防災についてあれこれ/by 矢畑自主防災会 高橋夏木

防災についてあれこれ/by 矢畑自主防災会 高橋夏木

日本は災害大国だというのに、みんなまだまだ備えが足りないのでは?
「防災について本気を出す」ためにあれこれ思っていることを書いてみたいと思います。
興味のある方はどうぞいっしょに考えていきませんか?

 

●ポータブル電源とは?

ポータブル電源とは、入出力端子がAC100VのコンセントやUSBポートを備えた大容量のバッテリーのことで、スマートフォンを充電するモバイルバッテリーと異なり、バッテリー容量も数100Whから数1,000Whのものがあり、停電になった時に家電の給電にも使うことができます。

 

しかし、いざ災害が発生し停電になった時、ポータブル電源はどれだけ役に立つのでしょうか?スマートフォンの充電などには大変便利かもしれません。しかし、もっと電気容量の大きな電気製品にはどの程度使えるのでしょうか?

ポータブル電源を買ってしまってから、こんなはずではなかった、もっと使えると思っていた、これなら無くてもよかった、など後悔しても後の祭りです。

 

この記事では、ポータブル電源を買ってしまってから後悔しないために、前もって知っていただきたい、防災用ポータブル電源活用の落とし穴について解説していきたいと思います。

●停電になったとき、何に一番困りますか?

まず、自宅にいる時災害が発生して停電になったら、何に困るのでしょうか?

もし夜ならば明かりが欲しいでしょう。

また、冷蔵庫が冷えなくなるため、冷凍庫に入っているものが融けてしまうのも困ります。

もし夏なら冷房が欲しいし、冬なら暖房が欲しいでしょう。

食事のための熱源も使えなくなります。

停電が数時間で復旧すれば生活に大きな影響はありませんが、停電が何日も続くようだと日常生活に支障が出てきます。

何日間もトイレの水が流せなくなり、また、お風呂にも入れなくなります。

他にも、スマートフォン、パソコン、テレビ、洗濯機、掃除機、などなど、普段使っているものが使えなくなるのも困ります。

 

●ポータブル電源は万能か?

「停電が発生した際にポータブル電源さえあればすべて解決できる」と簡単に考えていませんか?

災害に遭った経験もないのに、本当に災害が発生した状況についてイメージできていますか?

 

災害が発生した際のことを冷静に想像してみると、いろいろな落とし穴があることに気づきます。

 

「とにかく充電容量の大きなものを備えておけばいいんじゃないか?」と結論付ける前に、考えておかなければならないことがいくつかあります。

●災害による停電の時、ポータブル電源をどのように使うか?

◆あなたは停電1日想定派?3日想定派?それとも、もっと長期間想定派ですか?

災害で停電になった時、あなたはその停電がどれだけ長く続くとことを想定しますか?

停電1日想定派?3日想定派?それとも、もっと長期間想定派ですか?

そして、心構えとして、停電の間あなたは電気製品の使用をどれだけ我慢できますか?

 

というのも、ポータブル電源の値段はそれほど安くはありませんし、大容量のものは一人で持ち運ぶのが難しいほど重いのです。

よく考えてから選定しないと、購入した後に充電容量が足りないことがわかったり、購入したのにほとんど活用する機会がなかったなどと後悔することになりかねません。

 

そのためには、ポータブル電源を選定する前に、あなたが「何をどれだけ我慢できるか」について想定して決断しなければなりません。

 

●ポータブル電源活用の落とし穴

災害の時は、停電が発生したとしてもいつ復旧するかわかりません。そのような状況において、ポータブル電源を活用する上で、事前に確認しなければならないことを見落としてしまわないようにしなければなりません。

 

つぎのチェックポイントを確認していますか?

 

 

・翌日のための充電場所の確保が大変

ポータブル電源で、必要な電気製品を1日使用できたとしても、翌日以降はポータブル電源をどこか停電のない場所に運んで行って充電しなければ使えません。避難所が開設されていたとしても、災害発生直後は充電できる体制にはなっていない可能性が高いと思われます。

 

果たして、ポータブル電源を充電できるところが見つけられるでしょうか?広い地域に渡って停電している場合、充電するのはかなり大変だと思います。

・ソーラーパネルの活用

ポータブル電源はソーラーパネルで充電することもできますが、ソーラパネルに頼りすぎていませんか?

ソーラーパネルで充電するにしても事前に確認しておくべきことがいろいろあります。

 

ソーラーパネルを設置する場所だけを考えても、できるだけ屋外で、日光を遮るものが無く、日光をパネルに直角になるような角度で設置できる場所を確保しておかなければなりません。また、天候が雨や曇りの日や、冬の季節などはほとんど充電できないと考えた方がよいと思います。

 

・持ち運びの容易さ

ポータブル電源を充電する場所が見つかったとして、果たしてその電源を持ち運びできますか?自家用車で運ぶにしても、家族だけで車に載せられますか?そもそも、道路は通行止めになっていませんか?

