2023年5月11日、社会医療法人山紀会が、組合員3名に対して提起したスラップ訴訟等が取り下げられ、組合側の勝利和解になりました!!

たくさんのご支援と連帯!本当にありがとうございます!


▲勝利和解を喜ぶ組合員と弁護団!


今回、山紀会と組合員3名は和解によって以下の訴えを取り下げました。


①  2020年4月に、労働組合として行った組合活動に対して、山紀会側が組合員3名を被告として提訴した損害賠償請求訴訟(2020年6月提訴)。

②  その訴訟手続の中で被告組合員らが山紀会に対して行った損害賠償請求の反訴(2022年6月提訴)。

③ ①の損害賠償請求訴訟の提起が不当労働行為(支配介入)に該当すると判断した大阪府労委の2022年2月18日付け救済命令に対して、山紀会が提訴した取消訴訟。


この取り下げによって、山紀会が組合員3名を被告として損害賠償請求訴訟を提起したことが不当労働行為に当たると判断した大阪府労委の画期的な救済命令が確定しました!!組合側の勝利和解です!!


■組合結成と組合潰しの経過

  社会医療法人山紀会は、大阪市西成区にある病院2ヶ所、介護施設4ヵ所、職員約700名です。組合結成は、2013年11月、やまき介護すてーしょんという部署にて職員の大多数が加入する組合(ケアワーカーズユニオン山紀会支部)を結成しました。

しかし、組合結成直後から、法人は、やまき介護すてーしょん(組合拠点部署)施設長を新たに配置した他、やまき介護すてーしょんの科長(組合員)も参加していた介護事業部内の全体会議は開催されなくなりました。

組合は山紀会に対し、施設長の配置や全体会議の他、やまき介護すてーしょんと他部署との業務連携や交流等の廃止について、抗議や団交を申し入れました。これらの事項にとどまらず、その後も、組合は山紀会に対し、やまき介護すてーしょんや組合員への対応を巡って、抗議や団交申し入れを続け、何度も団交を行いました。

もっとも、団交には理事らは一切出席せず、代理人弁護士や元労組専従者の労務担当者が対応しましたが、組合からすれば、その対応の仕方は不誠実団交といわざるを得ないものでした。

その中で、組合は、2017年に、不誠実団交の問題を含め、府労委へ救済申立てを行いました。そして、2019年に、大阪府労委は、山紀会の対応が不誠実団交に該当すると認定する救済命令を発しました(ただし、大阪府労委は、山紀会に対し、十分な知識や情報を持ち、実質的な交渉権を有する者の出席等を命じましたが、出席者を理事に特定しませんでした)。

しかし、その後も、山紀会側の団交への対応を巡って労使間で対立が続きました。さらに、山紀会は、2020年3月に、組合の中心人物である職員に対して懲戒処分を行い、その処分に関しても労使間で対立が生じました。その頃、社会では新型コロナの感染拡大が問題となっていました。

■コロナ感染と労使紛争休戦

  2020年4月、医療・介護現場にてコロナ感染が拡大してきました。組合は、法人に対して、コロナ対策に労使で力を合わせるために、労使紛争の一旦休戦を提案しました。しかし、
法人はそれを拒否しました。そこで、組合は、大阪全労協、おおさかユニオンネットと共に、
法人が指示を受けているとする医師会等へ労使紛争の仲裁を求める要請行動(要請文の手交)や、西成区の医療機関約50か所への要請文の送付行動を行いました。

要請文には、「山紀会に対して労働組合潰しを優先せずに、労使一体でコロナ対策を行い、労使紛争を一旦休戦するように要請してください」等と記載し、組合側の主張として、今までの労使紛争の経緯を記載していました。

しかし、法人は、その要請文の内容から、要請文の手交や送付行為が名誉毀損の不法行為に当たるとして、要請行動に参加した組合員3名に対し、330万円の損害賠償請求訴訟を行いました。



