【障害児園ドタバタ奮闘記】天使達に囲まれて…… -2ページ目

095:問題提起(続き)

えー。

前回も書いたんだけど……


「我が子が、自閉症だと気付くのは1歳半~3歳」


この歳数をとりあえず、頭の片隅に置いて欲しい。

それから、ワタシの言いたい事を読み取って欲しい。




もし自閉症の子が、2人目3人目の子供ではなく……1人目の子供だとして……

もしワタシの子供が「1人目で自閉症」だと判断されたら……


前回の通り


ワタシはきっと、もう1人……弟・妹を欲しいと思わない


だろう。


ワタシはきっと、もう1人……子供を生もうと思わない


だろう。




なぜならきっと


兄・姉が障害者


そのお陰で、その弟・妹が……意味の無いイジメや差別を受けたり

そして、もしワタシや旦那が年老いて死んだ後も……その兄・姉の世話を弟・妹がしなくちゃいけないとしたら……


ワタシはその子限りで、人生を終えても良いか


と思うと思うんだ。




でも。

もし自閉症児が……2人目、3人目だったら

確かにその兄・姉には申し訳ないが……先に生まれているんだから仕方が無い。


予期も予知も出来ないんだから仕方が無い。


そんな理屈もあるけれど……。




でもね。

そう……1人目の場合。


ワタシの考え方だと……

障害児の後に、子供を作るべきじゃないって考え方だと……


妊娠しない為の予防

生まない為の努力


は、いくらでも出来るのだから。




ココまで読んでいただいて……


「うーん……正直ユミコの意見には賛成しかねるかなぁ」


と言われる人も沢山いると思う。


そもそも「障害児の後に子供を生むか否か」

この問いに対して「何が正解」なんて無い。


ワタシも小鯵園のイロイロなお母さんと話をして……


この子の世話だけで


という人もいれば


もう1人


と言う人もいる。




それに現在、小鯵園に我が子を通わせながら……お腹の大きなお母さんだって居る。




でも案外そんなお母さんは、ワタシみたいに考えてなくって……


そう。


生む・生まない

作る・作らない


じゃなくて……


出来ちゃった


だったりするんだよね。




そんなお母さんを見ると




正直ホント、怖くないのかな?

「もし、その子も障害だったら?」って怖くないのかな?


そう思ったりしてモヤモヤするんだよ。




みなさんはどう思いますか?

ご意見をお待ちしております。










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094:問題提起

ちょいと、ちょいと……「イイ話」ばかりになってきたので

ココでしょっと「重たい話」……というか真剣な話。


そして問題提起。




それは……「兄弟の話」




ダウン症・肢体不自由など、生まれてすぐに判る障害児と違い

自閉症というのは、結構後になって判る。


泣くだけが仕事


の新生児の頃は、ホントに判別不可能。

もしその時点で判別出来るようならば……逆にそれは、かなり重度の自閉症なのだろう。




ほとんどの親が「自分の子が自閉症」と気付くのは……だいたい3歳児検診。

1歳半検診の時に「?」が付き3歳児検診で「確信」というのがセオリーで


もし1歳半検診の時に「確信」するのであれば……それもかなりの自閉症なのだろう。




さて。

どこで自閉症だと判断するか?


その話は、又の機会にするか……専門医師のサイトなどで読んでもらうとして

今日お話したいのは……「兄弟の話」




ワタシが勤める小鯵園。


その中で垣間見える、その家々の家庭環境。

自閉症児を取り巻く、親・祖父母……そして兄弟。


ワタシは、その「兄弟」について……親・祖父母とは、さらに違う特別な感情を抱いてしまう。


それは同じ「障害児の家族」ではあるのだが……ちょっと違う感情だ。




ちょっとマジメに聞いて欲しい。




まず最初に。


どのお父さんもお母さんも


障害児を生もう


なんて思っていない。




誤解を恐れずに、率直に言うならば……「障害児は望まれていない」のだ。




とはいえ……そう、生まれてしまった以上、仕方が無い。


だから小鯵園があるのだし……ワタシもそこで生き甲斐を感じて働いているのだが……

その障害児を抱える家族は、ワタシ以上に言い表せない苦労が山盛りだ。


そんな中、兄弟の立場ってどんなだろう?