・ポータブル電源の置き場所の選定

また、家の中で電気製品に電力を供給するためには、ポータブル電源をその電気製品の近くに置いて電気コードで接続する必要があります。その際、使いたい電気製品が複数ある場合は、それらすべてを電気コードで接続しなければならず、家の中は電気コードだらけになることを想定していますか?

・自家用車での充電

自家用車にガソリンが入っていれば、車のエンジンを運転することでポータブル電源を充電できるものが主流になりつつあります。手軽に充電するために、車のシガーソケットに充電コードを差し込んで充電できるタイプのものが便利です。

しかし、車を走らせないと車のバッテリーそのものが無くなってしまう危険があるので、車での充電は緊急用と考えた方がよいかもしれません。

 

 

●ポータブル電源の仕様・コストを見てみよう

まずは、ポータブル電源の仕様・コストから見てみましょう。

そのため、ポータブル電源を充電容量によって大まかに4つの大きさに分類して考えてみましょう。

 

 

価格は変動が激しいため、平均的な金額を記載しています。購入する際には最新の金額を確認ください。

 

コストと充電容量と重量の関係を見てみると、おおよそつぎの関係があるようです。

 

 

ポータブル電源のコストを概算する場合に活用してください。

ただし、ポータブル電源のネット上の価格は変動が激しく、特売セールなどもあるので、購入する際は購入のタイミングを十分にはかることが重要です。

◆小容量ポータブル電源の特徴とおすすめ用途

小容量ポータブル電源は、充電容量がポータブル電源としては小さいが、モバイルバッテリーよりも大きいものに分類されます。

 

充電容量10,000mAhのモバイルバッテリーでは、4,000mAh(⇒4,000mAh×3.8V=15.2Wh)のスマートフォンを約1.6回(=10,000mAh×0.65÷4,000mAh=1.6回、充電効率65%とした場合)充電できるのに対し、200Whのポータブル電源では約10.5回(=200Wh×0.8÷15.2Wh=10.5回、充電効率80%とした場合)できるため、3人家族が3日間分充電できる容量を持っていると言えます。

もちろん、ノートパソコン(バッテリー容量45Wh)でも約3回充電できます。

 

また、重量が軽く、サイズも小さいため、避難所へも手軽に持ち込みできます。

災害が発生したとき、まずすぐにでも必要になるのは災害情報です。それにはスマートフォンによる情報収集が最も重要になるので、必要最小限この容量のポータブル電源は確保しておいた方がよいと思います。

 

もっと小容量型の100Whのものもあるので、もし自宅内の容量の大きな電気製品を無理に運転しないとするならば、このサイズのものがあれば十分だと思われます。

 

 

 

 

 

 

 

◆中容量ポータブル電源の特徴とおすすめ用途

中容量ポータブル電源は、充電容量が500-700Wh程度のものと分類できます。

この電源によれば、スマートフォンだけではなく、比較的小さい消費電力の電気製品にも使用することができます。

 

上の表にあるように、日常生活では欠かせない電気ケトル、トースター、電子レンジ、扇風機、炊飯器や、短時間であればノートPC、液晶テレビなどに使うことができます。これらの電気製品の1日当たりの使用回数を節約すれば、数日間使えるかもしれません。

 

また、重量も比較的軽く、持ち運びは女性でも問題なくできるでしょう。

このように、中容量ポータブル電源は、スマートフォンだけでなく、いざという時に小容量の電気製品でも短時間なら使用できるという余裕と安心感を持たせてくれます。

 

 

 

 

 

 

◆大容量ポータブル電源の特徴とおすすめ用途

大容量ポータブル電源は、充電容量が1,000-1,500Whのものに分類できます。

中容量ポータブル電源に比べると、さらに3割から5割多くの充電容量があるため、小容量の電気製品ならば余裕を持って数日間使うことができます。

 

そして、重要なことはこの電源の重量にあります。このクラスの電源の重量は約10-15㎏で、人が一人で持ち運ぶのにはほぼ限界に近いのではないかと思います。恐らく女性一人で持ち運ぶには相当大変な重量だと思います。家の中でいろいろな場所に持ち運ぶにも、よその場所に充電しに行くにしても、一人で持ち運べないとすれば何かと手間が大変かと思います。

 

すなわち、1,000-1,500Whの大容量電源は、家庭で災害に備えておくための上限の容量と考えた方がよいかもしれません。

価格も10-15万円程度ならばコストパフォーマンスとして許せる範囲にあると考えられます。

 

 

 

 

◆超大容量ポータブル電源の特徴とおすすめ用途

超大容量ポータブル電源とは、充電容量が2,000Wh以上のものに分類できます。

充電容量は一見十分なように見えますが、1日使った後のポータブル電源自体の充電方法についてどうするかをあらかじめ確認しておく必要があります。

 

