「…ねぇ 知ってる?学校の裏から伸びてる道を 7時半くらいに通るとさ、後ろから ぺたぺたと何かがついて来る足音がするんだって。」
「なにそれぇ・・・・また 痴漢なのぉ?きもぉ」
「でねでね、それだけでも きもいのにさ 足音の方に振り返ってみると誰もいないらしいの。だけど、丁度広い通りに出る前あたりの街灯のところで振り返るとね、真っ黒だけど自分そっくりの人が立ってるんだってーーっ!」
「うっそだぁー!」
最初に聞いたのはこんな 話だった。
どこかで聞いたような話だが それ以上に 私には違和感というか 既視感に似た感覚に囚われたのだ。あまりにありふれているその手の話に感慨を受けているだけなのだろうと その時は 自分を納得させた。それから2日後…以前聞いた話の続きを耳にした。
…
……
「…んで、その黒くて自分そっくりな人を見た人なんだけどぉ 次の日から性格が正反対になっちゃうんだってよー!!」
「なにそれっ!訳わかんない……」
なんだそりゃ…正直 私もそれを聞いた時そう思ったのだが、別のところで こんな話も聞いた。
「……でよっ って おまえきぃてんのかよっ きけよっ!
いいか?その時に後ろの奴を見た奴は 鏡に映った自分自身を見てることに気が付くらしいのよ。ここからが こぇーんだぜっ!
その鏡かぁと思ったら 今度は そいつが 黒い人になってて、その場所をさ迷うらしいんだよっ!」
「え?!何のためにって?そら 次の自分の代わりを探すために決まってんじゃんよ。」
ちょっと ホラー色が強くなったが矛盾点が あるのに その話手と聞き手は気がついていないようだ。というのは、一体誰がその話を伝えたのだろうか?
被害者は 常にさ迷ってて伝える訳がない。入れ替わった元黒い人が 自身を脅かすかもしれない そんな話を伝えるのだろうか?
第一暗がりとはいえ往来に全身が映る鏡があると思もうのもおかしいだろう。
その時は 単なるうわさ話なのに そこまで信じてしまう彼らを 少しかわいいと思ったものだ。しかし、いま思えば あの時にも既視感を感じていたのかもしれない。
そんな既視感だらけの記憶を引き出したのは、他でもないその通りを うわさ通りの時間に通っているからなのだ。しかも 思い出してきたあたりから ぺたぺたというか ぴちゃぴちゃ と音がしている気がする。
えいっ!あれは うわさだっ!誰かがそれっぽいからと 出そうだからと 勝手にありもしない話を流しただけだっ!
!!
と…その考えが浮かんだときに またも既視感が私を襲う。
…誰かって 誰なんだろう……ひどく 私はその人を知っている気がする。
確実に私の足音に忠実で そして だんだんと大きくなってきているその音に いよいよ怖くなって来て 走りだしてしまった。
強がっているとは言っても私も女だ。本当に変質者かもしれないと思ったら 逃げずにはいられなかった。
あの通りまでとは いかないまでも その手前の街灯まで 行けば変質者だったとしても 助けは呼べるはずだ!
…たったったったったったっ
…びちゃっびちゃっびちゃっびちゃっ
なおも追いかけてくる足音!
……と、そこで ふと思い出したのだ。
……あのうわさって……
もともとは 私が流したものじゃないか……?!。
そう気が付いた時に 変質者だったときのことを考えて 大声を出すつもりで 街灯の下で 振り向いたっ!
…………っっ!!!
声にもならないとは このことかっ!
なんとそこには 真っ黒な自分がいたのだ。
ありえない!ありえない!ありえない!ありえない!ありえないっっ!!
なんで?なんで?こんなことってあるの?!
なんで 黒い自分をみてたのに いつのまにか 自分自身が立ってるの?!
なんで 私 いつのまにか 街頭を見上げてるの?何で?!!
それまで黒かった自分(彼女)は ばさばさと頭を掻き毟り やれやれといった感じで 両手を広げ、そして そっと微笑み、きびすを返してこう言った。
「噂を流したのは あたしよ。ほんとに入れ替わるなんて 思わなかったわ…もう 服がびちょびちょじゃないのよ。影になんて なるもんじゃないわね」
まるでその言葉を 私は待っていたかの様に全てを理解した。
もう わたしは私ではなく ただ暗い空に浮かぶ街灯を見ている。
そう、またいつもの位置に戻ったのだ。