コレは、ワタシ:ユミコと旦那:タロウの身近にいる……そんな障害児を持った家の兄弟の話なんだけど


とってもとっても苦労を背負っている。


例えば


兄がダウン症って理由で、虐められる弟。


例えば


兄が自閉症って理由で、結婚できない弟。




あってはならない事なんだけど……そんな現実だ。




でもね。

「例え:前者」は置いておいても……「例え:後者」は、ワタシ……判る気がするんだ。




例えば、ワタシが年頃で

例えば、ワタシの彼が「例え:後者」の弟の状況であったら……


結婚


そうなったら、すごいハンディですごく考えちゃう。


愛があれば


なんて言葉もあるけれど……現実として考えるとね。


彼のお父さんお母さんは、順番からいっても先に死んでいくワケで……

そうなると彼のお兄さんは、弟である「彼」が世話をしなくてはならない。


そうなると「ワタシ」も、その時いるであろう「ワタシの子供達」も関わってくるのだ。




今でこそ、小鯵園に勤めて……こうして障害児達と向き合って

多少なりとも理解を深めたつもりのワタシでも……


無い面倒は、無い方が良い


そう思っているのだから、今ココを読んでいる「普通の人」は、さらに思うんじゃないかな。




さて。

でも、話はココで終わらない。


もうちょっと(もう1回)ワタシの思った事を書き綴った上で……皆はどう思うのかな?


を聞きたいと思う。


とりあえず今日はココまでで。




---つづく---

093:かけっこ(?)

「おおおおおっっっ!!!ちょっと待ってっっっ!!!ちょっと待ってってっっっ!!!」


運動場は、大爆笑の渦に包まれていた。




かけっこ。




我がカニ組。

いや……正確には、ワタシ「山田ユミコ」が総力を結集して練習した「かけっこ」。


3~4人一緒に走って、全部で4回。

その3回目が……エラい事になった。


結局、直線で約30m。

練習とグラウンドも違ってか……スタートライン手前で、子供達はソワソワ。


それでもナントカ2組目までは問題なく終わった。


問題なく???


ええ。

問題なく。


相変わらず、やっぱりゴールでお母さんが待ってても……だーれも全然、気付いてくれないので

スタートラインから約5m。


そこでお母達が「おいでーおいでー」して、我が子を誘導してゴールへ。


そんなスタイルで2組目までは出来た。




が。




3組目。

ケント君の走る番。


そう。

あのケント君の走る番。


よーいドン!!


の掛け声の下………5秒ほど棒立ちの後、お母さんに気が付いて走り出したケント君。

そのまま導かれて、導かれて……後ろ向きに走るお母さんについて……ゴールするかと


思いきや!!


「あははははは!!」


何を思ったか、ケント君の横で走ってたキヨシ君。


「でんでーん!!でんでーん!!しゅっしゅっ!!でんでーん!!」


そのキヨシ君が、お母さんの真似してバックでスタート目指して走り出した。


「え?え?え?」


戸惑うキヨシママ。


うん。

どうやらキヨシ君には、目の前で手を差し伸べる中腰のお母さんが……


バックしているトーマス


に見えたらしい。


「ちょ!!ちょ!!ちょっとっ!!」


慌てて追い掛けに入るキヨシママ。


その時だった。

普段、他人にあまり興味を示さないはずの自閉症児達……。


でも、あまりに日常とかけ離れた「運動会の雰囲気」に呑まれたのか……

はたまた、あまりにキヨシ君親子が楽しそうに映ったのか。


ケント君まで、スタート目掛けてダッシュ。


「おっ!!ちょっ!!コラっ!!ケントっ!!」


追い掛ける。

追い掛ける。


キヨシママとケントママ。


でもね……。


さっきの「昼食のイッパイ」が効いたのか

それとも中腰バックが効いたのか


我が子が捕まらないっ!!