重量は約20kgあるので、簡単には持ち運びすることはできず、まして女性には移動することすら難しいと思います。

この重量が重いことは、電源を取り扱ったり、電源自体を充電したりする際にかなり制約が大きいのではないかと思いますので、ここでは積極的にはおすすめしません。

 

このような事情があるためか、充電容量2,000Wh電源の価格は1,000Whの価格の3割から5割高い程度であり、充電容量に対して割安になっています。

充電容量2,000Whを求めるならば、1000Whを2台購入した方が取り扱いはし易いですが、コストが高くなってしまうのが悩みどころとなります。

 

充電容量の大きなものとしては3,000Whや5,000Whのものもありますが、これらは据え置き型と考えた方がよいと思います。また、これらは製造上の問題か、需要が少ないためかわかりませんが、充電容量に対してやや割高になっています。

 

●ポータブル電源に頼りすぎない工夫

停電の際はポータブル電源によってあれもこれも使いたいと欲がでるものですが、あまりにもポータブル電源に頼ってしまうのはコストパフォーマンスの点で得策ではありません。

 

そこで、必ずしもポータブル電源に頼らずに、電気製品自体を工夫することで消費電力を抑える方法について例を上げて紹介します。

 

◆夜間の照明は乾電池式LEDでもOK

停電の場合、夜間の照明は重要です。

しかし、必ずしも手持ちの電気スタンドをポータブル電源を使って点灯させる必要はなく、ろうそくのあかり程度で我慢する覚悟があれば、乾電池式のLEDランタンを2、3台準備しておく方法があります。

 

 

1台2,000~3,000円程度しますが、乾電池で200時間もの長時間使用できるものもあります。

電気コードがつながっていないので手軽に持ち運べるメリットや、ポータブル電源の電力をなるべく使わずに済ませることができるので、ぜひ検討してみてください。

ちなみに、100Vコンセントで使うLEDスタンド(15W)を4時間使った場合の消費電力は60Whなので、100Whの小容量ポータブル電源ならばそれだけで使えなくなってしまいます。

 

 

◆スマートフォンの充電はモバイルバッテリーにおまかせ

もし停電になってもスマートフォンだけ使えればいいと考えているならば、スマートフォンの充電はモバイルバッテリーでもできるため、長期の停電に備えてモバイルバッテリーを複数台持っておくことも選択肢の一つです。

現在では大容量のものが数千円程度の金額で購入でき、しかも日常生活で利用できるため、コストパフォーマンスが高いと考えられます。

◆冷蔵庫対策として、小型冷蔵庫を使う方法は有効か?

冷蔵庫は24時間運転しっぱなしにしなければならないため、1日当たり3,600-14,000Whの電力を消費しますが、これをまかなうためには専用のポータブル電源が必要になり、そのコストは40万円から140万円になると考えられるため、一般家庭ではあまり現実的ではないと思われます。

 

一方、30L程度の小型の冷蔵庫の場合はどうかと試算してみると、価格は1.5万円程度でまずまずですが、消費電力は年間平均で70Wで、24時間連続運転すると1,680Whになるため、2,000Whのポータブル電源で何とか1日間程度は使えそうです。

 

しかし、冷蔵庫のためだけに超大容量のポータブル電源を用意するのはやはり現実的ではないと思います。

 

このように冷蔵庫の場合は運転コストがかかるので、保冷箱かクーラーボックスを使用することで急場をしのぐ我慢も必要かもしれません。

 

●ソーラーパネルによる充電の落とし穴

ソーラーパネルの最大電力(W)に対する実際の発電量の割合は、日の長い夏の日で晴天ならばピーク時で100%近くになりますが、冬の日では太陽の角度が低くなるため、晴天のピーク時でも夏の日の約半分になります。

一方、雨天では夏も冬も関係なくピーク時でも10%程度以下になるため、ほとんど発電を期待できません。



1か月間の積算発電量を、日射量が最大の5月と最小の12月とで比較すると、2.3倍の差があります。

参考までに、100Wのソーラーパネル(有効発電面積0.52m2)を1台使った場合、5月の1日当たりの平均発電量は560Wh、12月の1日当たりの平均発電量はわずか244Wh(いずれも発電効率を20%として計算)と試算できます。ソーラーパネルを200W仕様にすれば、この2倍の電力が得られます。

ソーラーパネルを使った発電については、決して過大評価せずに、発電がほとんどできない日もたくさんあることを覚悟して運用計画を立てる必要があります。

ソーラーパネルについては、また別の記事で解説したいと思います。

参考 Nedo日射量データベース閲覧システム

 

《参考》避難所におけるポータブル電源の役割

災害発生直後においては、避難所によっては停電の所があるかもしれません。それでも、災害発生の直後は、一時的な安全と宿泊先確保のため、停電の避難所に滞在するしかない場合もあります。
このような避難所においては、普段通りの生活など到底不可能で、雨風をしのぐために宿泊さえできればよいと考えるべきでしょう。そして、おそらくその後数日の間に、避難者は電気が使える避難所に移動することになると考えられます。

