◆「女性は外見より内面を磨くべき」という儒教の価値観を反映し、薄化粧が基本でした！

こんにちは、山村です！

江戸時代後期には、

女性の模範的な生き方について書かれた

「女大学」「女今川」などの女訓書（じょくんしょ）が、

寺子屋などで女子教育のテキストとして使われ、

女子はこれらの本を通して、

日常生活のマナーや結婚後の

あるべき姿を学んでいました。

　日本の女訓書に大きな影響を与えたのが、

中国後漢の時代に書かれた儒教の本

『女誡（じょかい）』と言われています。

『女誡』は、嫁ぐ娘に向けて書かれた本で、

女性の心得を記したもの。

女性が身につけるべき四つの徳として

「婦徳、婦言、婦容、婦功」が挙げられています。

これらのうち容姿に関する身だしなみ

に直接関わっているのが「婦容」ですが、

「婦容」とは、「外見を美しくすることではなく、

からだや服を清潔に保つこと」

だと定義されています。

江戸時代になると、

女訓書に衣食住の心得や化粧の仕方、

たしなむべき諸芸など日本独自の要素が加わり、

その内容は、女性の身だしなみ全般にわたる

教科書的な存在になりました。

化粧についていえば、江戸時代を通して、

化粧は女性にとって習得すべきたしなみであり、

しなければならないものでしたが、

あくまで薄化粧が基本

『女誡』にあるように、儒教の女性観に基づいて、

女性は外見より内面を磨くべし

というのが建前だったのです。

そのせいか、女訓書では、

「お歯黒は毎日つけるのがいい。

白粉は薄くつけるのがいい。

紅が濃いのは品がない」などと、

化粧のあるべき姿を教えていますが、

美しくなるための化粧という

位置づけではありません。

下の写真は、

明和2年（1765）刊の『絵本江戸紫』

（国立国会図書館所蔵）

絵入りの礼法書（マナー）本で、

「鉄漿（はぐろ＝お歯黒）」

について記されているページです。

現代風に訳すと、

「（お歯黒は）夫婦の約束が変わらない印。

歯を染めて幾千代と祝うのだから、

いつまでもその心で、

鉄漿がはげないのが喜ばしい。

鉄漿がはげるのは実に見苦しい」

お歯黒のやり方ではなく、

どんな状態が望ましいかが語られています。

実は、江戸時代を通して、

美容に関するハウツウー本は

極めて少なく、

19世紀に入って出版された美容書の

『都風俗化粧伝』や『容顔美艶考』位しか

見当たりません。

そのひとつで、よく売れて版を重ねた

『都風俗化粧伝』においても、

女性の化粧については

「美しく飾るためのものではなく、

礼儀正しい姿になり、嫁しては舅、姑、夫に

仕えるための規範となる作法」

だと定義しています。

化粧が女性にとって習得すべき作法なのは、

女訓書と同じです。

しかし『都風俗化粧伝』は美しくなるために、

どのようにメイクすればいいかという、

ハウツーがたくさん紹介されていて、

そこがベストセラーになった理由だと思われます。

化粧はみだしなみであり、礼儀なので

しなければならないが、

それは美しく飾るためのものであってはならない。

江戸時代の書物に出てくる

こうした伝統的な化粧の規範は、

現代にも生きていて、

特に仕事や就活などの場における、

女性のメイクに影響を与えているのです。

次回は明治時代以降について。

7月30日頃更新予定。

江戸時代の女性にとって化粧は習得すべきたしなみだと、女訓書にも書かれています！