Amazon Web Services ジェフバー氏が語る、アマゾンのクラウド戦略とは?
クラウドはもう現実のものとなっている


http://enterprisezine.jp/article/detail/2196

2010年04月13日 07:00[EnterpriseZine/新野 淳一氏]の記事。

<以下、私個人が勝手に解説している内容です。間違っているなら気軽にツッコミしてね。>

ザックリ書きますと、Amazon Web Services LLC enior Web Services Evangelist  ジェフ・バー氏の来日時のインタビュー記事です。Amazon Web Servicesの核心に迫る非常に良質のコメントがあり、一読してもらいたい内容。

インタビューの中で注目すべき内容が何点かあるのだが、まずは以下の日本のデベロッパー(開発業者)に対する印象としてのコメントが興味深い。

「日本はクラウドコンピューティングやAWSにとても関心が高いということです。実際にクラウドを用いた開発はもちろん、利用も始まっていて、顧客にクラウドの価値を届けられる段階に入っていると思います。」

日本のデベロッパーで彼に会った方々は、大いにAWSの価値を見出している方がいると言うことである。
日本のIT業界では、実際のところAmazone EC2すら知らないとか興味がないと嘯く方々がいるが、実は、もう別のところでは敏感にクラウドと言うものに何かしらの価値を感じている方々が、日本には多くいると言うことを指している。

もし、周りに未だにAmazone EC2やGoogle Appsを知らないと言う方がいるならば、もう既にその方は、時勢に乗り遅れつつあるIT関係者である可能性が高い。昔の栄光に縋っている方かもしれない方なのかも知れない。

また、すでに日本でAmazon EC2/S3を使用した日本企業の事で感心したことが合ったようで以下のようにコメントしている。

「企業名は出せませんが、ソーシャルネットワーキングやオンラインゲームのサービスでAmazon EC2を用いて何万というユーザーにオンラインでサービスを提供するための非常に経済性の高いシステムを構築した、という話も聞いています。」

要は、もうすでに日本でも解っている所は、Amazonの提供するEC2などを活用し、経済効率の良いシステム構築を行っていると言うことらしい。
これは、ある意味、ジワジワと日本でも具体的活用が始まっており、開発者やSEは、そのAmazonが提供するサービスを考慮し始めなくてはいけないということなのでしょう。
もう、無視を決め込む事は、出来ないところまで来ていると言えるのかも知れません。

日本では、クラウドはスタートアップ企業に呑み使われているのでは?とのインタビューに対し、以下の様に答えている。

「日本も米国も企業規模でいえば幅広いユーザーがクラウドを利用しています。政府から、中堅中小、そしてスタートアップまで様々です。研究開発用途も多く、例えば先日はNASA に訪問したのですが、NASAでもクラウドをミッションに活かしており、8つのクラウドに関連したプロジェクトがあると聞いています。」

確かに、米国のシリコンバレーではスタートアップ企業では、自前のサーバなどを持たずにAmazon EC2/S3などのIaaS関連のサービスを使うことがスタンダートになっていると言う。
だが、日本ではそれが、起業時は、クラウドで行い、ある程度、安定期になったら自前サーバを持つのかの様に捉えられているが、実際は、上記のコメントのように研究機関でも使われており、スタートアップばかりではないようである。

さて、ここでもっとも注目しておくべきコメントがある。
ジェフ・バー氏曰く、プライベートクラウドのノウハウを積み上げてもAmazone EC2のような仕組みを作れる訳ではないとのコメントである。

「プライベートクラウドは、企業がオンプレミス型からパブリッククラウドへ移行する途中にある中間的なステップだと言われていますが、それは間違ったモデルだと思います。ほとんどの企業は、独自でクラウドを構築する技術もなければそうした投資もできないと考えています。」

これは、非常に的を得ているコメントで、今、多くの日本大手企業ベンダーや某I○Mの戦略を否定している。
要は、オンプレミスからパブリッククラウドへの中間地点としての位置付けで考えているとしても、発想そのものがオンプレミスとパブリッククラウドは違うのだから移行とかの物ではないと言っているのだろう。
また、続けて、彼は以下の様に述べている。

「われわれアマゾンは何年もかけて研究開発をしてAWSを構築し運用してきました。これと同じようなことをほかの企業がわずか1、2 年でできるとは思えません。」

正に、その通りだと思う。
ノウハウがないのに早々にAmazon EC2/S3のような仕組みを1~3年で構築出来るはずが無いのである。
昨今の日本大手ベンダーのクラウド参入での狂想曲は、そんなAmazonの積み上げてきた物を見ずにして、先走ってやっている感がある。
その象徴が「規模の経済」への不理解があり、インフラ構築思想の違いがあると言わざる得ない。

