さて、凜田莉子の新シリーズです。
冒頭に、高校時代の成績がオール1だった凜田莉子が、どうやってあのような才能を得ることができたかを物語るエピソードがあり、そのエピソードが本編の謎に絡んでくるところなんて、さすが松岡圭祐さん本当に上手い!
ただ、事件簿で使われたトリックが、ここでも使い回されていて、そこは少し手抜きかな。
この本に関しては以上です。
が、松岡さんって、もの凄く勉強していることが判って嬉しかった。
それはフォレスターであるヤン坊が関わっている、森林認証制度についてです。
以下は森林認証制度の説明になりますので、本編とはあまり関係はありません。
森林認証制度が出て来るのは、59ページ
以下、要約しながら引用します。
まず、若い女性が、未開封のショッピングバッグなどに入ったグッチのバッグを3つ持ち込みます。
別々の男性からの贈り物らしいのですが、どうももらったとたんに売りに来た様子。
以下原文のまま・・・
莉子はいった。「これらふたつは本物。もうひとつは偽物です。」
「マジで?」女性が驚きの声をあげた。「なかを見なくてもわかるんですか」
「ええ、森林協議会(FSC)のロゴが入ってますから。グッチは環境問題に取り組んでいて、ロゴはその証です。偽物にはそれがないし、リボンがいまだにポリエステル。・・・・・・
この森林協議会(FSC)と言うのが、森林認証制度の代表格です。
森林認証制度というのは、要するに、木材製品(紙も含む)の原材料が、適切に管理された森林から生産されたもので、健全な森林を増やすことはあっても、無駄に森林を破壊していない、という証明なのです。
このFSCは世界の森林認証制度をリードしています。
ただ、世界中の森林と言っても、北欧の極寒の針葉樹林と、熱帯の広葉樹林では、その森林の維持管理の手法は全く異なってきます。
FSCの主張は理想的な感じがするのですが、問題点はその理想が先進国の消費者からの発想であること。
このため、消費者のわがままを聞かなければならない林業現場は時に、不条理な苦労を強いられます。
ヤン坊は、実はオーストラリアの植林事業でFSCを得たのですが、結構苦労しました。
一方、各々の国で、FSCとは別に独自の森林認証制度を持つようにもなっています。
つまり、FSCは各国の事情を考慮しているとはいいながら、その国独自の事情を考慮することがはできません。
したがって、その国の事情を考慮した森林認証制度ができたのです。
しかし、木材には輸出入があります。いくら独自に森林認証制度を持っているとはいっても、その木材を輸入した国の消費者に判ってもらえるとは限りません。
そこで、各国の森林認証制度を相互に認め合おうという話になりました。
それがPEFCです。
で、実はヤン坊は現在PEFCに関わり合っているのです。
色々言いましたが、皆さんにはFSCでもPEFCでも、どちらでも良いことです。
要するに、このような森林認証制度のロゴが付いている製品を積極的に購入していただければ。
木材を消費することは森林を破壊することにはなりません。
逆に、木材を使っていただくことで、森林はますます価値が高くなります。
つまり、我らフォレスターの職場が増えるのです。
これが、FSCのロゴです。
皆さん、このロゴを見つけたら木材製品に好意を持ってください。
そして、これがヤン坊が関わっているPEFCのロゴ。
森林だけではなく、森林と一緒に働いているフォレスターも大切にしていますので。
よろしく、お願い申し上げます、でございまするぅ ーー!