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SM聖水紀ーウオーター・ナイツー 宇宙から飛来した聖水は地球の歴史を変えようとした。人類は聖水をいかに受け入れるのか?
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聖水紀ーウオーター・ナイツー第7回 歌姫ベラは奴隷流体シマを聖水騎士フガンの剣からたすけるため、海水から水鳥を作り出し、それに飛び乗り逃亡する。フガンは2人の行方と秘密を追う。
聖水紀ーウオーター・ナイツー第7回(1976年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所http://www.yamada-kikaku.com/
聖水騎士団の騎士フガンは、言う。
「シマくんとやら。あきらめなさい。聖水の元に身を捧げなさい。そして今までの人類のおろかさをしりなさい」
発射された聖水は、広がり、薄い粘膜の膜となり、奴隷船の漕ぎ手シマの体を包む。
当然、シマの体は消えてしまうはずだった。
しかし、聖水が、この男には反応しない。
「あなた、まさか、ロボットではないでしょうね」
聖水騎士、フガンは叫ぶ。
機械文明の象徴であるロボット、コンピューターは、この時期作ることが許されていない。
「お若いおかた。どうぞ、もう、おやめください。このこぎ人のじじいでございます。これ以上。もういじめないでください」
「シマくん。そうはいきませんよ。聖水に反応しない人間など見たことがないのです。あなた、まさかご禁制のヒューマノイドではないでしょうね?」
「おやめください」
シマは、フガンののばさせた手をふりはらう。
「あなた、さからっちゃいけませんよ。やはりヒューマノイドなのですか」
船の歌姫ベラは様子を見ている。
やはり、シマは普通の人間ではなかった。私のにらんだとうりだ。じゃ、このシマを我が組織につれていこう。可能性はある。
「おやめ。みっとないよ。聖水騎士ともあろうものがうろたえるのじゃないよ」
ベラは聖水騎士団の騎士フガンにむかって罵声を浴びせる。
「あなた歌姫ベラくん、困りましたね。あなたはいったいどちらの味方なの、はっきりしてください」
シマもベラの発言にいささか驚いている。
「私は誰の味方でもないよ。私は私の味方さ。私の思うとおりに生きているわけさ」
「あなたも、この人と一緒に捕まえて調べなければなりませんねぇ」
「いやだよ。なぜ、あんたのいう事など、聞く耳をもたないさ。あんたの相手をする。私はそれほど、ひまじゃないよ」
「レディ、いわせておけば、私にも我慢の限界があることをおわすれなく」
フガンはベラを捕まえようとした。
が、突然ベラは歌を歌い始める。どうしたのだ。シマは思った。
フガンの手をのがれながら、船の上を走り、歌えを歌う。
その歌詞をフガンは理解できない。異国の言葉、あるいは何かの記号のように思える。
ベラは船の外、つまり海にむかって受かっている感じなのだ。船の動きがおかしい。
海水が急に、甲板に撥ねあがってきた。その海水が徐々に、形になっていく。やがて、姿が決まる。
出現したのは水鳥である。この鳥のむこう側は不完全だが、透いて見える。
「面妖な事だ。レディ・ベラもこの男の仲間と見えますね」
フガンが叫んでいた。
「ほほっ、聖水騎士ならそんな事くらい自分で考えなよ」
ベラはフガンにあかんべーをする。かえす顔でシマにどなる。
「ほら、シマ、ばやぼやするんじゃないよ。はやく、この鳥にのるんだよ」
「し、しかし、ベラ、私は」
「早く、あーたら、こーうたら言ってるひまはないよ」
歌姫ベラにせかされ、奴隷のシマは、不承不承、水鳥の背に乗る。
シマは今にもこの水鳥を構成する水で溺れるのではないかとヒヤヒヤする。
フガンは、再び聖水剣を手に、にじりよっていた。
「ほら、飛び立つよ」
