日ごとに大きくなっていく赤ちゃんを抱いてさまよっていた私は、ある病院の前でこんな張り紙を見つけた。
「赤ちゃんポスト、あります」

「え、もうこんなのあるの」
 私が矢印の示すほうに進んでいくと、そこには自動販売機のような機械というか装置があった。
 私がその前に立つと「赤ちゃんポスト」がしゃべった。
「ここに赤ちゃんを入れてください」
 機械的な声ではなく、人間の声である。おそらく中に入っているんだろう。

 私は言われたとおり、赤ちゃんを投函した。
 すると、取り出し口のようなところから何か出てきた。
 私が立ち去ろうとすると「赤ちゃんポスト」がしゃべった。
「『つり銭』を忘れないでください」
「つり銭? なにそれ?」
「取り出し口にあります。『つり銭』を持って帰らないと、逮捕します」
 私は仕方なく「つり銭」を持って帰った。
「つり銭」はネコの赤ちゃんだった。