コットンのシャツにゆったりめのチノパン。色白の中高い顔つきに、薄いチークが似合っている。無造作に後ろで束ねた髪を揺らしながら、彼女は私のすぐ近くの席に座った。


「ラーメン、2杯」


街角の小さな食堂に、明らかにそこだけ空気が違う感じがする。


やがて、店主がラーメンを2杯、彼女のテーブルに持ってきた。


一杯は彼女の前の老婆がゆっくりと食べている。


女は30代半ばを過ぎた頃だろうか、前に座った老婆は母親か、姑か。真っ白になった前髪の下には小さな丸い目がどんぶりを見つめている。

二人は特に会話することもなく、ただ、麺をすすっていた。


彼女は自分が先に食べ終わると、ゆっくりと食べる老婆を、じっと微笑みながら見ている。


半分位食べた頃に、老婆は「もう、いいよ」と、一言だけ声をだした。


彼女は椅子から立ち上がり、会計を済ませ、老婆の腕を持ち、寄り添うように歩きながら店を出た。


年寄りだからと、疎ましく思う雰囲気もなく、世話をしすぎる様子もなく、ただ、自然に普通に年老いた人と寄り添う姿が、彼女の美しさをより引き立てていた。


彼女が通り過ぎた後、クレマチスのような香りが、かすかに漂っていた。