もう、隠さなくていいんだ。
爪も角も。生えている翼も。
黒いマントや頭巾をかぶって隠さなくてもいいんだ。
まわりの人と違う容姿を隠さず、そのままの姿で堂々と人前に出て行っていいんだ。
本当の姿は、周りの人と違う=醜い
隠して、周りの人と同じ振りをして、その街で暮らしていた。
そして違う人を軽蔑していた。
まわりの人と同じ反応をしないと、自分も醜い人と思われてしまうと思ったから。
それは、自分自身を軽蔑するのと同じで苦しかった。
人目につかず、こそこそ隠れてひっそりと暮らす。
隠れて暮らすことに疲れた。
その街を出てみようか?
違う街はどんなところなんだろう?
勇気を振り絞って街を出てみた。
いつもより、頭巾を深くかぶり、マントが脱げないように、いつもより頑丈に、慎重に準備をして。
それまでは、怖くて違う街、場所に行けなかったのだ。
今いる街が安心だと思っていたから。
初めて行った街には、いろいろな人たちがいた。
いろいろな容姿の人が、何も隠すことなくにこやかに暮らしている。
誰も否定したり、軽蔑することなく。
容姿が違うことは、何の障害でもなかった。
そんな街があるんだ。
そんな世界があったんだ。
あたしも黒いマントを脱いでみた。
恐る恐る、途中まで脱いではまた着て。
そんな姿をみていた人が、
「あなたは素敵よ」
「脱いでみたら、世界が変わるよ」
「私もこの街にきて脱いだの」
「そしたら、なんの問題もなかった」
「脱いだほうが楽だった」
「楽しいよ」
そう教えてくれた。
そして、自分の体験を話してくれた。
言語が通じなくても、魂が繋がり、安心感に包まれているので、伝わるのだ。
こんなに心地いい気分になったのは初めてだ。
素直になることができた。
素敵なんだって。わたし。
翼がきれいだって。
飛べていいねって。
虹色に輝く角がきれいだって。
え?
きれいだったの!?
顔を上げて、周りを見渡してみた。
あたり一面が虹色に光っていた。
とってもきれい。
私の角に光が当たって反射していたのだ。
クリスタルのように輝く角。
キラキラしていた。
あたしは、翼で自由に空を飛べるんだ。
なんて楽しいんだ。
なんて幸せなんだ。
光の近くまで飛んで行ける。
どこまでも。
自分の力で。
自分の力を信じることができたのだ。
もう大丈夫。
ユニコーンとして生きていくのだ。