「先生っ!!先生っ!!助けてっ!!」


事の成り行きを、ポケターンと見ていたワタシ。

すでに大笑いで見ていたおかん先生。


ワタシがその言葉を真に受けて、持ち場から飛び出すと……隣には林先生も。


アララ。

2人で離れちゃったらさ……。


案の定。


スタートラインで待っていた子達も

ゴールラインで待っていた子達も


そういう遊び


だと思ったらしく


「あははははは!!」

「いひひひひひ!!」

「かかかかかか!!」


グラウンドは


逃げる子供

追い掛ける親・職員


という図式が急遽成立。



クルクル回る子供達。

クルクル回される大人達。


観客席に飛び込んだら……そこで捕まっちゃうワケだけど……。

それでもまた


「ホラっ!!行ってこーいっ!!」


なんて悪ノリする保護者がいたりして……


冒頭の大爆笑の渦になっちゃったんだ。




まぁ……そんなこんなで、ワタシの「小鯵園初運動会」は無事(?)終了。


たくさんの出会いと思い出と……それから経験と笑いを味わった。




え?

来年も?


うん。

きっと大変だろうけど……是非やりたいと思った。




次回新章。

092:お昼休み

「では、只今からお昼ご飯にしまーすっ!!」


園長先生の宣言の下、各家族がビニールシートの上にお弁当の花を広げた。


ハンバーグ

ソーセージ

玉子焼き


それに


おにぎり

サンドウィッチ


中には「手巻き寿司風」なんてお弁当もあったり。




ワタシは園支給の幕の内弁当。

なんだかちょっと味気無いけど……いつもの超忙しい給食タイムの事を考えると


ただゆっくり食べられる


それだけでも、ご馳走のように思えた。




あ。

そっか。


「今ワタシが感じた事」って……お母さん達が毎日毎日感じている事で……

それをワタシ、小鯵園でお昼だけやってて……


それでもこんなに「ホッ」とするなんて

お母さん達、ホント毎日大変だなー


って事なんだ。




シミジミ突付くお弁当。

おかん先生と林先生と突付くお弁当。


ホッと一息。

静かに静かに食べてると……観客席の至るトコロから聞こえてくる


「乾杯ーっ!!」

「乾杯ーっ!!」


の声。


え?


見ると所々……。

お弁当の脇に並ぶ、缶ビール・缶酎ハイ。


えええーっ!?




いやさ……。

いくら「楽しきゃいいじゃん!!」の運動会とはいえ……お酒はマズイっしょ!?


なんぼ土曜日とはいえ


仮にも保育の一部なんだし……

仮にも教育の一部なんだし……


それから、えーっと……えーっと……。




そうこう目を回していると、おかん先生がワタシに……


「どした?」


鯖の塩焼きを口にしながら聞いてきた。


なのでワタシは素直に


「え?ですからカクカクシカジカで……。」


と話す。


すると、おかん先生は……ちょっぴり残念そうな顔をして


「まぁ確かにそうなんだけどさぁ……。

 日常のパターンが壊れる事自体、嫌がる子供達でしょ。

 なかなか旅行とか外食とかって出来ないモンなんだよね……。


 だからこうして、外で食べる機会も無くて……。

 嬉しくて楽しくて、思わず飲みたくなるのも……。」


と話を濁した。


ま。

致し方なしって事なのだろう。


「そうですね……。」


ワタシも苦笑った。


致し方なし


それで飲み込めるようになってきたワタシも……随分「小鯵園」に馴染んできたのかもしれない。




「それよりさ……。

 このお弁当だけじゃ、お腹減るでしょ?」


おかん先生は、お弁当をペロリと平らげると……ワタシの耳元で囁いた。


うん。

確かに。


いつもなら充分な量なんだろうけど……朝からあれだけ動いていると

そして午後からも、たくさん動くと想定すると……


「ええ。そうですね。」


ワタシは小さく頷いた。


「じゃあ、ちょっとついておいで!!」


おかん先生は、スクっと立ち上がるとワタシに手招き。

保護者観覧席に向かった。


今の小鯵園のカニ組・エビ組。

ワタシの知らない午後のクラスの小学生達。


それから今は卒園して、大きくなった中学生……さらに上の子供達。


おかん先生の行くトコロ行くトコロ……


「久しぶりーっ!!」

「元気ーっ!!」


なんて、お父さん・お母さんが大喜びで手招きをしてくれる。


おかん先生は、話の傍らその家々のお弁当をポンっ!!


唐揚げをポンっ!!

玉子焼きをポンっ!!


つまんでは口に入れ……

そしてワタシの口にも、つまんでは入れてくれる。




せ……先生?

