年に一度の健康診断。
朝から会場に向かうと、男女入り混じった行列が既にできている。
こんなに並ぶもんだっけ?
受付が終わると、「お待ちください」と列の最後尾に誘導される。
ペーパーレス化の波が押し寄せたのか、問診票はタブレット入力。
数十人の受診者に対し用意されたタブレットは2台。
明らかに足りていない。
ようやく入力が終わったと思ったら血圧検査にも長蛇の列。
数十人の受診者に対して用意された機材は1台。
明らかに足りていない。
「あらー、ちょっと高いですね。もっかい測りますね」
1台しかないのに複数回計測する看護師。
行列ができているのにそんなことを言われて緊張し、2回目のほうが高い値が出る受診者。
醸し出されるグダグダ感。
「なんかうまく回せてませんよね」
後ろに並んでいた後輩君が愚痴をこぼす。
うっせえわ。
言うたるな。
思ってたとしても。
そのとおりだとしても。
血圧計測という名の渋滞を抜けると、あとは採血、聴力検査とスムーズに流れる。
問診待ちをしていると部屋に入ってきたのは若い女性。
はて? すぐ後ろには後輩君がいたはずだったが?
そんなことを考えるも、すぐに問診が始まり、残すは心電図。
バスに入ると寝台に通され、手首足首に拘束具(?)を付けられ、胸周りに吸盤が取り付けられる。
そのまま待っていると、外から声が聞こえる。
「女性の方入りまーす」
……ん?
さらに別の声。
「女性の方入りますんで、男性の方ちょっと待ってください」
……いや、いますけど。
器具付けられたまま、僕ここにいますけど。
多分さっきの問診待ちの時に隣に座ってた方ですよね?
え? その人がおんなじ恰好で隣の寝台に寝てんの?
手足を拘束されて、はだけさせられた胸部に吸盤をつけられた状態で寝てんの?
いいの? これいいの?
っていうか男女が同日同時間帯に健康診断ってとこからあれっ? て思ってたけど。
コンプラとかなんとか大丈夫なの?
「すみません、もう一回測りますね」
1回目なんかダメだったらしい。
そんな状況になって動揺したせいではないと信じたい。
心電図が終了すると、後輩君が受信の準備をしていた。
さっきまですぐ後ろにいたと思ったけど……?
「いやぁ、一回注射器さしたら血管に刺さってなくて『血が出ないんでもう片方の腕から採らせてください』って言われて遅くなっちゃったんですよ。ハハハ」
と、両腕に着けた止血帯を見せてくれた。
地域医療の未来は明るいねっ!