ラインハルトが帰った後、仁は物思いを中断して瓦礫置き場へと足を運んだ。気分転換にもなるし、エルザへの誕生日祝いを作らなくてはと考えて。
壊れたゴーレムの破片から使えそうな素材をいただこうという心算。
壊れたゴーレムからの資材も本来なら全て回収して、今で言うリサイクルするのがいいのだろうが、例えばミスリルメッキに使われているミスリルを回収するとなると手間が掛かる割に回収できる量が少ないため現実的ではない。故に瓦礫置き場は山となっている。紐斯葆OB蛋白痩身素
だが、個人であればそんな効率は無視できるというもの。それで仁は瓦礫漁りに来たというわけである。もちろん瓦礫の管理人には断ってある。
「うーん、ほとんど鉄か青銅だなあ」
それはそうであろう、貴重な素材は動員された魔導騎士や魔導士達が回収してしまったのだから。
それでも探せば見つかるもので、
「お、この青銅はミスリルでコーティングされているな」
「やった! ミスリルの欠片だ」
と、少しずつではあるが、ミスリルが溜まっていった。
だが、なかなか剣を作るだけの量にはならない。
「あら、ジン君、なにやってるの?」
との声に顔を上げると、セルロア王国の魔法工作士マギクラフトマン、ステアリーナが立っていた。
「あ、ステアリーナさん」
「材料探し?」
「ええ、そうなんですよ」
「また何でこんな時間に?」
ステアリーナの疑問ももっともである。時刻は大体5時過ぎ、もうあたりは薄暗い。
「ああ、ちょっと急ぎで作りたいものがあって」
と仁が答えると、
「ふうん、大変ね」
と言った後、
「あなたも魔法工作士マギクラフトマンでしょ? 全部を一塊にして、成分を分離していけばいいんじゃなくて?」
と言ったのである。
「な、なるほど……その手があったか」
感心する仁。そのやり方は確かに確実である。
ステアリーナはそんな仁を見て、
「……なーんてね。そんなことできるわけ……」
と言いかけたが、
「『融合フュージョン』!」
全開の仁は目の前にあった瓦礫を一瞬で一塊にしてしまった。
「え?」
「『抽出エクストラクション』銅。『抽出エクストラクション』鉄。『抽出エクストラクション』錫。『抽出エクストラクション』亜鉛。『抽出エクストラクション』ミスリル。『抽出エクストラクション』軽銀…………」
「ええ? えええ?」
何が起きたのかわからないうちにステアリーナの目の前に、銅、鉄、亜鉛、錫、そしてミスリルなどの塊が出来ていったのである。
「……ふう」
さすがに少し疲れたような顔の仁。目の前にあった瓦礫の総量は10数トンはあっただろう。それを一度に『融合フュージョン』し、成分毎に『抽出エクストラクション』。それを短時間に行ってしまったのだから無理はない。
「あ、あ、あ、あなた、なにやったのかわかってるの?」
「はい?」
自分が言ったことなのに何驚いてるんだろう、と訝しげに仁はステアリーナを見た。
「普通の魔法工作士マギクラフトマンが数日かけてやるような事をあんな短時間でやってしまうなんて……」
「え?」
冗談で言ったステアリーナの言を真に受けてしまった仁はやってしまったか、と後悔するがもう遅い。しかしそこで名案がひらめいた。
「あの、ステアリーナさん?」
おずおずと声をかけた仁に、
「……なに、ジン君?」
後じさりしながらステアリーナが返事する。口封じされるとでも思ったのだろうか。
「タネはこれですよ」
と、仁は手に持ったものを見せた。
それは石。夕暮れの光に暗い水色に光っている。
「……もしかして、エルラドライト?」
「ええ。ほら、ドミニクを捕まえた時、取り上げたまま忘れていたんですよ。この後ケリヒドーレさんに渡すつもりですが、一度くらい使ってもいいでしょ?」
そう言って笑って見せた。実はエルラドライトを持ってはいたが使ってはいない。だがそんなこととは知らないステアリーナは安心する。
「なあんだ、そうだったのね。びっくりしちゃったわよ。あんなことできるジン君、化け物かと思ったわ」
それを聞いて仁は冷や汗を流す。と同時に、是非ともエルラドライトを1個、欲しいと思うのであった。もちろん自分の力を誤魔化すためである。V26Ⅱ即効減肥
「そうね、瓦礫をこうやって使えるようにしたんだから、渡すの遅くなったくらい何も言わないでしょう。むしろ喜ぶと思うわ」
完全にステアリーナは今の離れ業をエルラドライトの力を借りて行ったと信じたようだ。
「で、作りたいものって、何?」
と最初の質問に戻る。仁は、
「短剣ですよ。女性が持つような」
と正直に答える。目の前にいる女性は腕利きの魔法工作士マギクラフトマン、助言をもらえるかも知れない。
「ふうん、誰かに頼まれたの? あ、あのプラチナブロンドのお嬢さんかしら?」
