─初めての取立てで現場に到着です。時間は21:00過ぎでした。
現場、到着後まず最初にすること。
それは隣人への聞き込みだ。
このケースの場合、逃げたのか、単に留守にしているだけなのかが
判断できないので、隣人に変わった様子は無かったか等確認するのだ。
それともう一つ理由がある。
隣人と話もせずに鍵を開けたり、家に入ったりすると問答無用で警察に通報される
場合があるからだ。
夜中にガラの悪い男が数人でゴソゴソしていたら無理もない。
なので、大抵は一番ガラの悪くない人間が聞き込み係になる。
この場合は入社二日目で、とても高利貸しには見えない俺が聞き込み係だ。
インターホンを鳴らす
ピ~ンポ~ン
隣人:「はーい」
神谷:「夜分、遅くに申し訳ありません。隣の○○さんの事でお伺いしたいのですが…」
隣人:「何かあったんですか?○○さん」
神谷:「○○さん、会社を経営されているのはご存知ですか?」
隣人:「ええ。知ってますよ。」
神谷:「実は、わたくし共○○さんの会社に御融資させていただいておりまして」
─借金の事を第三者に言うのはどうかと思われる方もいるかもしれませんが、
会社が融資を受けているのは当たり前(高利かどうかは別として)なので問題はありません。
当然、自分達が高利貸し等とは言いません。
神谷:「連絡がつかないもので、何かあったのか心配で様子を見に来たのですが」
隣人:「そうなんですか…」
神谷:「ここ数日で○○さん、見かけました?」
隣人:「昨日の夜、車に荷物積み込んで出かけるのを見かけましたが・・・」
神谷:「なるほど…そういうのってよく見かけたりします?」
隣人:「いえ…夜に出かけることがあまりない人なのでよく覚えてたんですよ」
逃げた可能性が高くなってきた。
果たして逃げているのかいないのか?
他にも判断材料はあるので、それは次回に。
─つづく─