M.R.~Ἅιδης~ "EP1-1 Χάος" | じゆうのくにのぶろぐ。

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本当の自由って・・・なんなんだろうな・・・・・。
盗んだバイクで走ることかな。 学校の窓ガラス全部割ることなのかな。

2009年4月8日 05:59:57 鷹天原警察署書物庫

1993年6月13日『蛇那須村連続殺人事件』。福禄誠はその事件を追い続け、もう16年となった。当時は自分もふくめて誰も信じなかった。だからあんなにも人が死んだのだ。そしていつも思い出すと口ずさんでしまう。あの呪われた歌を・・・・・


丑を狩り 肉を抉れ
寅が友の 皮を剥ぎ
卯が野原を 逃げ回り
辰が天を 喰べたなら

罪人を裁きましょう

自分の尾を 飲み込もう
午の角で ヤツを刺せ
永久の夢の中へ
申を八つ裂け 

ウロボロスの輪の中へ

酉の頭を割ってしまおう
戌は焼いて食べてしまえ
嫌いなヤツは所詮亥
子達は逃げ遅れ 全てが始まる

ヤツ等が来た もう逃げられない

孔雀の羽は悪魔に生える

ヴァルハラには辿り着けない




「どうしたんすか、福禄さん?歌なんか歌っちゃって・・・・。」
一人の男が部屋に入ってきた。とっさに福録はファイルを机の上に置いた。
「山ちゃんか・・・・。いや、もう明日には退職だしな。いままでの事件の整理をしようと思ってな。」
山ちゃん---山崎信二は信じられなかった。山崎の中の福禄誠という男はいつまでも昔の事件を引きずるような男ではないのだ。
「福禄さん。その事件、もう解決してるんですよね?」
あたりまえだ。だってここは解決した事件を取り扱う場所なのだから。
しかし福禄は黙ってうつむいたままだった
「どうしたんすか?もしかして・・・・・。」
そんな・・・ばかな・・・・・。じゃあ、なぜここにあるんだ?
「山ちゃん。」
不意に福禄がいった。
「このあと時間あるか?」
あるはずがない。今は連続婦女暴行殺人事件の犯人を追っているのだ。しかし、福禄がこんなふうに誘ってくれたのは初めてだ。個人の好奇心を優先するか、警察官としての職務をこなすか・・・・。
僕は・・・・。
「すいません。福禄さん、俺は今の事件の犯人を絶対に捕まえたいんです。綾子のためにも・・・・。」
そうだ。僕は絶対に犯人を捕まえる。僕の妹。綾子を殺した犯人は絶対に許すわけにはいかない・・・・。
福禄はただ悲しそうに山崎を見た。そして静かに笑った。
「そうか。頑張れよ・・・。だがな・・・・。」
福禄から笑顔が消えていつもの険しい顔になった。
「仇をとろうとするんじぇねぇぞ。誰が殺されようともだ。警察官として、人として、決して道を踏み外すな。」
山崎は強く、深く頷いた。
「俺がお前にやれる最後のアドバイスだ・・・。」
「福禄さん・・・・・。明日で・・退職っすか・・・・。」
思えば、山崎が福録から教わったことはたくさんあるのだ。はじめて殺人事件を見たときも福録さんが支えてくれなかったら、今頃警察にはいないだろう。ほんの2、3年だったがその背中には警察としての力強さと、在り方を教わってきた。口では言わなかったが、大切なことは全て教えてくれた。
「けど!たまには顔を出してくださいよ!皆、福禄さんがくる楽しみにしてます!!」
福録は再び笑い
「そうだな。お前みたいなヤツを放置してたら何をしでかすか分からんからな。」
そして部屋をでていった。その背中は今まで見てきたものと何も変わらないちょっと猫背気味で、力強い背中だった。

そして-----福録は死んだ。


同年4月9日 07:23:15 鷹天原警察署捜査本部


福録が死んだのを山崎が聞いたのは、朝になってからだ。
「被害者は福録誠。お前らもよく知ってるやつだ。そいつが殺された。」
署長の声が静かに響き渡った。不自然なほどに静かな場所に。
「死体発見は昨日、午後7時50分頃。発見場所は経平霧ダム付近。」
山崎には、それがまるで呪文のように感じられた。昨日は
「最後に福録をみたのは、妻の福録花子さん、51歳。3日前から一切の消息が途絶えていた。」
え・・・・?
「正確に言えば、テレビ電話だそうだ。奥さんはテレビ電話は録画する癖があってな。それで場所を特定できた。」
どういうことだ?僕が見たのは昨日の六時頃だぞ?それに経平霧ダムといったらここから二日はかかる・・・・。
「死亡推定時刻は4月7日12時ごろだそうだ。死因は出血と痛みによるショック死。・・・・こりゃ酷いな。バラバラになっていたらしい。しかも刃物で切ったとかそういうもんじゃない。引き千切られていたそうだ。」
「なっ・・・・!!!」
つい声を出してしまった。皆の目線がつきささる。
僕が見たときにはすでに死んでいる!?バカな!!
「山崎・・。一体どうした?」
「い、いえ・・別に・・・。」
引き千切・・・・?でも・・・一体・・・・何で・・・
「凶器も動機も一切不明。血の量からみて現場で殺害されたと思われるが・・・・・なんせ山奥だ、隠すにはうってつけだな。まぁ、かなり大掛かりな物だとおもうからすぐ見つかるだろう。」
山崎には、もう何も聞こえてなかった。


同日 09:35:09 鷹天原警察署書物庫

山崎はあるファイルをさがしてた。それは
「No.10023・・・・No.10123・・・・No.10124・・・・。あった!No.10125『蛇那須村連続殺人事件』。」
昨日福録が置いたファイルの番号がしっかりと見えていた。「見たことは忘れるな。情報となることは全て覚えろ」。福録さんがいつも言っていた言葉だ。山崎は昨日見た福録が偽者だとは思えなかった。だからといって、幽霊とも思っちゃいない。しかし、ありえないことが起きたのは事実だ。
「この中をみれば何か分かるかもしれない。」
昨日、福録さんはこのファイルのことでなにか言おうとしてた。そして、死んだ。コレがこの事件の鍵になるのか・・・。それとも、"答え"そのものか・・。
山崎はファイルを開いた。そこには歌が書かれてた。


丑を狩り 肉を食べよう
寅が寅の 皮を剥ぎ
卯が野原を 駆け巡り
辰が天を 舞ったなら

人の罪を裁きましょう

心の中に巳を飼おう
午に乗って 地を駆けよう
夢の中で未は踊る
木から申を落とせたら

全ての罪の人を赦しましょう

酉の卵を割ってしまおう
戌をつれて穴を掘ろう
嫌いなものを亥箱へ
僕らは子達 家の中へ

ヤツ等が来るぞ 逃げよう 逃げよう

孔雀の羽を生やして空へ逃げよう

そこにはリンゴが生えている

夢の国はもうすぐだ



昨日福録さんが歌っていた歌か? 
ウロボロス・・・・ヴァルハラ・・・・。」
なぜ違うんだ。 それに・・・歌の感じが違う。
「クソ・・・。わけわからん。」
次には、事件の経過が書かれていた