いいんですか???




職員席へ戻る途中……おかん先生。


「ま。こういうのも、普通の幼稚園・保育園じゃ……きっとダメなんだろうけどさ……


 ワタシももらって嬉しいし

 向こうももらってもらって嬉しいし


 そういうスキンシップも大事でしょ?」


ワタシはなんと返して良いか判らなくて、黙ってしまった。


「今は滅多に顔を見る機会も無くなった『大きい子達』。

 あの子達だって、初めて会ったのは今のカニ・エビくらいの時……。


 ワタシが半分育てたようなモノなんだから……家族も同然よっ!!」


そう言って笑ったおかん先生。


きっと同じ唐揚げでも、ワタシのよりおいしいんだろうなぁ。

なんて思ったりした。




---つづく---





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091:おゆうぎ

他のクラスの出し物が、沢山のハプニングと共に、次々と消化されていく。


小学生の徒競走。

中学生の障害物競走。


ワタシは、他のクラスのお手伝いをしながら……。


時に、腹を抱えて笑い

時に、自分のクラスの子供のようにハラハラドキドキしたりして


運動会を楽しんだ。




お昼ご飯のチョット前……。

あと3つプログラムが進めば、ワタシ達、カニ組の「おゆうぎ」の番。


一応お母さん達にも


「エビ組のプログラムが終わったら入場門前に集合してくださいね。」


と前もって伝えてあるのだが……それでも。

一応ぐるりと回って声掛けをする。




集合時間。




ワラワラと集まってくるうちのクラスの子供達とお母さん。

その中に


あっ!!ケント君とママみっけ!!


「遅かったじゃないのぉ!!むかできょうそう終わっちゃいましたよぉ!!」


むかでハプニングの元となったケントママを、自分で消化できる範囲で小さく小さくグチりながら……

ワタシは笑顔で迎え入れた。


するとケントママは……


「ごめんねっ!!ユミコ先生っ!!

 どれだけケントに『今日は運動会だから!!』って説明しても……

 どうしても『小鯵園に行く』って聞かなくってさ!!


 で……行ったら案の定、玄関閉まってるでしょ。


 だから!!だから!!


 って何度も言い聞かせたんだけど……頑として動かなくってさ!!」


ほとほと疲れ果てた顔で答えた。




あらら……。

そりゃ、お疲れ様です。


ケント君にとっては……「小鯵園が閉まってる」って事自体が、ハプニングだったワケね。


そりゃそうか……。


運動会の練習は、ここんとこ毎日繰り返して「日常」となりつつあるんだけど……

運動会は今日しかないからねぇ……。




ワタシは改めて「自閉症児の難しさ」を認識せずにはいられなかった。




練習の時と一緒の音楽が鳴って

お母さんと手をつないで

子供達が元気いっぱい行進して


いや……中には手を引かれても大泣きで

いや……中には引っ張っても動いてくれなくて


そんな子供もいたけれど……


なんだかあの「むかできょうそう」を終えたワタシには「楽しむ事」が最優先。


「ホラホラ!!おいでーっ!!」


って笑う顔が


きっと「何でやってくれないの?」と引き吊ってなくて

たぶん「それも味だよね!」と自然な顔になれた気がする。




そんな「おゆうぎ」は……


手を挙げたり

降ろしたり


クルリと回って

しゃがんで伸びて


お母さんに抱きついて


手を打って

飛んだり跳ねたり




なーんにも出来ない子供がいたり。

お母さんに無理無理引っ張られる子供がいたり。


それから、間違えちゃうお母さんがいたり。


揃ってる?


ううん。

お世辞にも「揃ってる」なんて言えない。


てんでバラバラ。

めっちゃんこ。


きっと幼稚園時代のワタシだったら、気が遠くなってパタンと倒れちゃうほどに。




でもね。

すごくすごく楽しそうなのよ。


そりゃ中にはキョトンとしたままの子もいるけどね。


何より、お母さんが楽しそうなのよ。


恥ずかしげもなく飛んで跳ねて。

自分の子供に笑ったり、膨れたり。


「自然」


そう。

今まで小鯵園でも、見せた事のないくらいの笑顔。


それが引き出せるなら……


揃ってなくてもいいじゃんか。




ワタシはそう思った。




---つづく---





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