プラチナブロンドのお嬢さん、というのがエルザの事である事を察した仁は、
「いえ、頼まれたんじゃないんですけどね、前に彼女が短剣に興味持っていたので」
そう言うとステアリーナはなぜかその形のいい眉を少ししかめて、
「……もしかして贈り物にしようとか思ってる?」
と尋ねてきた。その通りだったので仁は正直に、
「はい。実は明日、彼女の誕生日だってさっき聞いたので」
そう答えるとステアリーナは仁をじっと見つめてから盛大に溜め息をついて、
「おばかさんね」
と仁を評した。
「魔法工作マギクラフトばかりやっていて女の子の扱い方知らないんでしょう?」
「…………」
何と答えたらいいかわからない仁はとりあえず沈黙を守る。
「あのね、刃物を贈るというのは『あなたと縁を切りたい』って意志の表れ。指輪やネックレスは『あなたを縛りたい』ってこと。あ、縛る、ってほんとに縛るんじゃないからね?」
「は、はあ」
「服を贈るのは『脱がせたい』って意味だし、食事に誘うのは『君を食べたい』って言う意味」
なんだかどんどん危ない話になりつつあるので仁は、
「わ、わかりました。短剣は誕生日の贈り物に相応しくない、ってことですね?」
「ええ。但し切っても切れない縁、つまり肉親から護身用に贈るとかは有りよ」
そう言われた仁は更に悩むこととなった。
「そうすると短剣はラインハルト経由で渡して貰えばいいとして、本命はアクセサリーか……」
そこまで考えて、
「じゃあ、ブローチとかだったらどうなります?」
とステアリーナに尋ねてみる。すると、
「『君の心に住んでみたい』ね」
まあまともかもしれない、と仁は考え、ブローチも作製することに決めた。
「ジン君、そろそろ夕食」
そこへエルザがやってきた。夕食時間だというのに部屋にいない仁を気遣って捜していたらしい。
「ああ、もうそんな時間か。……ステアリーナさん、いろいろとありがとうございました」
「あらいいのよ、ジン君なら」
そう言って仁とエルザを見送った。仁は後で取りに来ようと手ぶらである。
「……若いっていいわねえ」
そんな呟きは2人には聞こえなかったようだ。だが消身ステルスで姿を消したまま仁に付き従っている礼子にははっきり聞こえていた。
「ジン君、なにしてたの?」
エルザとしては当然の疑問であるが、こればかりは正直に答えるわけにも行かず、
「えーと、何か使えるものとか無いか、探してたんだ」
「物をむだにしない、ミーネがいつも言ってる。ジン君、えらい」
変な感心の仕方をされる仁であった。
仁、ビーナ、伯爵
「は、伯爵、不束者ですが、よろしくお願い致します」
ビーナはクズマ伯爵の求婚を受けることをはっきりと告げていた。痩身一号
朝、仁と話をした後、なかなか伯爵の部屋へ足が向かなくて、昼になってしまったのだが。
「そ、そうか、ありがとう。これからよろしく頼む」
そう返答した伯爵の顔色は良くない。それを見たビーナは、心配そうに尋ねた。
「あの、伯爵? どこか具合悪いのですか?」
「いや、ちょっと二日酔いでな」
と苦笑して答える伯爵。さすがにビーナの返事があやふやだから酒呑んで紛らわせていたとは言えなかった。
「伯爵もそんな所あるんですね。堅いばかりの方かと思ってました」
とビーナが言えば伯爵も、
「早くに両親を亡くして家を継いでからは仕事仕事の毎日だったからな、特に女性関係については不器用なのだ」
それを聞いたビーナはくすりと笑って、
「あまり器用でも困ります。伯爵、どうか末永くよろしくお願いします」
ともう一度頭を下げた。
「なあビーナ、正式な婚約の発表などはブルーランドに帰ってからとしても、その、なんだ……『伯爵』ではなく『ルイス』と呼んで貰えないだろうか?」
と顔を赤くしながらクズマ伯爵は言った。そう言われたビーナも顔を赤らめ、
「は、はい。る、ルイス、様」
言った方も言われた方も真っ赤になっていた。
風呂から上がったあとの仁。
ビーナのこと、エルザへのプレゼントのこと、統一党ユニファイラーのこと等をとりとめもなく考えていると、ドアがノックされた。
「はい」
仁付きの王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイドのライラよりも早く礼子が反応し、ドアを開けた。立っていたのはラインハルト。
「ラインハルトさんがお見えです」
との礼子の言葉に仁は椅子から立ち上がり、ドアまで出迎える。
「ラインハルト、どうしたんだい。とにかく中へ」
そう言って中へと招き入れた。
ラインハルトは今までクズマ伯爵と話をしていた、と前置きをし、
「ルイスとビーナの婚約が成立したのでな、ジンにもその報告、というかな」
とラインハルトは言った。