したがって、避難所の規模にもよりますが、ポータブル電源は比較的短い期間だけ使用する目的で、1,000~2,000Wh程度のものが数台あるとよいかもしれません。

夜の照明は乾電池式のLEDライトを使い、ポータブル電源ではスマートフォンの充電と、冷房は扇風機、暖房は小型電気ストーブ何台かを使うようなことが予想されます。

そして、ポータブル電源の充電がなくなったら、車に積んで、停電のない地区の役所にでも行って、充電させてもらい、すぐにとんぼ返りしてまた使用する、というような運用になると想定されるので、手持ちできる1,000Wh以内の容量の電源が望ましいと思います。


●おわりに

もしも災害による停電が発生したとき、あわてず対応が取れるよう準備をしておくことは重要です。そのためには、ポータブル電源は重要なアイテムの1つと考えられます。
しかし、ポータブル電源は万能ではありません。充電が無くなったら使えなくなるのです。

そのことをよく考えて、どうしても必要なことと我慢できそうなことを、しっかりと想定して、購入プランを立ていただければ幸いです。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
 

《関連記事》

防災用ポータブル電源活用の落とし穴について解説!

ポータブル電源の充電容量について早わかり解説!

モバイルバッテリーの充電能力・充電回数を早わかり解説!

 

 

●ポータブル電源とは?

ポータブル電源とは、入出力端子がAC100VのコンセントやUSBポートを備えた大容量のバッテリーのことで、スマートフォンを充電するモバイルバッテリーと異なり、バッテリー容量が数100Whから2,000Whのものがあり、停電になった時に家電の給電にも使うことができます。

 

しかし、いざ災害が発生し停電になった時、ポータブル電源はどれだけ役に立つのでしょうか?スマートフォンの充電などには大変便利かもしれません。しかし、もっと電気容量の大きな電気製品にはどの程度使えるのでしょうか?

 

この記事では、ポータブル電源の活用に際して最も基本的な、ポータブル電源の充電容量について解説していきたいと思います。

 

 

●災害が発生したとき何に一番困りますか?

まず、自宅にいる時災害が発生して停電になったら、何に困るのでしょうか?

もし夜ならば明かりが欲しいでしょう。

また、冷蔵庫が冷えなくなるため、冷凍庫に入っているものが融けてしまうのも困ります。

もし夏なら冷房が欲しいし、冬なら暖房が欲しいでしょう。

食事のための熱源も使えなくなります。

停電が数時間で復旧すれば生活に大きな影響はありませんが、停電が何日も続くようだと日常生活に支障が出てきます。

何日間もトイレの水が流せなくなり、また、お風呂にも入れなくなります。

他にも、スマートフォン、パソコン、テレビ、洗濯機、掃除機、などなど普段使っているものが使えなくなります。

 

こうしたことがポータブル電源で解決できればいいのですが、果たしてどの程度までそれが可能なのでしょうか?

そのために、この記事ではポータブル電源の最も重要な性能であるバッテリーの充電容量の見方について解説します。

 

 

●ポータブル電源はどんなものにも使えるか?

ポータブル電源はどんなものにも使えるか?

という問いに対しては、後で解説するように、ポータブル電源に内蔵されているバッテリーの「充電容量」が関係してきますので、一概には言えません。

バッテリーの充電容量が大きければいろいろな電気製品にも使えます。

しかし、バッテリーの充電容量が大きくなれば、値段も高くなり、重量も重くなります。

従って、何でもそうですが、コストパフォーマンスを考えなければいけません。

特に、災害が発生した際には、ある程度日常生活を我慢する覚悟も必要になってきます。

 
つぎに、バッテリー容量の見方について解説していきます。
 

 

 

●バッテリー充電容量のWh(ワットアワー)とは?

◆W(ワット/消費電力)・Wh(ワットアワー/消費電力量)とは?

 
 
 

W(ワット)は消費電力を表す単位で、あらゆる電気製品にこの記載があります。

一方、Wh(ワットアワー)は消費電力量を表し、電力会社の電気料金でも用いられ、「1kWh(キロワットアワー/1kW=1,000W)当たりいくら」という設定になっています。そしてこのWhはポータブル電源などのバッテリーの充電容量の単位にもなっています。

WとWhの間には、1(Wh)=1(W)×1(h)という関係があり、消費電力量は消費電力と消費時間の掛け算で表されます。

Whは、電気製品のように電力を使う側から見れば消費電力量であり、バッテリー側から見れば充電容量(蓄えられる電力量)を表しており、基本的にはいずれも電力量を表しています。

つまり、バッテリーに蓄えられた電力(充電容量)はそっくり電気製品を使用するために消費される消費電力に使われるという関係にあり、電気製品がどれくらい運転できるかはポータブル電源の充電容量次第であると言うことができます。

