ちょっとお恥ずかしい昔の話です。
僕がまだ調剤業務を始めて2~3年位の頃の話なんですけど・・・。
その頃は調剤業務に慣れて来た頃で、自意識過剰になっていた事もあったかも知れません。
いつも薬局に来られては、二人揃ってお薬を持って帰られる、高齢のご夫婦がおられました。
奥様の方は、この青二才がする服薬指導をいつも真剣に聞いてくださり、時には質問を投げかけて頂いたりと、新米薬剤師にとってはとても優良な患者さんでした。
ある日、その奥様からひどい便秘で困っていると言う相談を受けました。
お薬には酸化マグネシウム1.5g分3、センノシド錠(フォルセニッド錠:マイラン製薬)2錠就寝前、ラキソベロン液が1回10~15滴 便秘時で処方されていました。
幾度か便秘の事については、水分の摂取、お腹のマッサージ、食物繊維の摂取など、ない知識の中から必死にお話してきたつもりですが、一向に調子が良くなる気配もなく、訴えはほぼ毎回のようになってきました。
結局最後には「よくDrとお話なさってはいかがですか?」と匙を投げてしまい、これはもう仕方のない事と諦めてしまっていたのです。
しばらくして、その奥様の訴えが通じたのか、酸化マグネシウムが1.5g→3g、フォルセニッド錠が2錠→3錠に増量となり、時には浣腸も出たりとそれ以降は便秘の訴えも聞かなくなった気がしました。
ところが半年ぐらい経った頃、また便秘で悩んでいるような事をお聞きしました。
「何を飲んでも便秘が解消されない」と。
もしかしたら僕は、いい加減ちょっと腹を立てていたのかもしれません。
どうしてDrは、こんなに困っている患者がいるのに真剣に考えてあげないのだろうかと。
そこで、新たな指導内容もなかった僕は、「今度の受診の時には、腸の運動など消化管の働きを良くするお薬などもありますから、先生に相談してみて下さい」と言いました。
それから暫くして、そんな事も忘れかけていた頃、病院の薬局長から名指しで電話がかかってきました。
内科の副院長が怒っているから、事情の説明にすぐ来てくれと。
薬局長の慌て方も尋常ではないような感じでした。
僕は内科外来の前に連れて来られ、副院長の診療が途切れるのを待ちました。
まるで、首根っこを掴まれて不安気なネコのように・・・。
何故自分が名指しで呼ばれているのか皆目検討もつかず、さして怒られる理由なども見当たりませんし。
待ち始めてから5~6人目の診察が終わった頃、ついにその時がやって来ました。
副院長の表情は想像していたよりは穏やかな感じがしましたが、何故呼んだのかその理由を話されました。
その老夫婦の奥様が、診察時に副院長に便秘が治らなくて困っているから、腸の運動をよくする薬を出してくれと言ったそうです。
誰からそんな話を聞いたのか?と。
門前の薬局の男の薬剤師からだと。
あとはご承知の通りです。
副院長が言われました。
この患者はずっと便秘で困っているが、これ以上の治療をするには腸の検査などをしないと、腸に器質的変化などあるかも知れない。
再三に渡って腸の検査を勧めているのだが、ずっと嫌だと拒否し続ける。
拒否されては治療のしようがない。
もし腸の蠕動運動等を促す薬を手に入れて服用し、腸閉塞にでもなって命を落としたらどう責任をとるつもりかと。
頭をハンマーでガツーン!と殴られたような衝撃でした。
ようやく状況が飲み込めました。
副院長があの奥様の主治医だったんですね。
そんな事さえも頭に入っていなかったなんて・・・。
それに僕が何気に言った一言が、まかり間違えば大変な事になる事もあるのだという事を。
薬剤師という仕事を舐めていました。
我々が話す言葉の一つ一つにも、重大な責任がかかっているのだという事を。
現在も未だ勉強不足は否めませんが、日々勉強は続けて努力していかねばなりません。
薬剤師という仕事はそういう仕事です。
非常に責任のある仕事です。
お薬のプロでなければならないのですから。
そのうち世間からも大々的に認められ、皆から頼られる日がくる事を信じて、日々努力し進化をしていかねばなりません。
終わりに・・・。
長々となってしまい、申し訳ありませんでした。
最後まで読んで頂きありがとうございました。