ドラゴンクエストIV 導かれし者たちで鮮烈なデビューを飾ったアリーナ。
アリーナはそれまでのお姫様キャラのステレオタイプを打ち破った革命的なキャラクターであった。
というのも当時、お姫様キャラといえば敵にさらわれたり、囚われの身になって主人公に助けられるというのが王道パターンで、主体性を持ったお姫様キャラというのはまず見られなかった。
ドラクエですらローラ姫は竜王にさらわれるし、2のムーンブルクの王女も呪いで犬にされて主人公に助けられたり、ジョブも呪文使いというありきたりなもので、お姫様キャラの典型像を脱却したものではなかった。
そんな中で颯爽と現れたのがアリーナ姫である。
アリーナはサントハイム王国の姫でありながら、生粋のバトルマニアであり、力試しの旅に出たいという欲求から自室の壁を蹴破って脱走。お供を連れて冒険の旅に出るという斬新な設定の持ち主であった。
戦闘においても得意の肉弾戦で大活躍。そこらの男どもですら霞むほどの有能さを見せつけたのである。
そして、ドラゴンクエストヒーローズではとうとう声が充てられるようになった。
声を担当したのは中川翔子。
しょこたんの愛称で知られ、オタク趣味を公言して憚らないバラエティアイドルとして頭角を現し、女優、声優、歌手、イラスト、漫画、グラビアなど多方面で活躍。マルチタレントとしての不動の地位を確立した。
そんな中川翔子はヒーローズでアリーナ役に抜擢されて以来、一貫してアリーナ役を担当する事となる。
だが、その起用に関しては未だに賛否両論分かれている。
なぜアリーナの声は中川翔子なのか?
起用の経緯と理由、演技力、影響力、問題など色々と考えてみたい。
すべての始まり
2015年2月26日に発売されたゲームソフト『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』でアリーナの声を担当。
これが全ての始まりだった。
中川翔子はかねてからドラクエ好きを公言しており、この事が生みの親・堀井雄二の耳に届いた結果、堀井から直接メールで出演依頼が来たという。
しかしアリーナといえば大人気キャラクター。
ただそれだけの理由で起用されるものだろうか?
では演技力の高さが評価されたのか?といっても中川翔子の演技力はプロの声優陣には及ばない。
そもそも演技力で選ぶならプロの声優を選んだ方が固いはずである。
ではいったいなぜ起用されたのか?
堀井の中でアリーナ=中川翔子というイメージがあったからなのか?
なぜアリーナ役に起用されたのか?
アリーナ=中川翔子?
中川翔子がアリーナ役に決定したヒーローズは歴代キャラクターが何人も出ているが、アリーナ以外はプロの声優が起用されている。
アリーナ=中川翔子というイメージから選ばれたのであれば、これはいささか奇妙な話である。
なぜならアリーナだけがバラエティアイドルのイメージを持たれていたという事になるからだ。
そんな事があるだろうか?
二人の共通点
イメージから起用したとすると前述のとおり奇妙な部分もあるが、中川翔子の明るい性格、破天荒な言動、枠に囚われないマルチな活動など、そのバイタリティーの高さはアリーナを思わせるものがある。そうした共通点を堀井も認識しており、起用に繋がったという見方もできる。
話題性のため?
ヒーローズはドラクエには珍しいタレント起用の目立つ作品である。
本作の主人公アクトの声は松坂桃李だし、女性主人公は桐谷美玲、悪役のヘルムードは片岡愛之助といずれもプロの声優ではない。
この事から中川翔子の起用は話題性を狙ったものという可能性もある。
実際かなり話題になった。
サプライズ?
お供のクリフト役に緑川光が起用されたが、中川翔子は緑川光の大ファンである。
こういった事から考えると、中川翔子の起用は堀井によるサプライズだった可能性もある。
結論
堀井はドラクエ好きを公言する中川翔子を好意的に見ていた。
そして結局のところ、それが理由で起用を決めた。
その一方で、中川翔子の起用による話題性=ゲームの売上アップも計算に入れていた。
つまり中川翔子の起用はサプライズと話題性を兼ねたものだったのではないか?
