夜話2263 「ダーレ」は「倉富勇三郎」　

現東大法学部を卒業したのち司法畑で名を成し元男爵。　この人物は枢密院議長を永く務めた久留米藩田主丸出身の倉富勇三郎でした。

ノンフィクション作家の佐野真一氏が「講談社現代新書・枢密院議長の日記」で克明に倉富の日記をたどっていますのでご一読あれ。

この人物は実は小生が住む八女市杉町出身の江戸期の久留米藩の儒学者広津藍渓につながる縁があった。

勇三郎の妻のぶは　広津弘信の子ども。

その兄は明治期の奇才作家広津柳浪。

柳浪の子は「松川事件」で著名な作家広津和郎でありその子桃子も作家　この血脈は小生にとってただならぬものがある。

なお敬愛する山本健吉の父石橋忍月を金沢から長崎裁判所判事になるようお膳建てしたのはこの勇三郎だったと忍月の妻翠は書き残している。

勇三郎の父広津弘信は若かりしころ　樋口一葉の永遠の恋人になる半井桃水とも縁のあった人物。

一葉は小生の永遠の研究対象の作家。

長い血のつながりが勇三郎の日記に縁があり　彼の日記による皇族皇室の秘密の事件を知ることができた。

その結果の「ダーレ」だった。

枢密院議長の職権で知り得た皇室の極秘知識を綴った勇三郎の克明な厖大な日記は　いま国立国会図書館の蔵書となっている。

それらは平成5年から京都大学教授永井和氏らにより翻刻されつつあるが　現在久留米図書館の蔵書となっているのは帯出禁止の3冊のみ。

いかに判読が困難でありその量が厖大であることがわかるる。

昭和23年　倉富は小生と同年齢96才で没している。死ぬまで日記を書き続けたという。

彼の肖像写真によればいかにも田舎の好々爺風。

　　　　　　　　　　　　　　　　

しかし妻のぶは『自主の権』の著者広津弘信の娘としての威風のある風貌である。

今まで翻刻された日記の中に　久留米が生んだ女傑本荘幽蘭の名が出て来るのも面白い。

彼女の女傑ぶりは夜話1993 と1999 をご参考下さい。

夜話2263 「ダーレ」は 「倉冨勇三郎」

夜話2263 「ダーレ」は「倉冨勇三郎」