「自分の思い通りにならないものに腹を立てるのはやめよう」

 

そう思った。

 

 

今回世話になっている派遣会社とは、初めての契約である。

県外に本社があって県内には支店すらないため、連絡は常にメールや電話で、契約その他の部分はwebでやっている。

 

担当の営業マンとは、数回電話でやり取りした後、面接のために行った派遣先の県内支店で会った。

ひょろっとしたスリムな若い男子。

最近の男子はスーツの内側にダウンを着るのね、と思ったのが、初対面の彼に思ったことだった。

 

なかなかの優しい好青年。

しかし、そこが短所でもあるのか、おっとりしていてスピード感に欠ける部分があると思った。

 

それでも、派遣先への質問には即座に対応してくれた。

 

ただ、「初日に一緒に現場に行けない」と連絡が来た時に、少々考えてしまったのだ。

なぜって、今の派遣先は、大きな敷地を持つ企業内での就業だったから。

私はたまたま、まだ若いころにその企業で派遣をしたことがあり、その敷地の広さや、セキュリティの厳しさをよく知っていた。

 

なので、派遣先就業の初日に、どういうルートで現場まで行けばいいのか?緊急時には誰に連絡すればいいのか?と、派遣会社の営業マンに事前に質問してあったのに。

 

案の定…というか、私の不安など理解できないのか、その中身を見ていないのか、たった1枚だけ、その企業の構内の案内図がPDFで送られてきただけ。

 

私はイラっとしたが、仕方がないので、緊急連絡先だけは教えてほしいと再度メールした。

すると「僕はいつでも連絡取れますから」と。

 

こういう悪い予感は的中する。

やっぱりね、というように、当日の朝、私は、守衛所で足止めを食っていた。

「守衛さんに訊けばなんとかなるだろう」と甘い考えはすぐに反省。

 

すぐに派遣会社の営業マンに電話して、誰に連絡すればいいのかと聞くと、面接した時の部長さんの電話番号を寄こしたわ。

 

いや、その部長さんじゃなくて。

現場の人!

この企業内で働いてる人じゃなきゃ。

 

そこからなんと、実に4人の電話番号を案内され、ようやく5人目が、その現場の課長さんだったわ。

 

派遣会社の営業マンに訊いてもムダだろうと思ったから、途中から「自分で聞くので番号だけ教えてください」と言って、自分のスマホで電話した。

すでに始業時間を過ぎているのに、そんなの、待っていられない。

 

このこともそうだけど、派遣会社の営業マンは、だいたいこんな感じだ。

派遣先に前もって出向いて下見をしてくるような気遣いもない。

だから、私がどういう職場環境で仕事をしているかなど、分からなくて当然。

 

 

今回、職場のエアコンの風が顔に直撃していたせいで風邪をひき、高熱出して寝込んでしまった件について、メールで報告し、その返信を読んで確信した。

 

頼りにならないな、と。

 

エアコンの風が顔に当たって、という状況だと説明をしているのに、「そこは16日に職場訪問した際、僕からも先方さんに話してみます」って。

 

いや、そこは今すぐにでも言えるでしょ?

すぐに電話して、私が休んだことを謝罪しながら、お願いできるところじゃないの?

 

こっちは夜中に救急車呼ぼなきゃならないか?かと思ったくらい熱が出て具合悪くて、まさかコロナじゃないよね?とか不安でいたのに。

そんな簡単な扱いなの?

 

気もきかない、先回りして仕事もできない。

優しくて感じはいい人だけど、使えないな、この営業マン。

 

この人をあてにしていたらいけない。

自分の身は自分で守らないと。

 

 

それまでの私は、この営業マンがちっとも思い通りに動いてくれないことに、怒りを感じていた。

しかし、ようやくその執着を手放せたのだ。

 

「派遣会社への期待」であり、このくらいのことはしてくれる「べき」という思い込み。

そういうものが満たされない自分の気持ちが怒りになっていた。

 

でも、とかく、男というものは、「言っても分からない」生き物だと私は思っている。

だもの、「言わなくても分かるよね?」「察してよ」は、無駄な期待。

 

もちろん、派遣会社の営業マンで痒い所に手が届くような人材もいるとは思うが。

まぁ、私はそういう男性には出逢ったことがない。

 

細やかな気配りは女性の特権だと、ポジティブに考えることでヨシとしよう。