この後、このWとWhは、ポータブル電源を選定する際に何度も出てきますので、しっかりと覚えてください。

●ポータブル電源のバッテリー充電容量の見方

◆WとWhの違いをもっと分かりやすく解説

WとWhの違いは、「時間の概念」が含まれるかどうかです。

つまり、Wは瞬間的な電力であり、Whはある時間電気製品を使ったときの電力の総量と言えます。

WとWhの関係は、たとえば100Wの電球を1時間点灯させた場合つぎの式で表されます。

 100W(消費電力)×1h(点灯時間) = 100Wh(消費電力量)

同様の式で、100Wの電球を2時間点灯すれば200Wh、30分点灯すれば50Whの消費電力量になります。

つまり、電球の消費電力量は、電球が持っている固有の消費電力とそれの点灯時間によって変化します。

 

 

この関係は、ポータブル電源におけるバッテリーの充電容量から、電気製品にどれくらいの時間電力を供給できるか計算するのに使われます。

 

◆ポータブル電源を使って、電気製品をどれだけの時間使用できるか?

ポータブル電源の性能のうち、バッテリーの充電容量が最も重要な性能だと言えます。なぜなら、ポータブル電源のバッテリー容量は、使いたい電気製品をどれぐらいの時間使用できるかを表しているからです。

ポータブル電源を使って電気製品をどれぐらいの時間使用できるかについては、つぎのように前述の電灯と消費電力の関係式を使って簡単に求められます。

 

 

この計算の中で使われている充電効率というのは、バッテリーに蓄えられた直流電流を交流電流に変換して出力する際に発生する損失を表す因子で変換効率とも言われ、ポータブル電源の一般的な充電効率は約80%から90%とされていますが、ここでは80%で計算しました。残念ながら充電効率100%のものは存在しません。

これを公式として覚えておきましょう。

 

 

このように、ポータブル電源の充電容量を使いたい電気製品の消費電力で割り、それに充電効率を掛けると使用可能時間になります。

◆ポータブル電源の充電効率について

ポータブル電源の充電効率は充電容量に次いで重要な性能と考えられますが、ほぼすべてのメーカーでは公表を控えています。その理由はまとめるとつぎのとおりと考えられますが、つぎのURLの記事などが参考になると思います。

 

理由

内容

条件で変動する

温度・負荷・残量で効率が変わる

数値が見栄えしない

実効容量が減るためアピールしづらい

統一規格がない

比較されると不公平になる

説明が複雑

内部ロスの説明が難しい

 

ポータブル電源の電力ロス(損失)やDC-AC変換効率について! | ノマドキャンプ

 

 

 

◆mAh(ミリアンペアアワー/電流量)とWh(電力量)の違い


 

参考までに、スマートフォンやモバイルバッテリーの充電容量でよく出てくるmAh(ミリアンペアアワー)について解説します。

このmAhもバッテリーの充電容量を表す単位として使われており、充電容量の小さいバッテリーに使われるのが一般的です。

mAhもWhもいずれもバッテリーの容量を表していますが、前者は電流量であり、後者は電力量です。つまり、Whは消費電力量(エネルギー量)ですが、mAhはエネルギーではなく電流の流れる量を表しています。

 

A(アンペア)とV(ボルト)とWの間にはつぎの関係があります。

 

 

スマートフォンのバッテリーのような小さな充電容量のものは、使い易くするため使用電圧が約3.8Vに規格化されているため、電圧分を省いて電流量だけで表すのが一般的になっています。

 

それでは、例としてバッテリー容量5,000mAhのスマートフォンの消費電量を計算してみましょう。

一般的なスマートフォンのバッテリーの電圧は3.8Vなので、これを電力量に換算するとつぎのようになります。

 

スマートフォンの消費電力 = 5,000mAh×3.8V = 19,000mWh = 19Wh

( 1,000mA = 1A )

 

●電気製品の消費電力

モバイルバッテリーによるスマートフォンの充電については別の記事(モバイルバッテリーの充電能力・充電回数を早わかり解説!)で解説していますので、そちらをご覧ください。

ここではもっと容量の大きい電気製品について見ていきたいと思います。

 

まず、家庭で使う電気製品の消費電力はどれくらいあるのか見てみましょう。

災害発生を想定して、各家庭でできれば必要と思われる消費電力量を一覧表にまとめてみました。

トースターのように、消費電力が1,000Wと大きくても、1日に15分程度しか使わなければ1日の消費電力量は250Whと小さく、逆にエアコンのように長時間使うものは数千Whと大きな消費電力量になります。

消費電力量の小さなものはともかく、数千Whもの大きな消費電力量の電気製品は果たしてポータブル電源でまかなうことができるのでしょうか?

