不肖富田、根津(今流行りの谷根千)に勤めています。




豚を殺して、お肉にして、加工して、お客様に料理を提供する仕事です。

最近この仕事がずっといやでした。

豚を殺す人がいなければ、当店ランチ人気メニュー第二位の豚の角煮丼はだれも食べられません。

だから、大切な仕事だということは分かっています。

でも、殺される豚と目が合うたびに、仕事がいやになるのです。

「いつかやめよう、いつかやめよう」と思いながら仕事をしていました。

僕の息子は小学1年生です。

たかし君という男の子です。

ある日、小学校から授業参観のお知らせがありました。

これまでは、たかし君のお母さんが行っていたのですが、その日は用事があってどうしても行けませんでした。

そこで、僕が授業参観に行くことになりました。

いよいよ、参観日がやってきました。

「たかしは、ちゃんと手を挙げて発表できるやろうか?」

僕は、期待と少しの心配を抱きながら、小学校の門をくぐりました。

授業参観は、社会科の「いろんな仕事」という授業でした。

先生が子どもたち一人一人に

「お父さん、お母さんの仕事を知っていますか?」

「どんな仕事ですか?」と尋ねていました。

たかし君の番になりました。

僕はたかし君に、自分の仕事についてあまり話したことがありませんでした。

何と答えるのだろうと不安に思っていると、たかし君は、小さい声で言いました。

「レストランです。普通のレストランです」

僕は「え、」とつぶやきました。

僕が家でHUNTER×HUNTERを読んでいると、たかし君が帰ってきました。

「お父さんが仕事ばせんと、みんなが角煮丼ば食べれんとやね」

何で急にそんなことを言い出すのだろうと僕が不思議に思って聞き返すと、
たかし君は学校の帰り際に、担任の先生に呼び止められてこう言われたというのです。

「たかし!何でお父さんの仕事ば普通のレストランて言うたとや?」

「ばってん、カッコわるかもん。一回、見たことがあるばってん、
 デッカい寸胴の前で何時間も突っ立って寸胴の中のぞいてるだけでカッコわるかもん…」

「おまえのお父さんが仕事ばせんと、先生も、たかしも、藝大の学生さんも、
 会社の社長さんも豚の角煮丼ば食べれんとぞ。すごか仕事ぞ」

たかし君はそこまで一気にしゃべり、最後に、
「お父さんの仕事はすごかとやね!」と言いました。

その言葉を聞いて、僕はもう少し仕事を続けようかなと思いました。


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そんな事を妄想しながら角煮を仕込んでます。


注  たかし君と言う息子はおりません。


kado CAVALIERI

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