少年時代

少年時代

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  *  *  *  


「やぁ新八くん。銀時はいるかな?」

「いらっしゃい桂さん。久しぶりですね」

「うむ。しばらく高杉の屋敷で世話になっていたのでな。アイツからいい酒をもらったんで、銀時にも分けてやろうかと思って来たんだが」

「そうですか、わざわざすみません。でもあいにく、銀さんお出掛けしてるんですよ」

「そうか。仕事か?」

「いえ、きっとパチンコです。アノヤロー、また勝手に生活費持ち出しやがった! いま思い出しても腹が立つ!」

「全くキミも気苦労が絶えぬな、その歳で。アイツの手綱を取るのは容易くはなかろう。糸の切れた凧みたいな奴だから」

「その通りですよ。毎日ふらふら、ふらふら・・・・・・。その点、桂さんはいいですよね。高杉さんお金持ちだし、一応仕事はしてるし。悪事だけど」

「べつにアイツの金で生活してるわけではないぞ。ちゃんとバイトもしてる」

「攘夷活動のための資金集めでしょ。それこそ高杉さんに援助してもらえばいいのに」

「ううむ。新八くんはまだ若いから理解しにくいかもしれぬが、それとこれとは別なんだよ」

「恋人なのに?」

「恋人でも、だ」

「よく分かりません」

「自分の理想を実現するために頑張っているのだ。楽なやり方で結果だけ出しても、その過程が腐っていたのでは、しょせん、付け焼刃の成功でしかない。そんなもの、すぐに壊れてしまうさ。それでは意味がないのだ。確固たる勝利を手にするには、その過程で、どれだけ努力したかによると思うのだ」

「はい」

「だから、楽なやり方で全てを無に返そうとする高杉のやり方には賛同できん」

「・・・・・・はい」

「かと言って、ではアイツが憎いかと言えば、そうでもない。つい馴れ合ってしまう。それは本能に近い感情だから、理屈では語れない。つまり、それとこれとは別ということだ」

「んー。・・・・・・難しいです。でも言わんとしていることは分かります。桂さんって、ただの電波バカじゃなかったんですね」

「どういう意味だ、それは」

「褒めたんですよ。誰かさんとは大違いです。お二人ともちゃんと信念があるんですよね」

「もっとも高杉なら、言えば金ぐらいはポンッと出しそうだがな」

「そうなんですか?」

「あれはあれで情に厚い奴だから」

「・・・・・・桂さん」

「なんだ?」

「お金、出してもらってください」

「は?」

「で、うちに回して」

「・・・・・・必死だな、新八くん」

「そりゃあ必死にもなりますよ! 昨日も家賃が払えなくて玄関吹っ飛ばされたんですよ! おまけに、その修理代も上乗せされてるし。やること無茶苦茶なんですよ、お登勢さんってば。・・・・・・もちろん、家賃踏み倒してる僕らが悪いんですけど。つーか、あの天パが悪いんですけど!」

「まぁまぁ、そう言ってくれるな。銀時にだって良いところはあるだろう?」

「ありますか?」

「そりゃあ、あるだろう」

「たとえば?」

「え? たとえば? そうだな、たとえば・・・・・・」

「はい」

「だから・・・・・・」

「はい」

「あのぉ・・・・・・」

「はい」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・天パとか?」

「もういいです」

「新八くんやリーダーのことを大切にしてくれるだろ?」

「生活費を持ち出されましたけど」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「なんで一緒にいるんだ?」

「・・・・・・さあ」



 *  *  *  




「ただいまァ。・・・・・・あれ、ヅラ? なんだお前、来てたのか」

「ああ、今しがたな」

「つか、なに二人して神妙なツラしてんだよ。ヅラのくせに生意気な」

「貴様のふがいなさについて語り合っていたのだ」

「んだよ、それ」

「そんなことより、銀さん。生活費どうしました?」

「ん? ・・・・・・うーん。まァその・・・・・・アレだ。世の中アレなんだな。不況とか異常気象とか全部アイツらのせいなんだよ。なんかほら・・・・・・妖精的な? うん、アレアレ。アイツらのせいなんだな。よし、ちょっくらその妖精的なアレを取っ捕まえてくらァ」

「待てェェェェ! 使ったな! 全部使ったな! 生活費、使い切りやがったな!」

「いや、俺じゃねェよ。妖精的なアイツらだよ。俺の懐からそっと抜き取っていきやがったんだよ」

「じゃあそもそも、ここの引き出しから生活費を抜き取っていったのは誰ですか」

「それはそのォ・・・・・・銀さん的な?」

「お前じゃアァァァ! 的、じゃねェェェ! ちょっともう桂さん、コレですよコレ! コレの一体どこに良いところが!?」

「うむ、おかしいな」

「おかしいな、じゃねェよ! それから銀さんっ、ホントいい加減にしないと、僕本気で怒りますよ! どうするんですか、もうお米も無いのに!」

「おい、ぱっつあんぱっつあん」

「なんですか!」

「はい、あーん」

「あーん。・・・・・・って、なに・・・・・・む、むぐ・・・・・・ぐ。・・・・・・え? ・・・・・・団子?」

「今日発売のメガネ団子。一本の串に二個の団子でメガネ団子だとよ。シャレきいてんな、団子屋の親父」

「メガネ・・・・・・」

「なんでもダイエット中の女向けらしいが、そもそもダイエットしてる奴に団子なんか食わすなって話だよ」

「はぁ」

「なんかお前みたいだろ」

「・・・・・・僕」

「団子屋の前に、大量に新八が並べられてたからな。思わず有り金はたいて買っちまった」

「銀さん・・・・・・」

「さすがにコレは素通りは出来ねぇしなァ。連れて帰んなきゃ」

「そんな・・・・・・調子のいいこと言って・・・・・・」

「ヅラも食うか?」

「ああ、もらおう。俺もお前に酒を持ってきてやったぞ」

「マジか! 高杉んとこのだろ。じゃあかなりいい酒だな。一緒に呑もうぜ」

「うむ」

「あ、新八は呑むなよ。お前は水でも飲んどけ。神楽はどうした?」

「さっき外に遊びに行きました」

「そうか、じゃあ当分帰って来ねぇな。仕方ない、少し残しといてやるか。俺、コップ取ってくらァ。先に食ってていいぞ」

「はい」



 *  *  *  




「・・・・・・桂さん」

「うん?」

「きっとコレが、僕が銀さんと一緒にいる理由なんですね」

「そうだな」

「少しだけ見えました。銀さんの良いところ」

「他にもいっぱいあると思うぞ」

「はい。ゆっくり探してみます」

「ないかもしれんが」

「え?」




~完~