土・日・月曜と三連休だった。


でも、まさかこんなタイミングで
風邪を引くなんて‥‥最悪です。


咳は出るし、頭は痛い。
土日は寝て終わってしまった。


だが、休みの内にどうしても
やらなければならない事があった。


『髪を切る』事だ!


前に切ったのは3ヶ月前。


これ以上は、頭のヤバさが隠せなくなる。


俺のボリューミーでウェービーな髪質は、
伸びれば伸びる程、その癖を増していく。


MAX状態の現在の髪型は
ほぼ、田村正和(タムラマサカズ)。


こんな上級者向きの髪型を
かぶりこなす技量は持ち合わせていない。


だが、本日は月曜日。


全国的に、美容室はお休みの日。


運命はまるで、髪を切ることを
拒んでいるかのようだ。


どうする?


熱と頭痛と伸びた髪にストレスを感じながらも、月曜日に髪を切れる場所を考え、そして思い出す。


大きなデパート(ジャスコ)の中にある
千円で切れる床屋さんだ。


11:30 家を出る。


原付きを走らせ、10分程で目的地に到着。


店内に入り、記憶を頼りに床屋を探す。


あった!千円の床屋さん!


ガラス張りのドアから店内を覗くと
お店に入るの少し躊躇(タメラ)って
しまう光景が目に入る。


順番待ちしてるのは
おじいちゃん & おばあちゃん×2
& チョッとヤバめのオッサン。


大丈夫か?


もはや、不安しか沸いてこない。


本来ならば入りたくはないのだが
今の俺に、別の選択肢は残されていない。


店内に入り千円札をマシンに入れ、
出てきた整理券を受け取る。


木で出来た椅子には何やら
矢印らしき模様(↑)が書かれていたが、
それが何を意味するのか
最後まで分からなかった。


1人が髪を切り終えると、
待ち合い席の先頭が抜けて
1つづつ隣にズレて行くシステム。


このシステムは
風俗の待ち合い室と同じだな。


なんて思いながらも、
風俗とは違った意味でドキドキしていた。


いくら安い床屋さんでも
髪を切る人のセンスが良ければ
何も問題は無いはずだ。


髪を切る人は3人。


40歳手前、アゴヒゲを生やし
少し茶髪の残るおじさん。
通称『ダンディー』


いかにも床屋!と、言う感じのおじさん。
通称『オッサン』


そして、たこ焼きが眼鏡をかけたような
通称『ジョイマン』


明らかに、アイツはヤバそうだ。


『ジョイマン』だけは勘弁して下さい。


久しぶりに神様を頼ってみる。


出来れば『ダンディー』でお願いします。


確率は1/3。


やがて順番が回ってくる。


「次の方、どうぞこちらへ」


声をかけて来たのは
‥‥‥‥『ジョイマン』やん!!


祈りは通じず。


諦めて席へ。


「今日はどうします?」


全体的にスイてと注文。


「後の髪がチョッと長いけど、少し切っても大丈夫?」


全体的にスイてと再度注文。


このお店で髪型を変えようなんて
自分はそれほど冒険野郎ではない。


髪を切りながらも
ジョイマンは何度も話し掛けて来る。


どうやら、彼はかなり
お喋りさんのようだ。


喋るのは良い。


自分も喋るのは好きだし、
聞くのも嫌いじゃない。


だが、ジョイマンは喋っている間
毎回ハサミを止めクシで髪をといて来る。


それが気になって気になって仕方ない。


コイツさっきから、
全然切って無い気がする‥‥


「こんな感じでいいかな?」


散々喋ったからなのか、
彼は一方的なフレンドリーになっている。


ま、髪型はそれほど変わらず
ボリュームダウン出来たし
千円でコレなら問題なしだな。


「じゃあ、髪の毛を吸うねー」


そう言って、掃除機のような物で
切った頭の毛を吸い込む。


始めは心配だったが、髪をすくだけなら
こういう床屋もアリかな。


掃除機も終わると
ジョイマンはもう一度、
俺の頭にクシを通し始めた?


前から後ろへ。


横から後ろへ。


「はい、終わりました」


‥‥チョッとええか?


おもいっきり
『オールバック』なんスけど!!