 
 

いくつか例を上げて電気製品の使用可能時間を計算してみたいと思います。

 

◆炊飯器の場合の使用可能時間

まず炊飯器でご飯を炊く場合について見てみましょう。

飯器の消費電力を500Wとし、この電力を充電容量1,000Whのポータブル電源で供給する場合の使用可能時間を計算するとつぎのようになります。

 

 炊飯器の使用可能時間(h)= 1,000Wh ÷ 500W × 0.8 = 1.6h

 

もし、1回ご飯を炊く時間が1時間(1h)かかるならば、このポータブル電源では1回しかご飯を炊けないことになります。

 

◆液晶テレビ(32型)の場合の使用可能時間

つぎに液晶テレビの場合について見てみましょう。

液晶テレビの消費電力を150Wとし、この電力を充電容量1,000Whのポータブル電源で供給する場合の使用可能時間を計算するとつぎのようになります。

 

 液晶テレビの使用可能時間(h)= 1,000Wh ÷ 150W × 0.8 = 5.3h

 

液晶テレビの場合は5.3時間見ることができます。

 

◆エアコンの場合

つぎにエアコンの場合について見てみましょう。

エアコンの消費電力は温度に伴って変動しますが2,700Wとすると、この電力を充電容量1,000Whのポータブル電源で供給する場合の使用可能時間を計算するとつぎのようになります。

 エアコンの使用可能時間(h)= 1,000Wh ÷ 2,700W × 0.8 = 0.3h(18分)

エアコンの場合は消費電力が大きいため、1,000Wのポータブル電源ではわずか18分しか運転できないことがわかります。

 

 

 

 

 

◆電気製品の最大消費電力(W)とは?

一つ注意点があります。電気製品にはそれぞれ最大消費電力といって、電気製品の電源を入れた際に瞬間的に最も大きい消費電力が発生するときの電力のことを言いますが、この値は安定運転時の消費電力の数倍になる場合もあります。ポータブル電源の仕様にも瞬間最大出力があり、この最大出力の値が電気製品の最大消費電力より十分大きくなければ運転できませんので注意してください。

 

●最後に

ポータブル電源の選定に際してはバッテリーの充電容量以外にも、重量や出力端子の種類・数量など他にも事前に確認すべき項目があるので、ネットを使って「ポータブル電源のおすすめベスト10」などを参考にしながら十分に比較検討することをお勧めします。

 

今回はポータブル電源の充電容量の見方から充電能力の計算方法について解説してきましたが、皆さんがポータブル電源を防災に役立てようとするときの「落とし穴」について別の記事で解説しますので、ぜひ参考にしてください。

 

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●はじめに

バッテリー能力を知らずに買ってしまってがっくり。・・・なんてことは無いでしょうか?

 

日常生活においてスマートフォンを外出先で充電したり、また災害などで停電になってしまったときに充電したり、モバイルバッテリーの需要は高まりつつあります。災害が起きるたびにモバイルバッテリーが売れるということも聞かれます。

 

しかしながら、モバイルバッテリーを購入するとき、どれくらいの充電能力を持ったものを購入したらよいか迷うことが無いでしょうか?

ここでいう「充電能力」とは、「モバイルバッテリーで手持ちのスマートフォンを何回分充電できるか?」ということなのですが、みなさんはこの充電能力を十分理解したうえでモバイルバッテリーを購入されていますか?

 

この記事では、モバイルバッテリーの性能を自分の目で見極めて購入できるための知識を解説します。

 

●モバイルバッテリーの商品説明欄の例

実際、商品説明欄にはこの「充電能力」をどのように表記しているのでしょうか?以下に見ていきましょう。

市販されているモバイルバッテリーの仕様を見てみると、この充電能力についてつぎのような記載をしている製品があります。

白いおしゃれなモバイルバッテリーで、世界的に有名なオランダのPhilips社の製品をアマゾンで見てみました。

 

 

 

 

アマゾンの例で見るとつぎのようになっています。

 

①トップハイライト

コネクタタイプ   USB Type A, USB Type C, lightning

ブランド                PHILIPS

バッテリー容量   10000 ミリアンペア時間

色            ホワイト

特徴       デジタルディスプレイ, ポケットサイズ, 内蔵ケーブル, 軽量

 

②この商品について

【カードサイズで携帯便利】 PHILIPS 超小型モバイルバッテリー新登場!6.65cmx2.55cmx7.4cmのミニボディ、手のひらサイズでポケットやカバンにもすっぽり収まります。 重さはわずか176gで、手に持っても負担になりません。歩きながら充電する必要がある方には、間違いなくおすすめのアイテムです。

(中省略)

《表示件数を増やす》

 

 

上記の②において、「表示件数を増やす」をクリックすると、さらにこの5、6倍の行の説明書きが表示されます。

 

 

 

 

 

この中で注目するはつぎのところです。

 

「【10000mAh大容量&入出力USB-Cポート】 コンパクトのサイズなので10000mAhの大容量があり、iPhone 16 を約1.8回、Galaxy S24を約1.5回充電することができます。ほとんどのデバイスを複数回に充電可能なモバイルバッテリーです。・・・」

 

もし、あなたが外出先でスマートフォンを2回程度充電したいと考えているならば、このモバイルバッテリーを購入してもよいかもしれません。

 

しかし、商品説明欄の一番上にあるトップハイライトの部分には、バッテリー容量について「10000 ミリアンペア時間」と記載があるだけで、何回充電できるかについては書かれていません。

多くの人は「表示件数を増やす」をクリックしないで、ここで読むのをやめてしまうかもしれませんが、慣れた人ならば「表示件数を増やす」をクリックしてそこに記載がある充電可能な回数の記載を見つけることができるかもしれません。

 

これからモバイルバッテリーを買おうと思っている方はぜひこの点に注意して必要な説明の記述を見つけてください。

 

 

●mAh(ミリアンペア時間)の疑問?

