話のはなし (1959年) (三一新書)/川上 貫一
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著者の川上貫一さんは、戦後直後から日本共産党の衆議院議員を三期つとめられ、また党本部で宣伝教育分野の仕事をされてきた方。
この本には、演説、座談、講演等、およそ「人前で話をする」さいのハウ・ツー的な問題もふくめて、細かい点までの具体的なアドバイスが書かれている。半世紀も前にかかれたものであるにもかかわらず、今日もなおたくさんの示唆をあたえてくれる内容だ。
「あとがき」で著者は、「話」とは「話術ではない」として、次のように語る。とても印象的だった。
講演も演説も、また座談一つにしても、そのよしあしは技巧でもなければ、話術でもない。それはその人の思想であり、識見であり、内容であり、つまりはその「人」なのである。どれほど苦心しても、自分以上の話はできるものではもないし、いくら下手でも、その話は、けっしてその人以下になるものでもない。
「鳥のまさに、死なんとするや、その声悲し。人のまさに、死なんとするや、その言よし。」という言葉があるが、人間はだれでも、私利私欲をはなれたとき、その言うことは美しいと、いうことであろう。話もまた、同じことである。だから、話はむつかしいものであり、また、やさしいものなのである。
形も大事だが、それよりももっと大事なのは、話を伝えたいという、「自らの心」であり、訴えたいと思う「中身」だ、ということだろう。大いに学ばされた一冊だ。
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