仁はとにかくラインハルトに椅子を勧め、王宮隠密侍女隊ロイヤルシークレットメイドのライラはお茶の準備を始めた。危なっかしいので礼子が見張っている。
「2人はこの後、ブルーランドへ帰ってから正式に婚約を発表する事になるだろう。その、まあ、なんだ、言い方は悪いが、平民を正妻に迎えるというのはこれでなかなか難しいので、貴族の友人に頼んで養女扱いとしてもらって、となるがな」
そう付け加える。それを聞いた仁は、時代劇で昔見たような、町人が武家に嫁入りする時みたいだ、と思った。
ラインハルトは居住まいをあらため、
「なあ、ジン。一度聞いてみようと思っていたんだが」
「ん? 何だい?」
「君は、恋愛というものをどう考えているんだい?」
そう言われた仁はさっき考えていた事に思いを馳せる。韓国痩身1号
仁とて木石ではないし、人並みに女性に興味はあるつもりだ。過去、いいな、と思った子だっている。
それは定時制高校の頃。やはり同じ定時制高校に通う子で、仁より2つ上だった。
昼間はアルバイトをしているところは仁と良く似ていた。母子家庭らしく、しかも弟が3人いて、なかなか大変だったようだ。
2年生の時に仁からそれとなく告白し、その子もいいよと言ってくれたので付き合いだした。
しかし2人とも定時制に通う身、デートらしいデートも出来ず、せいぜい少し早く教室へ来て話をしたり、帰り道駅まで一緒に歩いたりがやっと。
休日はお互いに孤児院での世話や弟の世話があってデートすらしたことがない。そんな1年が過ぎた。
そして卒業の日。
彼女はアルバイト先である会社の専務にプロポーズされたと仁に打ち明ける。そしていい話だから受けようと思っている、とも。
更に、仁との1年間、楽しかった、とも言った。
それを聞いた仁には何も言えなかった。まだ学生の自分が経済的に太刀打ちできる相手ではない。そして彼女には生活がある。好きと言うだけで縛ることは出来ない。
行くな、と言う言葉も口から出ることはなく、代わって出たのは、
「おめでとう」
と言う言葉。それを聞いた彼女は泣きそうな笑顔で一言、
「ありがとう」
と言った。彼女とはそれきりである。
それからの仁は卒業後、少々評判は悪いが給料の良さそうな会社に入社し、恋愛のれの字もないような毎日を過ごし……電気炉に落下して今に至る。
「生活、かな」
仁は一言そう答えた。
「なるほど、恋愛は生活、か。君らしいとも言えば言えるし、また随分と老けた考えだなとも言えるな」
とラインハルト。
「どうせ」
とこれも一言答える仁。
「まあ確かに今の君は生活基盤が無いからな。コンロントーはなんというか、その、異界だし」
「だよな」
「そう言う意味でも君が各国を回っているというのは意味があることだ。気に入った国があったらそこに定住すればいい。それが我がショウロ皇国であれば一番いいがね」
ラインハルトはそう言って笑うが、仁は笑う気になれない。
「何だ? 何か気に障ったかい?」
「別に」
やはり一言で答える仁。
「まあ、人と人との関わりは一筋縄ではいかないよな。まして男女の仲は」
ラインハルトはそう言って、考え込み始めた仁をそのままにし、部屋を出ていったのである。
ライラのお茶は結局間に合わなかった。
「はく……ルイス様、もう頭痛はよろしいんですの?」
ビーナはクズマ伯爵の部屋にいた。韓国緑素抗脂
「ああ、ビーナのおかげで大分良くなった」
「そ、それはようございました」
そしてクズマ伯爵は今のうちにはっきりさせておこう、と口を開く。
「なあビーナ、君はジンの事をどう思っていたんだい?」
「え……」
「君がジンのことを好きだったとしても咎めるつもりもない。ただ、知りたいだけだ」
真っ直ぐビーナを見つめて問いかける伯爵に、ビーナも正直に答える。
「好きでした」
「やはりな」
だが間髪を入れずビーナは、
「でも、今にして思えば、ただ一方的にあたしが頼っていただけ、という気もするんです」
ビーナはそう言って溜め息を1つ吐き、
「子供っぽい感情だったかもしれません」
そして伯爵を見上げ、
「はく……ルイス様の事も、初めて、そう、ガラナ伯爵から救っていただいた時から、好きになっていました。でも身分が違うと諦めていたんです」
また俯く。
「卑怯ですよね、ずるいですよね。でも、今回のルイス様への返事はちゃんと考えた末です。本当です。これでルイス様がこんなあたしでは嫌だとおっしゃるならそれでも仕方ないと……」
その時クズマ伯爵はビーナを抱きしめ、
「もういい。君……お前の気持ちはわかった」
「ルイス、様……」
クズマ伯爵はそのまましばらくビーナを抱きしめていたが、やがて腕を放し、
「今夜はもう部屋へお帰り」
と優しく言ったのだった。日本秀身堂救急箱