商品説明欄のトップハイライトに記載のあった「バッテリー容量10000ミリアンペア時間」とはどういうことを表しているのでしょうか?

バッテリー容量はバッテリーとして最も重要かつ根本的な性能であるはずですが、上記の例では記載の順番が上から3番目にあり、一番上にはそれよりも優先順位の低い仕様と思われるコネクタタイプについての記載があります。最近ではバッテリー容量よりもコネクタタイプを重要視しているのかどうかわかりませんが。

 

それはともかく、実はこのmAh(ミリアンペア時間)を見れば、このモバイルバッテリーによるスマートフォンの充電回数がある程度わかるのです。

つぎにmAh(ミリアンペア時間)の意味と活用方法について解説していきます。

 

●mAh(ミリアンペア時間)について徹底解説

mAhはバッテリーの容量、すなわちバッテリーがどれくらいの充電能力(電気を蓄えられる能力)を持っているかを表しており、つぎのように表すことができます。

 

 

この式で表される「放電」とは、感覚的には、蓄えられた電気を他のデバイスに「取り出して供給する」という意味に理解してもらえればよいと思います。つまり、放電電流とは「バッテリーから電気を取り出して他のデバイスに供給する電流値」であり、放電時間とは「バッテリーから電気を取り出して他のデバイスに供給する時間」という意味に理解するとわかりやすいと思います。

 

そう考えると、バッテリー容量とは、モバイルバッテリーでスマートフォンのバッテリーに対して「1時間(h)に供給し続けられる電流値(mA)」を表していると言えます。

乾電池やモバイルバッテリー、スマートフォンのバッテリーなどの能力(=容量)はすべてこのmAhで表されています。

ただし、同じバッテリーでもモバイルバッテリーの10倍以上のバッテリー容量をもつポータブル電源になってくると、バッテリー容量の表記のし方は主にWh(ワット時間)に変わってきます。これについてはまた別途解説します。

その前に、準備としてご自分のスマートフォンのバッテリー容量を調べておいてくださいね。

 

機種名

バッテリー容量(参考値)

 iPhone 16

   約 3,561mAh

 Galaxy S25

   約 5,000mAh

 Xperia 1 V

   約 5,000mAh

 

 

 

●充電可能回数の簡単な計算方法

ここまでの説明の内容だけで、バッテリーによるスマートフォンの充電回数を簡単な計算で見積もることができます。

 

バッテリー容量が10,000mAhのバッテリーで、バッテリー容量5,000mAhのスマートフォンを充電する場合の理論上の充電回数はつぎのようになります。

 スマートフォンのバッテリー容量    5,000mAh

 モバイルバッテリーの容量      10,000mAh

 モバイルバッテリーの充電回数    10,000÷5,000×0.65 = 1.3回

 


この計算において、モバイルバッテリーの容量をスマートフォンのバッテリーで割るだけではなく、割り算した結果に0.65を掛けているのは、モバイルバッテリーからスマートフォンのバッテリーへ電気を取り出して供給する際に電気を熱エネルギーなどとしてロスする分があるからで、そのことを充電効率と言います。一般的に充電効率は60~70%ぐらいであるため、上記の計算では充電効率を65%として最後に0.65を掛けているのです。

 

 

●本当の充電能力を見抜く!

試しに、先ほどのPhilips社のモバイルバッテリーで見てみましょう。

  iPhoneのバッテリー容量                  3,561mAh

 モバイルバッテリーの容量      10,000mAh

 モバイルバッテリーの充電回数    10,000÷3,561×0.65 = 1.8回

充電回数1.8回という結果は、アマゾンでの商品説明の記載に一致することがわかります。

商品説明を疑うわけではありませんが、場合によって商品説明の記載がこの計算よりもずっと多い充電回数だったりすると、もしかしたら他の性能も疑ってかかった方がいいかもしれません。

 

みんさんも新しくモバイルバッテリーを購入する際には、ぜひご自分でバッテリーの充電回数を計算してみてはいかがですか?

 

次回は、モバイルバッテリーより大きな容量のポータブル電源の仕様でよく使われる充電容量Wh(ワット時間)と充電能力について徹底解説をしたいと思います。

ぜひまた見てくださいね。

 

 

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● 防災訓練は防災意識向上に最適な場

地域で防災訓練を企画される関係者の方々、日々の防災活動ご苦労様です。

9月1日は防災の日。同じ日に防災訓練が行われている地域も多いのではないでしょうか?

