夜話2258 「さらし首」　

八女市立図書館はコピー印刷資料の寄付は受け付けない。版権の問題からか。

資料として寄付できないモノを整理していたら久留米藩の宝暦百姓一揆の資料集が出て来た。「さらし首」とある。

ガリ版印刷のものも含まれている。ザラ紙60頁。ホッチキス止め。宝暦一揆を偲ぶ「一揆巡礼団」が発行したモノ。

「さらし首」という表題のある表紙は先輩版画家故木村晃郎作。刷りがよくないが百歳の長寿を全うした先輩の作品。

32年前の1980年発行のもの。

一揆で処刑された人たちの墓巡礼の特集。

10頁に「伊藤野枝」の娘伊藤ルイの「巡礼日記」が投稿されていた。

ルイはアナキスト大杉栄の娘である。東京大震災のどさくさに陸軍大尉甘粕らにより暗殺された栄と野枝夫婦の娘。

寄稿日記に「福岡今宿にあった両親の墓がいつの間にか元の場所から消え西村某家の庭石になっている」との記事が目についた。

一度読んだルイの記事をここで再度読むことになったわけ。

二日前　かつての画塾生、いま女流デザイナーのМ君と電話で大杉事件の話をしたばかり」。

事件後大杉は満映理事長になるがその頃　満洲の我が家に父を訪ねてきたことがあった。

ルイの思い出話は再読ながら　淡々として気持ちのいい日記だった。

宝暦一揆のさい　さらし首の処刑を受けた宅間田の「清八」の名も出て来る。

この人物のための「供養石仏らしいものが八女市宅間田の神社の一角にある」と八女市文化財専門委員会長の馬場さんから聞いたが　それ以上の探索を怠っている。

コロナが落ち着いたら「さらし首」にされた清八のための巡礼に出かけよう。

夜話 2258 「さらし首」