きながらガハガハ笑う女子に!」

「まあ明るい彼女いて幸せだね、涼太♡」

「だからなあお前....」

「ああそうだメニューメニュー。あの店員さん注文とるの待ってるよ、絶対!」

「俺は..讃岐うどんだな。大盛りにしよう」

「じゃ、あたしもそれで!」

「お前そんなに食えんの?」

「だってさぁ、あたしが残したら涼太が食べてくれるでしょ?間接キスのサービスよー」

「おいふざけんな。」

「ご注文お決まりでしょうか。」

ものすごいタイミングで音もなく例の店員が現れた。さすがだ
晴夏が答える

「えっと、讃岐うどん、大盛り2つで」

「了解しました。うどんの大きさはハートの大きさ。」

謎の言葉を残して去っていった。




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