「ありがと~ございま~す」



マジか!お前マジか!?


田村 正和が、
竹内 力に変わっただけじゃん!
(もしくはジョン・トラボルタ)


ベビーフェイス風の顔にオールバックは
明らかにミスチョイスだろ!?


分からんか?お前分からんか!?


まったく、なんて日だ。


店を出るなり、
すぐさま髪の毛をグシャグシャに。


デパートの出口までを、
こんなに長く感じたのは初めてだった。




ーendー





嘘つきなのに、嘘が下手。


そんな、少し残念な狼少年くんが
うちの会社に居る。


それは何気無い会話の出来事。


『あなたは犬派?猫派?』


お約束の論議。


ちなみに、自分は『猫派』。


みんなでヤイヤイ話している中、
会話に混ざれていない彼を見つけた。


面倒だけど、試しに聞いてみた。


猫派ぁ~?犬派ぁ~?


「犬派ですね。自分、猫アレルギーなんで‥‥」


意外に普通な答え。


そっか~‥‥何かつまらないね。


「でも今は、大分治ったんですけどね」


治った???


猫アレルギーって治るもんなの?


「勝手には治らないですよ。僕の場合は治療しました」


病院で?


猫アレルギー治療なんてあるん?


「ありますよ。その代わり、半年くらい通わないといけないですけど」


半年って結構大変やん。
どんな治療するの?


「今は、注射打つだけで治りますよ」


『今は』って‥‥
昔の治療法を知ってるの?


「いや~、知らないです」


何だそりゃ。


それに、アレルギーって注射で治るの?
どんな注射なん?



「あの~‥‥アレです」


アレって?


「あの~‥‥薄めた猫のエキスを何回か注射して、免疫力を付けていくんですよ」


『薄めた猫エキス』ってなんだよ?


得体が知れなさすぎるだろ!


それを半年も注入してたの?


「僕の場合は4ヵ月でした」


‥‥あ、そう。


それで、猫アレルギーは治ったの?


「まだ、少し残ってますね」


治ってへんのや。





・彼は何故、そうまでして猫アレルギーを克服しなければならなかったのか?

・猫エキスとは何か?

・そもそも、そんな治療が在るのか?

謎は残る。




彼はこんな事も言っていた。


注射1回の料金は3000円。


週に2・3回は打っていた。


単純計算で、4ヶ月に40回、
120000円分の猫エキスを注入。


腕にはヤバい薬をやってる人のように、
凄い数の注射の跡が出来たと言う。


今現在、その注射跡が綺麗サッパリ消えているのは、もしかすると猫エキスの効果なのかも知れない。


ーendー


















飛び抜けて変わった奴がいる。


あれは最早(モハヤ)病気のレベルだ。


彼に初めて話し掛けられた日の事を、いまでも覚えている。


2年前だ。


「聞いてください。僕の初めて乗った車、『GTR』なんですよ。知ってます?GTRって中古でも300万はするんですよ」


挨拶はする程度の仲だったが、その日は一挙に距離を縮めてきた。


「実はその次に買った車もGTRで、その次に買った車もGTRなんです」


コイツは金持ちのボンボンか?
そう思った。


「車‥‥好きなんだね」


『凄いね』とでも言って欲しかったのだろうけど、そこはあえてスカしてあげた。


「好きッスね。他にもクラウンとかVOXXYとか‥‥」


何台もの車を語り始めたところで、
チョッとした疑問が浮かぶ。


今まで何台乗ったの?


「15台ぐらいですかね」


1台をどれくらい乗るの?


「大体、半年くらいですかね。GTRは1年以上乗りましたけど」


君‥‥歳いくつ?


「今年、『21』です」


車の台数と、
免許の取れる年齢‥‥


計算合わなくねぇか?


そう言うと、黙り込む彼。


「‥‥‥‥」


ピクリとも動かない。


「‥‥‥‥」


追い詰められると、人ってホントに固まるんだね。


「‥‥‥‥」


息してるか?
死んでねぇ?


「‥‥‥‥」


どうでもいいけど、長ぇ~よ!!


「‥‥僕、アレなんですよ」


アレ?


「僕、『中学生』のときに車乗ってたんです!!」






‥‥‥‥いや、そりゃ無理でしょ。