General Collegeは、数々の実績を打ち立てて来たのにもかかわらず、閉鎖することとなってしまいました。昨日はその決定がなされるまでの話をしました。この決定はある意味トップダウン的な典型的なアメリカ型の意思決定でした。しかし、その一方で見逃せないのは、今回に限って世論がGeneral Collegeの擁護にほとんど回らなかったという事実です。事実、今回のGeneral Collegeの閉鎖の決定にかかった時間はわずか1ヶ月であり、あっという間に決まってしまったという観があります。なぜ世論は、General Collegeの擁護に回らなかったのか、今日はそれについての話です。


現在、アメリカの高等教育を理解する上での一つの重要なキーワード、それはAccountability (説明責任)です。大学や政府など、公金が使われている機関では、いかに効率的に税金が使われているか、それを説明するだけでなく、それらの公的機関は納税者を納得させる使い方をしなければならないわけです。これは、アメリカの財政が逼迫している時ほど厳しくなります。これは高等教育についてもそうであって、政府はいかにお金の無駄をなくすか、ということに血眼になります。


効率的なお金の使い方をするためには、効率的な組織が必要になります。州の高等教育においては、それは無駄なプログラムをなくす、ということに置き換えられます。Program Duplicationという言葉があるのですが、一般的に州政府はこれを排除する方向に向かっています。各州には、Chief Academic Officerという人がいて、この人が州の高等教育で無駄なプログラムはないかということをチェックするわけです。


General Collegeはまさに、このProgram Duplication に引っかかってしまったわけです。


ミネソタのPublic の高等教育システムは次の3つから成り立ちます。


1. University of Minnesota

2. Minnesota State University

3. Community College


1は、僕が通っていたミネソタ大学で、いわゆる研究型大学といわれるものです。2番目のMinnesota State Universityは、大学院もありますがどちらかというと、研究よりも学部教育重視の大学です。そして2年制のコミュニティカレッジとなります。


そして州の高等教育を担当する人から見れば、これらの大学システムの機能は次のように認識されます。


1.University of Minnesota (研究、大学院教育)

2.Minnesota State University (学部教育)

3.Community College (高校と大学の橋渡し)


そしてGeneral Collegeはといえば、その機能は間違いなく3のCommunity College的な役割を果たすわけですが、しかし、それが1のUniversity of Minnesota で行われてしまっているわけであり、それが問題だったわけです。


もちろんGeneral College と Community College はミッションは似ていても、その中身はかなり異なります。Community Collegeの教授はteachingが重視されて、研究をあまり求められませんが、General Collegeの教授たちはTeaching に加えて研究を行わなければなりません。General Collegeの研究も実は全国的に有名であり、Developmental Education の研究に関しては全米トップクラスの質を誇ります。General Collegeにおいては、教育とは研究の実践の場であり、教育で得た現場の知恵を研究に役立てるという、教育と研究の相互間でのフィードバックが行われていました。これはCommunity Collegeでレベルではできることではありません。しかし、州の高等教育の効率化という観点から見た時、それでもGeneral CollegeはCommunity Collegeと同類にしか映らなかったわけです。そして、残念ながら、世間も同じような認識をしました。


皆General Collegeは素晴らしいというけども、現在の経済状況では仕方がない、というのが今回の世論であり、一面から言えば、経済の論理に、教育の理想が屈した形といえます。財政の効率化という大号令のもと、それに添う全ての意思決定は正当化され、それに反するものは、その質の内容に関わらず消えていってしまっている。今回のGeneral Collegeの一件は、アメリカ教育界の現実を象徴しているような気がします。果たして、本当にそれでいいのか、疑問に思わざるを得ない、今回のGeneral Collegeの閉鎖でした。