▲要請文


■組合は府労委へ救済申立て

組合はすぐに大阪府労委に対して、損害賠償請求訴訟そのものが組合への支配介入に該当することを理由に、救済申立をしました。

法人は概ね以下のように主張しました。

① 組合が要請文を医療機関に送付したことは、争議行為として相当性を欠いた不法行為である。

② 文書記載は法人の名誉を毀損している。組合潰しをしたことはない。組合拠点職場を孤立化させたことはない。 背面監視をしたことがない。コロナ対策より組合潰しを優先させてはいない。

③ 組合の行為は、単なる私益の衝突であり公益とは関係がなく申し入れは公益目的ではない。

④ 組合と協調せずともコロナ対策は実現できる。

⑤ 訴訟提起を不当労働行為として制限することは、憲法上の裁判を受ける権利の侵害である。

等でした。 これに対して命令は、

「憲法第32条によれば、何人も民事事件において裁判所に訴えを提起する権利は否定されない(中略)、労働委員会が公的判断をもってこれを制限することは慎重であるべきである。

しかしながら、この権利といえども無制限に保障されたものではなく、憲法第28条において、いわゆる労働三権が保障され、労働組合法において不当労働行為救済申立ての制度が設けられている趣旨からして一定の制約に服すべきこともあり得るのであって、例えば、権利の濫用に当たるなど、特段の事情がある場合は、不当労働行為に該当する余地があるというべきである」

として、考慮要素ごとの検討、評価に踏み込みました。その上で、命令は、以下のように結論付けました。

「  ①本件訴訟を提起した趣旨・目的については、本件文書の記載はいずれも組合の立場から見た事実認識あるいは意見表明とみるのが相当であり、かかる文書を医師会等に配布したことは、正当な組合活動から逸脱しているとまではいえないことなどからすると、被害回復のためのものであったかについても疑問が残るといわざるを得ず、②提起の態様については、通常なら本件文書の主体である3団体を被告とするべきところ、本件組合関係者3名を被告としているが、これは合理性を欠くと言わざるを得ず、しかも、活発な組合活動を行っている同人らを狙い撃ちにしたとの疑念さえ生じるところであり、③提起の時期は、不合理とまではいえないものの、唐突感は否めず、④組合活動への影響をみると、被告とされた本件組合関係者3名の組合活動に支障を生じさせるのみならず、他の組合員にとっても組合活動を委縮させるものである。」


▲大阪府労委からの命令


■府労委命令が確定!

 今回の和解によって、組合活動として要請文の手交・送付を行った組合員3名に対する損害賠償訴訟の提起は不当労働行為である!という府労委命令が確定しました!!

上記で紹介したように、大阪府労委は、憲法28条で労働三権が保障されていることから、山紀会の訴えを提起する権利も無制限に保障されたものでないという当然の判断を明確に示しました。そして、大阪府労委は、これまでの労使紛争の経過踏まえ、組合の要請文の内容や要請行動の態様、組合員3名を被告として訴訟を提起した山紀会側の対応、山紀会の訴訟提起による組合活動への影響等を十分に検討し、山紀会の訴訟提起を不当労働行為と認定しました。

このような救済命令が確定したことは、労働組合にとって非常に大きな成果です!

大阪府労委は、山紀会による訴訟を「スラップ訴訟」であるとは明言していませんが、「被告とされた本件組合関係者3名の組合活動に支障を生じさせるのみならず、他の組合員にとっても組合活動を委縮させるものである。」という判断からして、実質的には、山紀会による訴訟は「スラップ訴訟」であると評価されたことになると思います!

労働組合には、自分たちの生活を守ったり、良くする力や可能性をたくさんもっていると思います!!だからこそ、組合活動を阻むスラップ訴訟や組合潰しに屈することはなく、これからもみんなで団結していきましょう!!!




■闘いは続く!

山紀会による訴訟は終結しましたが、現在も不当労働行為救済申立事件は、大阪府労委(命令待ち)、中労委にて現在調査中です。また、職場内での団交も定期的に行っています!!今後ともご支援よろしくお願いいたします!