1月某日、朝。

ベーリング海の荒波が、港をしとどに濡らす。

潮で汚れたウシャンカを被った男達は、一攫千金の期待を胸に瞳をぎらつかせている。

旧ソヴィエトの時代からこの方、政府の権力が及びにくいこの地では、己の嗅覚のみが頼りだ。

俺は愛船のタービンの音を確かめ、舫をほどく。

出航。

過酷な漁では1分先の命もわからない。

薄板1枚下は地獄。一歩でも踏み間違えれば、命まで凍りつかせて海の底に沈むことになる。

そんなものさと、海の男達は笑って、氷点下の水平線に漕ぎ出すのだ。

俺は海の男だ。3代前の爺さんから。

ウォトカを慰みに、海の上で一生を終える。

 

というわけでベーリング海の鮎川湖までワカサギ釣りに来ている。

早速1匹釣れた。

わぁ大きい。

今日はこの後か~み~氏、もぎ氏、アパチャイ氏と合流するのだが、私だけ先行してマズメ時を楽しんでいる。

この時間帯、気温が氷点下となるため、ガイドが凍りつき、ラインがうまく出て行かない。

それでなくともナス型1号は、鱒レンジャーに対してやや軽い選択といえた。

前日に購入したアカムシが車内で凍死していたりと、アクシデントが続く。

仕方がないので古いサシを使ってなんとか釣る。

9時、いったん陸に上がって合流。ここまでの釣果、9匹。

やや低調だが気にしない。海の男だからな。

 

仕切りなおし。

ここからは私とか~み~氏、もぎ氏とアパチャイ氏に分かれての対決となる。

気温も上がり、ガイドの凍結はなくなった。

遠慮なく1匹目をいただく。

目指すは優勝なので、このくらいは当然である。

アタリが止まったあたりで船を移動させる。

もぎ氏アパチャイ氏チームはトラブルのようだ。竿が係留ロープに引っかかってしまったらしい。

勝負は無情。ポイントを変更する。

が、ここに至り、さらにアタリが遠のく。

仕方がないので休憩を兼ねて食堂に行くことにした。

モツ煮定食600円也。実際安い。

 

食堂で桟橋付近が釣れているとの情報を得た我々は、有難くポイントへ向かう。

手漕ぎボートの操船にも大分慣れた。海の男なので当然である。

先行者に横付けさせてもらい、釣りを再開する。

実際ここはなかなか釣れた。

とくにか~み~氏が追い上げてきて、私の釣果に迫る勢いである。

18対15。低次元の争いは時間切れで終わりを告げた。か~み~氏、もぎ氏はこの後長永氏と洞窟か何かを探索をするらしい。

同率1位が私とアパチャイ氏の18匹。

3位、か~み~氏15匹。

4位、もぎ氏8匹。

いずれも束越えはならなかったが、ボウズでなければ釣りは楽しいものである。

各々の戦果を持ち帰り、海の男達は別れた。

 

私はというと、特に予定もないので終了時刻まで釣ることにする。

朝っぱらからわざわざ豆を挽いて面倒なドリップをして淹れたにも関わらず結局誰も飲まなかったコーヒーをすすりながらアタリを待つ。

ここに来て絶好調。2回連続2連掛かりである。

さらに3連掛かり。およそ1時間で11匹を釣った。

15時までの最終的な釣果は38匹。

満足したので納竿とする。