ジェフ・バー氏は、続けて、クラウドについて述べている。

「クラウドの魅力の1つは設備投資が不要になることです。企業が自分でデータセンターを持たなくてもよくなり、しかもまったくサーバを保有しない状態から数日や数週間で数台数千台のサーバが展開できるほどのスケールを実現できます。こうした展開はパブリッククラウドだからできることであって、プライベートクラウドでは無理です。」

まさに、クラウドの重要な点を言ってる訳で、「必要な時に、必要な分だけ使う」と言うこのもっとも単純であるけど、「規模の経済」あってこそのサービスと言える。
まぁ、それでもプライベートクラウドでも、サーバのプロビジョニングが出来るので、スケーラビリティは可能であるとも言えるのも事実だが、ここでは実質的なサーバ台数の拡張性(スケーラビリティ)を言っている訳で、視点がもっと大きい。

「プロビジョニング」とは何?って方は、以下参照。
 ↓
http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/provisioning.html

「スケーラビリティ」とは何?って方は、以下参照。
 ↓
http://e-words.jp/w/E382B9E382B1E383BCE383A9E38393E383AAE38386E382A3.html


他に、回線についての話も非常に興味深い。

「また、弊社にはインターネットとの接続を専門に担当する社員がいます。彼らの仕事は、値段やバンド幅がもっとも優れたものになるよう契約や交渉をすることです。」

Amazonは、そんな交渉ごともしっかりアプローチとして専門家を置き対応している。
果たして、日本企業ではどうなのであろうか?

また、ジェフ・バー氏は、Amazone EC2などの活用についても具体的に以下の様に述べている。

「また、税金や給与計算のように月に一回、週に一回だけ集中的に必要になる業務などにクラウドを使うこともあるようです。製薬業界では新薬研究のために大量の計算をクラウドで行っていると聞いています。研究のためには3次元の分子を想定した複雑な計算が必要になり、そのために大量の計算機をクラウド上で展開しているそうです。」

要するに、これも「必要な時に、必要な分を」のクラウド特有の機能をフルに活用する手法と言える。
これを実際に行うとなるとバックエンドの仕組みは、かなり作りこんでいるのだろうなと言うのが想像できる。

AWSのサービスは、各CPUの機能毎に設定出来るし、WEB容量なども設定できる。そして、それを時間単位で使用を決められる。と言うことは、バックでは顧客毎にもしくは、契約毎にそのCPUなりの時間を測定し、且つ、清算時期に計算しつつ、請求を掛けていくのだから、処理のタイミングをこまめにやっていると考えられる。
当然、決済処理も行っているだろうから入金処理やら債権処理などなどバックエンドでの複雑な仕組みがやられていると考えていいだろう。
その辺のアーキテクチャーは開発者としては、公開されていないので興味深いところだが、もっとも核になる部分なので、表に出はしないが。

最後に、同氏は、Amazonは、今後、世界中にDCを展開すると述べている。
当然、その中には、日本も含まれている事は間違いないと見ている。
と言うのも以下の様に述べているからである。

「例えば、東京にデータセンターを開設することになれば、東京に置くことによって遅延を非常に小さくすることを考えています。」

レイテンシの問題でやはり国内にある方が、海外より良いといえるからでもある。
まぁ、私は、どちらかと言うと日本企業のデータ保持をするならば、日本国内にと言うニーズが、必ず、働くので心理的要素の排除として日本に進出してくるだろうと見ているわけであるが、どちらにしても一般の日本企業にとって見ると良いことである。

「レイテンシ」って何?って方は、以下参照
 ↓
http://www.sophia-it.com/content/%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%86%E3%83%B3%E3%82%B7

ただ、今後の日本大手ベンダーはGoogleの本格的進出などと合わせて、苦難の時代到来となる。
当然、アプリケーション開発会社なども例外なく、ビジネスモデルがパッケージ開発を主体としたオンプレミスやカスタマイズと言ったものから様変わりし始めるので、しっかりと見据える必要が出てくるだろうと思える。

同氏の来日のインタビュー記事を読んでいると、Amazonと日本企業のIT業界の姿勢が決定的に何かが違うのが解る気がする。
それは、Googleと同じ、チャレンジ精神である。失敗を恐れないと言うか、それすらも当然の様に突き進むあの若々しい動きである。
それが、彼らを成功に導いている気がしてならない。
そんな、姿勢をどれだけ、今の日本のIT技術者とIT企業経営者にあるだろうか?

そう比較すると何時も暗澹たる思いになるのは何故だろうか?