息子がこの10月で6歳となった。6歳になって最初の登山に選んだのは奥秩父の奇峰とでも言うべき独特のフォルムを見せる瑞牆山(みずがきやま)である。





ルートとしては、瑞牆山荘をスタートして富士見平小屋を経由して最短で山頂を目指す。その後は、周回ではなくピストンで瑞牆山荘に戻ってくるというおそらく最もオーソドックスかつ難易度の低いルート。

事前のリサーチによれば、瑞牆山荘近くの駐車場がかなり早い時間で満車になってしまう可能性もあるということで、今回は気合いを入れて初めての車中泊を決行。とは言え、いきなりフルでの車中泊は敷居が高かったので、まずはハーフ車中泊くらいの感覚で。

前日、かなり19時くらいにベッドに入り、日付が変わると同時に起きて支度を済ませてから息子を一瞬だけ起こして夜中の1時頃に出発。ガラガラの中央道を気持ちよく飛ばして、3時半頃に瑞牆山荘近くの駐車場に到着。息子は移動中もちろん爆睡。

到着してから息子を起こして、満天の星空を見せる。都心では見ることができない星空に胸を打たれたようで、この時間に来て良かったと思う。その後、後部座席を倒してスペースを作ってから、日光白根山のキャンプ時に購入したシュラフをひろげて寝床をつくる。いったん起きた息子もシュラフの中ですぐに眠りに落ちる。

僕はというと、ちょっと仮眠を取ろうと息子の隣で横になるが、多少ウトウトしつつも、なかなか熟睡というわけにはいかない。キャンプの時もそうだったが、環境が変わってもお構いなしに熟睡できる息子がうらやましい。この辺り、この年齢になるまでアウトドアとは無縁の生活をしてきたから仕方ないのかもしれないが、早く僕もこの環境変化に適応しなければならないなと痛感。

そんな感じで、2人とも人生初の車中泊を2時間ちょっとだが経験。僕は5時半過ぎに起きて、妻が持たせてくれたおにぎりを食べたり、登山靴を準備したり。息子はやや遅れて6時過ぎに起きて、やはり妻が作ってくれたおにぎりを美味しそうに頬張る。





朝食を済ませ、狭いトランクでの着替えなども済ませてから、いよいよ登山スタート。思ったより準備に時間がかかってしまったので、6時半頃に出発する予定が、6時50分くらいのスタートとなってしまった。10月下旬の早朝ということもあって、気温は低く、まだ歩いていない状態なので、かなり寒く感じる。

ただ、これはあくまでも僕の話であって、暑がりな息子からすればそうでもないようだ。息子は冬でも半袖で幼稚園の園庭を走り回っているタイプなので、いつも暑い暑いといって、親が着せた防寒着を脱ぎ捨てている。とは言え、今日は山に来ているのだ。息子の身体が冷えてはいけないと思い、今回はTシャツの上にちゃんと上着を羽織らせてからスタートする。息子は嫌がったが、後でどうしても暑くなったら脱いでいいよ、という話をして上着を着てもらうことに成功。



最初の方は何てことはない登山道を順調に歩いて行く。しばらくすると、瑞牆山の全容を見ることができる開けた場所に到着。『あの岩山の一番上まで行くんだよー。ここから見るとすごいねー。』なんて話を息子としながら、テンションを上げていく。登山を始める前の僕が同じところから同じ景色を見ていたら、本当にあんなところまで登るのかと気が遠くなっていたに違いない。しかし、今はあんなところに息子と一緒に登れるなんてすごいことだ、よし頑張ろうという気持ちになっているわけだから、人って変わるものだなと思う。







この見晴らしポイントからしばらく歩くと富士見平小屋に到着。富士見平小屋の少し手前に水場があったので、息子に『山の水飲んでみる?』と言うと『飲みたい!』ということで、ちょっと寄り道をして2人でお水を頂く。『おいしい!』とテンションが上がる息子。帰りもまた飲もうと約束をして水場を後にし、富士見平小屋でちょっとだけおやつ休憩。







富士見平小屋の分岐を瑞牆山方面へ。しばらくなだらかな道が続いたかと思うといったん下りがあって、ちょっとした沢を横切る。そうして歩いていると、桃太郎岩に到着。何をどうやったらこんな形状になるのかさっぱりわからないが、ものの見事に真ん中から桃太郎が生まれたかのようにぱっくりと大岩が割れている様子はかなりの迫力だ。写真だと迫力はなかなか伝わらないかもしれないが、息子の大きさと対比してみると、どれだけ大きな岩かということはよくわかるだろう。



桃太郎岩の横にある階段を上ってからは、かなり荒れた道で、かつ急登が続いていく。登りが急であることよりも、道が荒れているという方が僕らにとってはハードだった。僕らの浅い登山経験からすれば、まだまだ荒れた道を歩く経験に乏しいので、躓いたりしないように慎重に歩いたこともあって、なかなかペースが上がらず、距離は短いはずなのになかなか頂上に辿り着かないという感覚。