一瞬、フガンの聖水剣から、聖水がベラに向けられて発射される。
「レディベラ、おかえしですよ」
聖なる水がベラの肩を撫でる。
「やられた。シマ、後を頼むよ」
「そんなこと、いったってベラ、どうすれば」
シマはおろおろする。がベラは姿は消えないが、すでに気を失っていた。
「おーい、ベラ、起きてくれ。どうすればいいのだ」
が、水鳥は、シマの都合など無視して、晴れ上がった蒼弓の空へと舞い上がっていく。
船には、空を見上げる聖水騎士フガンがつぶやいていた。
「あのレディは海水を動かしましたねぇ。ひょっとして伝説の『みしるし』かもしれません」
フガンは自分の装甲服についている連絡機器のスイッチをいれる。
聖水騎士団長アマノに今の一部始終を告げ、言葉をついだ。
「少しばかり、私は今の奴隷シマ老人と歌姫ベラを調べたいのですが」
しばらくの沈黙のあと、アマノは答えた。
「よし、フガンくん、その奴隷船の船長を締め上げてみろ。何か、手掛かりがあるかもしれん」
「わかりました。アマノ団長」
「フガンくん、『みしるし』であることがわかれば、まあ、よい、気をつけろ。君は、おもわぬくじをひいたのかもしれんな」
フガンは早速、奴隷船船長にあっていた。
事情を説明し、船長の協力を得ようとした。
「奴隷流体のひとりのシマでしょう。あいつについては奴隷市場では、まったくデータがついていなかったのです」
船長はこういう。
「彼はロボットだったのでは」
「いや、それはないでしょう。生体チェックをクリアーしていますから」
「聖水紀以前は何をどこで何をやっていたのか、わからないのですか」
「いや、はっきりとはわかりません。ただ」
「ただ、何ですか。言ってください」
「ある奴隷流体がシマと歌姫ベラとがしゃべっているのを聞いていたらしいのです」
「ほほっ、それは興味深い話ですね」
「この流体はベラにほれていましたから、あまり、ベラがシマと仲がよいのでじゃまをしょうとしたらしいのですが」
フガンは話しを遮る。
「前おきはいいのです。どんな事をしゃべっていたのですか」
「シマは自分の出自をベラにしゃべっていたのです」
「どんな内容ですか。話してみてください」
内容は以下のようだった。
しがない奴隷船の流体こぎ人にすぎないシマ。彼は聖水以前の出来事の記憶がないのだ。その時、歌姫ベラが尋ねていたらしい。
「シマ、全然、記憶がないの。本当なの。おかしいわよ。私だって私のお母さんが日本の大阪駅前のデパートの売り子だってこと覚えているわ。あなたはどんな職業だったかも覚えていないの」
「残念だが、ベラ。私はある船にひろわれたらしい」
「海から生まれたとでもいうの」
「海からひろわれた後も、長い間、収容施設の病院にいたようだ。聖水によって地球の社会機構が変わった時に、その病院からほうり出された」
「それで、奴隷市場に出て、奴隷船の流体となったわけ」
「そうだ。ところで、ベラ。君はなぜ、歌姫なんかに」
「一言でいえば、才能ね」ベラは鼻をピクピクさせて言う。
「才能。ベラ、それは大きくでたものだね」
「だって、私には、その人を歌に出来るもの」
「どういう意味だね」
「どんな人でも旋律をもっているのよ、生まれながらの旋律が体に組み込まれているの。それが、私には分かるの」
「だからこそ、都市マハンにある歌姫養成アカデミーに入ったわけだね」
「おまけに優等生でね」
フガンが船長から聞き出したのは、このような内容だった。フガンはアマノに連絡した。
「わかった。それでは、フガンくん、彼らを追ってくれるかね」
「了解いたしました。団長」
聖水騎士フガンは、船長から話しを聞く間に、奴隷船の上空に自分の飛翔機を呼び寄せていた。
(続く)
聖水紀ーウオーター・ナイツー第7回(1976年作品)
作 飛鳥京香(C)飛鳥京香・山田企画事務所
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