昨日、取材をうけた舞鶴事件の放送(報道プライムサンデー)がありました。
どのような視点でとりあげるか、ということはそれほど詳しく聞いていたわけではなく、興味深く見ました。
私の感想ですが、「未解決事件」としての特集だったこともあって、視点が今一つ定まっていないように感じました。
以前にも書きましたが、刑事裁判の無罪判決は、いわゆる無実(真犯人は別にいる)を意味する場合と、そうではない(証拠が不十分である)場合が、理論上は存在します。
これがいずれかであるかは、本件でも裁判所が明示しているわけではないので分かりません。
大阪高等裁判所(及び最高裁判所)が認定している主な点は、①被告人と被害者は、事件当日の午前1時ころに一緒にいた(これは目撃証言等から認定)、②午前3時ころにも現場近くで目撃されているが、被告人に関する目撃証言は信用できない、③被告人が被害者の遺留品についての供述をしているが(犯人しか知り得ない事実)、これも信用できない、という点です。
原審の京都地裁では、この②と③の信用性を認めて、有罪判決をしています。
高裁で、なぜひっくり返ったのか。
②については、証言者の供述をとるまえに、被告人の写真を見せてしまっていて、記憶が変容された可能性があるとされました。
③については、警察官が取調べ時に作成していたメモによって、被告人を誘導した可能性が指摘されたのです。
裁判所は明確に述べていませんが、このようなずさんともいえる捜査方法が重なったことで、無罪判決を書きやすくなった可能性があると、私は考えています。
そうすると、今、検証すべきは、捜査方法に問題はなかったのか、府警、地検は、これをどのように総括しているのか、という点ではないかと思うのです。
取材時に、私はこの点はお話ししたのですが、残念ながら、取り上げられることはありませんでした。
もちろん、製作、編集の主体は、フジテレビさんであるので、今回の番組に異論があるものではありません。
このまま埋もれてしまうよりは、全国ネットで取り上げていただくことは、(少なくとも私は)あり難いことであると思います。
ただ、やはり問題の本質は何か、という点が絞り切れておらず、コメンテーターの発言も、あっちこっち行っていたのも、そのせいではないかと感じました。
愛する人が殺され、真相解明がなされずに、裁判が終わった。これほどの人権侵害はないだろうと思っています。
捜査機関が自ら検証しないのであれば、これを正すべき立場にあるマスコミの役割に、今一度期待したいです。