また、これまでの経験になかった要素として、どっちに進めばいいのか迷う箇所がそれなりにあったということが挙げられる。道が荒れていて、岩だらけという状況の中で、そもそもどっちに進むの?と一瞬迷うケースが何回もあった。ただ、その度に近くにピンクテープが取り付けてあるので、2人でピンクテープ探し競争をして楽しみながら、特に迷ったりすることなく順調に登ることができた。





大ヤスリ岩を下から見上げるポイントに到着したのが10時ちょっと前なのでもう登り始めてから3時間が経過したことになる。やはりペースとしてはゆっくり目な感じだ。まあ、焦っても仕方がないので自分たちのペースで着実に登っていくしかない。









息子も体力的には問題なさそうな様子で相変わらず元気に登り続ける。大ヤスリ岩から40分ほど歩き、岩場にかけられた梯子を登って、ようやく瑞牆山の山頂に到着。すばらしい天気で聞いていたとおりの見晴らしの良さ。遠くに富士山も見えている。



山頂で場所を確保してランチを頂く。今回もお湯を注ぐだけのリゾッタが我らの主食。リゾッタを食べる時にどうしてもお湯を注いだパウチが熱くなってしまうので、モンベルで売っているフードコジーという商品を買ってみた。パウチを入れるケースで保温効果などもあるようだが、息子としては、フードコジーに入れれば熱くないので、自分の手で持って食べることができるというのが大きな利点だ。



炭水化物でエネルギー補給をした後は、息子が一番楽しみにしている山頂での定番おやつ、綿菓子タイム。大人になった今や、綿菓子など食べる気にもならないわけだが、息子はとにかくこの綿菓子を幸せそうに食べる。



急な斜面を登ってくる途中で結局暑いと言ってシャツ1枚になった息子だが、さすがに山頂で動かずにいる時間がそれないに長いので、上着を着た方がいいんじゃないか?と勧めると、息子も肌寒いと感じていたのか、珍しく素直に上着を着てくれた。





のんびりと休憩をしてから下山開始。今回は岩場で道も荒れているところが多いので、いつも以上に慎重にゆっくりと降りてきたという印象。やはり、身長の低い息子と一緒だと、下りは登り以上に気を遣わなければならない。その分、時間はかかってしまったが、6歳の息子とこれだけの山に来ているわけだから、その辺は仕方のないことだ。





基本的に幼児との親子登山は、コース標準タイムよりも大幅に遅いタイムで歩くことになるという大前提を踏まえて計画を立てるのが本当に大事だなと思う。標準タイムよりもだいぶ遅く歩くことを前提に、たっぷりと休憩も取るという時間設定をした上で、下山の時刻が季節にもよるが基本的には15時より大幅には遅くならないようにする、そのためにそこから逆算してスタート時間も決めるというのが、僕が登山計画を立てる時の基本的な方針だ。

もちろん、今後、山によっては登山道が明確で迷うリスクが低いような山で、あえてヘッドライトを付けて歩く経験をしてみるとか、そういうことにトライする可能性はあるかもしれないけど、それは多分、難易度が十分に低い山での話であって、原則論としては、たっぷりと余裕を持った登山計画を立てるのが大事なことなんだと思う。

今回もそういう考え方でかなりの余裕を持った登山計画を立てたつもりだ。期せずしてスタートが20分ほど遅れてしまったこともあり、瑞牆山荘に戻ってきたのが15時10分頃と15時を若干過ぎてしまったが、まあ、ある程度想定したとおりのタイムスケジュールになったと評価して良いだろう。





途中、恐竜の形をしたような朽ち木を発見したりと、色々と楽しみながら下山。もちろん、富士見平小屋近くの水場で喉を潤すことも忘れない。息子が、『この山の水をママにも持って帰りたい!』と言うので、僕のザックにあったペットボトルを1本空にして、瑞牆山の水を持ち帰ることにする。





下山後は瑞牆山荘にて定番となった登山バッジを購入。息子にとって、登山バッジは勲章のようなものだ。山を登る度に登山バッジを1つずつ増やしていく。そのバッジを自分のザックに取り付けて山を登る。息子の健気な姿が微笑ましくてたまらない。バッジの数が増えてくると、山で大人から『たくさん登ってるね!どんな山に登ったの?』と話しかけられる機会も多くなり、その度に誇らしげに自分の登山歴を披露する息子の姿も何とも愛らしくて大好きだ。

こうして6歳になって最初の登山も無事に終了。そろそろ寒くなってきて、高い山に登るのが難しいシーズンに入ってきた。さて、次はどの山に登ろうか。