というのが私の見解である。
専属声優となる
ヒーローズでアリーナ役を担当した中川翔子は、以降もヒーローズⅡ、いただきストリート、ライバルズなどに出演。
2023年に発売されるモンスターズ3でも起用されるなど、事実上の専属声優となっている。
また、舞台作品「ドラゴンクエストライブスペクタクルツアー」でも中川翔子がアリーナに扮して出演。
アリーナ=中川翔子のイメージがより根付く事となった。
こちらの起用の理由はヒーローズでの声優実績と、アリーナ愛が堀井雄二に評価された為とされる。
炎上
ヒーローズにおける中川翔子のアリーナ役起用には喜ぶ声がある一方で、戸惑いの声や批判的な声も多く寄せられた。
アリーナはドラクエの中でも屈指の人気を誇るキャラだ。
それもオールドファンからは深い愛着と思い入れを持たれているキャラクターである。
一方で中川翔子はその特異なキャラクター性からかアンチが多く、好き嫌いの分かれるタレントでもある。
そんな中川翔子とアリーナを組み合わせたらどういう反応が起きるのか。
それは火を見るより明らかだった。
また、ヒーローズは過去のキャラクターたちに声が充てられた初のゲーム作品であるという事情もあった。
中川翔子以外にも、この配役は違うのでは?と感じたファンも多かったはずだ。
ましてやオールドファンともなれば尚更。
彼らの間では「ドラクエには声はいらない」という主張もある程なのだから、中川翔子を抜きしても一定の反発はあったと考えられる。
中川翔子の演技力
YouTubeでヒーローズやいただきストリートなどの動画を見たが、中川翔子の演技力はタレント声優としてはかなり上手い部類だと感じる。
発声もしっかりしているし、棒読みではないし、映像からも浮いていない。
しかし一流のプロの声優と聞き比べると、どうしてもアマチュア臭さが感じられる。
これは私の感じ方だが、中川翔子は発声はしっかりしている。
だが、しっかりとした発声を意識するあまりに、演技そのものが単調(おざなり)となっている感がある。
中川翔子はアリーナのセリフを読むのは上手い。
だが、それが演技力の高さを意味しているのか?といえば話は別である。
プロの声優によるアリーナの声を聞く機会が失われたという問題
中川翔子が専属声優となったことで発生した問題。
それはプロの声優によるアリーナの声を聞く機会がほぼ永久的に失われたという事である。
CDシアター版では吉田古奈美が担当したが、現状アリーナの声を演じたプロの声優は彼女だけである。
以降はずっと中川翔子が担当している。
中川翔子が演じるのはいい。
だが私の意見としてはあくまで一作、もしくは外伝のみ、ゲスト出演に留めるべきだったと思う。
もしプロの声優がアリーナを演じるなら誰がいいのか?
もしドラクエ4がフルボイスでリメイクされたら?
ドラクエ3のフルリメイク作品が予定されているようなので、このまま順調にいけばドラクエ4のフルリメイク作品も制作されるものと思われる。
となればもちろんフルボイス化するだろう。
当然、中川翔子がアリーナ役に起用される。
そうなった場合、いったいどれだけ売上に影響が出るのか?と私などはちょっと考えてしまう。
というのもドラクエ4を熱烈に支持している層というのはオールドファンが多数を占めるからだ。
大体、40代以上だろうか?
ドラクエに声なんていらねぇ!という主張も叫ばれるオールドファン層。
そしておそらくは中川翔子の起用にもっとも批判的な層。
ちょっとどんな評価を受けるのか気になるっちゃ気になる。
もっとも、ボイスオフの機能が搭載されているだろうから、特に問題もなく公正な評価を受けるのかも知れないが。