私は人間関係を築くのが苦手で、良好な関係を維持するのも苦手だ。人との付き合いが何かと上手くできずに悩むことが多い。
仕事で接する人との関係も同様で、例えば刑事弁護を引き受けた被疑者や被告人との関係も結構苦労する。

被疑者や被告人とは、仲良くすることが目的で付き合っている訳ではなく、刑事弁護という重大な使命と目的を持った付き合いなので、普通の人間関係より余計に難しい。弁護方針をめぐって衝突することもあり、気まずくなることもある。
本人の意向も尊重したいし、お互いに納得していい弁護をしたい、ということで、1日に同じ被告人に2回会いに行ったこともある。狭い接見室で、酸欠でフラフラするほど何時間も話し続けたこともある。

それが正しい弁護人の在り方かは分からない。だが、少なくとも、何時間も話し込んで衝突したり、お互いの言っていることが理解し合えず互いにイライラして気まずくなったり、気まずくなった関係を修復したり、事件やその人の生き方に対する理解が深まって強い信頼関係が生まれたり、そういうことは、接見する中でしか生じないことは間違いがない。手紙や電報が威力を発揮することもあるが、それは実際にじっくり話せる関係を前提とする。
一般的には軽微と言われるような事件の場合でも、重大事案でも同じだ。

この本庄事件は死刑事案で、しかも事は再審請求の段階にまで至っている。
我々弁護人には、誰にも邪魔されずに八木さんとじっくり話し込む時間が必要だ。弁護人と八木さんだけの秘密の話もしなければならない。
そうしなければ、本来なら、こんな超重大再審事件の弁護などやってられないはずだ。

それなのに、東京拘置所での八木さんとの面会はたった30分しか許されない。誰がどんな方向からどう考えてもおかしい。しかも、である。ただでさえ30分しか時間がないのに、傍らに東京拘置所の職員がスパイのように聞き耳を立てているので心置きなく話せない。

私だって八木さんに色々聞きたいことがある。話したいこともたくさんある。
30
分という時間制限やスパイなしの状態で八木さんに会えたら、まず伝えたいことは、弁護人がどんな気持ちでこの事件をやっているか、弁護団会議で何を話し合っているか、八木さんのために何をすればいいかどれほど必死に考えているか、詳しく詳しく伝えたい。
八木さんも弁護人に話したいことが山ほどあるだろうに。

八木さんにも、弁護団にも、十分に意思疎通し合う権利がある。一刻も早く、立ち合い職員なしの、時間制限なしの接見を実現できることを願っている。

TS