焼酎や国産ワインなどもはやっているが、最近はやっぱり米の国の米の酒ということで、日本酒が人気上昇中だ。

 

不思議の国の日本酒。

 

日本酒の広告には「淡麗・辛口」などという言葉をよく目にする。

 

日本酒の味の特徴を表現したものだが、これはほんの一例にすぎない。

 

日本酒には味を表現する言葉がじつに多いのだ。

 

専門家のあいだには日本酒の味を表現する言葉が80近くあるという。

 

ただし一般的には「甘、酸、辛、苦、渋」の「五味」が基準である。

 

この五つの味がほどよく調和して、いわゆる「こく」が生まれる。

 

しかし、この「こく」もよく使われるわりには不思議な言葉である。

 

普通「こく」は平仮名でしか表記されないし、「"こく"がある」というと、その味が皆なぜか分かったような気になる。

 

平たくいうと「味わいが深く、とてもおいしい」といったところか。

 

しかし、「こく」をあえて漢字で書くならば、なんと「酷」なのである。

 

広辞苑には「酷」の意味の一つとして「(本来、中国で穀物の熟したことをあらわしたところから)酒などの深みのある濃い味わい」とある。

 

漢字には、思わぬ意味がよくあるものだ。

 

栁瀬祐至