本好きになったのは、推理小説が初めでした。児童書で、江戸川乱歩、ルパンなどを読んでいて、大人が読むような文庫本ではアガサ・クリスティーを初めて手に取った記憶があります。最後のドンデン返しが爽快で、そういうのを味わうのが醍醐味だし、それが王道だと今でも思っています。
その流れからすると刑事コロンボは異色だと思います。何かで最初に見たときは漠然とつまらないと感じた覚えがあります。意外な犯人を見つけるという爽快感が得られないし、延々と刑事の嫌味を聞いているだけと感じていました。
ただ、情報とは徐々に書き換えられていくもので、予定調和的な型が入り込んでしまうと、それまで盲点となっていた事柄が形を持って浮かび上がってくる感覚になります。結果が分かっているだけに、犯人とコロンボの知的攻防、人間心理に焦点が当たってきます。また、犯人に舐められるほどの風采が上がらない恰好や態度が、最後には知的に上回り、嫌味な程の小汚さも格好良いと思える程になってしまうのです。違った意味でのドンデン返しに爽快感を感じます。
詳しい人に言わせれば、また違った解釈も出てくるとは思うのですが、一般的な情報空間では、刑事コロンボ以前と以降では刑事ドラマの厚みが全く変わったのではと思わせてくれる作品です。