今回は後編で完結しようと思いましたが、力尽きて、、「(後編 その1)」とさせてください。

 

前回、前々回と父の見当障害について記載しました。

 

 

 

父は常識的な人ですし、他人を困らせるようなことをする人ではありません。

また非常に器用で、素人ながら家電や水道の修理、日曜大工や園芸、ある程度のことなら何でも直したり作ったりできてしまいます。

 

だからそんな父が、風呂の蓋を並べられなかったり、診察表やお薬カレンダーなどの簡単な二次元の表を理解できなかったり、昼出したゴミを朝出したと言い張ったり、私にはとても信じられなかったのです。

 

また、見当障害とは認知症の中核症状なのだそうですが、いわゆる母の物忘れ中心の症状とは異なるので、同じ認知症に分類されるのはいまいピンときませんでした。

 

私は医療者ではないので、見当障害について正確な説明はできません。

ただ、一緒に生活する家族として私が感じた父の見当障害の症状を説明するなら、大きく分けて2つの症状がありました。

 

①時間に対する認識障害

②複数の事実(条件)から、新たな答えを導きだせない。

 

です。

 

具体的に母の認知症との違いを交えながら考察したいと思います。

 

①に関しては、前回、前々回と記載しましたが、10年以上前のことを去年のこととして認識したり、昼に行ったことを、朝に行ったことと認識したりします。

≪母の場合≫

認知症の母は過去の事象そのものを忘れてしまいます。

≪父の場合≫

父はやったこと体験した事象はハッキリ覚えていますが、その事象が発生した時系列が狂ってしまうのです。

 

②関しても、前回、前々回と記載した内容で風呂の蓋の例をあげると、

≪母の場合≫

認知症の母は風呂の蓋自体が何かわからなくなりますし、風呂に蓋をするということ自体わからなくなります。

≪父の場合≫

父は風呂の蓋はちゃんとわかりますし、風呂に蓋をするということはちゃんとわかります。そして浴槽に対して蓋が正しく合わさっているか、合わさっていないかもわかるのです。

 

ただ3枚とも違う形をした蓋で、それぞれの蓋も左右対称では無い形をしているため、上下を逆にした場合、裏表を逆にした場合で何通りもの組み合わせが表現できてしまうのです。

 

一般的には個人差があるものの、浴槽の形と蓋の形を見て無意識に頭の中で蓋のイメージを上下左右裏表に展開し、正しく合わさる位置に蓋をすると思いますが、父の場合はその頭の中でイメージして展開することができないようなのです。なので、置いた結果合っていないことはわかるので、蓋を違う位置、違う置き方に変更するということを総当たり戦で行うのです。

 

3つの置き場所、3枚の蓋、上下逆、裏表逆、裏表と上下逆、、、とそのパターンは指数的に増えていき、更に一度置いた場所や組み合わせや置き方などを正しく覚えることはできず、何度も同じ間違いを繰り返すため、風呂の蓋をすることが、父を永遠の世界に誘うのです。

 

また、お薬カレンダーや診察表などを例にすると、

≪母の場合≫

認知症の母はお薬カレンダー自体が何者なのかわからなくなります。

≪父の場合≫

父の場合は、当然お薬カレンダー自体が何者なのかわかります。

縦の列には薬がいっぱい並んでいる。横の列にも薬がいっぱい並んでいる。その縦と横の交わった場所の薬を飲むということはわかるのですが、縦と横の交わる場所を実際に見つけることが難しいようなのです。

 

続く。。。