 

防災訓練は、住民の方々の防災意識を高めるために大変重要なイベントになっていますよね?

 

防災訓練に参加される方にとって、防災訓練の内容が充実していることは言うまでもありませんが、それ以外に、持ち帰っていただくお土産にも工夫することで、参加される方に、より多くの「気づき」を与えることができるんです。

なぜなら、家に帰ってからそのグッズを見ることで防災訓練を思い起こしてくれるからです!

● お土産にLEDライト・ホイッスルセットはいかが?

ここで紹介するのは、「LEDライト・ホイッスルセット」です。

セットというよりは、ライトとホイッスルが一体となったグッズといった方がいいかもしれません。

 

 

どこがお薦めかと言えば、これを身につけておくことで自分自身の命を守ることに直結するからです。

 

深夜に大規模地震が発生した場合を考えてみましょう。大規模地震が起きると、まず間違いなく停電は起きるでしょう。地震が収まった後、身の回りを確認しようにも明かりがつかず、真っ暗な中で備えの懐中電灯も見つけられない事態に遭遇してしまったらどうでしょうか?

そんな時、身に着けていたLEDライト&ホイッスルがあれば、明かりをともすことができ、その後の安全確保につながります。

 

そして、最悪のケースでは、自分が倒壊した建物の下敷きになって身動きが取れなくなるかもしれません。そんなときは、ホイッスルで助けを呼ぶことができます。

 

実は、ホイッスルの音は、120デシベルという大きな音量で、1~2km先でも音が届きます。しかも音質が高音域なので遠く離れた場所や騒がしい環境でも聞き取ることが可能なため、いろいろな騒音の中でもレスキュー隊の注意を引きつけるのにたいへん効果的なグッズなのです。

 

・「防災訓練のおみやげに非常用トイレセットはいかが?

・「防災訓練のおみやげ(2)ミニライト・笛セットはいかが?

 

試しに買ってみる場合はつぎを参照ください。

 

 

まとめて購入する場合はつぎも参考にしてください。

・210個セット/1個当たり165円(税込181円)

 ノベルティ・粗品の販促エキスポ  アルミLEDライト&ホイッスル

 

 

 


 

 

「重ねるハザードマップ」は国交省が公開しているハザードマップで、インターネット上でハザードマップポータルサイトから見ることができます。

基本的な操作方法は、同サイトの「操作方法」を参照してください。

 

 

● 「重ねるハザードマップ」はこんなに便利! 

何が便利かといえば、この「重ねるハザードマップ」ではつぎのようなことができます。

 

①日本中の地域のハザードマップを見ることができる

②調べたい場所の検索が簡単にできる

③拡大縮小ができ、道路も小路まで描写されている

④指定した場所の災害リスクがポップアップ表示される

⑤マップ上でハザードあり/なしの選択ができる

⑥マップ上で見たいハザードを選択し、しかも重ねられる

⑦マップ上に文字や図形を描くことができ、ファイル保存や印刷ができる

⑧2点間の距離や囲みの面積を計測できる

 

このように、「重ねるハザードマップ」はとても便利なハザードマップですが、パソコンでないと使えない機能もあるので、ぜひパソコンを使って見ていただきたいと思います。

● 便利な機能をもう少し詳しく見てみよう!

1)検索が簡単

①見たい場所の住所を入力すると、その住所を中心としたマップが開く

②「現在地から探す」をクリックすると、現在いる場所のマップが開く

③場所を指定しただけでその場所の災害リスクがポップアップで表示される

④「+/ー」マークをクリックすることでマップの拡大・縮小ができる

⑤マップは主な私道まで細かく描写されている(国土地理院作成)

⑥マップ上の建物は実際の形状まで描写されている(国土地理院作成)

 

※ マップには公共施設は載っていますが、商業施設はほとんど載っていません。

 

図 住所検索した洪水ハザードマップ

 

図 住所検索した位置の災害リスクポップアップ

 

図 拡大したマップ

 

図 最大まで拡大したマップ

 

2)マップの表現方法が選べる

①マップ自体の表現方法を次の中から選べる

 ・標準地図:建物はオレンジ色、道路・文字は黒色で表示

 ・淡色地図:白黒のみで表示(後でハザードを重ねるとき見やすい)

 ・白地図:市区町村の境界のみ表示

 ・English:地名を英語表記(ただし主たる地名のみ表記)

 ・写真:衛星写真(高解像度で建物の特徴まで明瞭)

 

図 マップ表現方法の選択

 

②開いたマップ上で必要なハザード(災害種類)を選べる

 ・洪水・内水

 ・土砂災害

 ・高潮

 ・津波

 ・道路防災情報(冠水想定箇所・交通規制区間)

 ・地形分類(地形分類の成り立ち・災害リスク)

 

図 ハザードの選択

 

③開いたマップ上で複数のハザードを重ねて表示できる

 ・各ハザードと道路防災情報を重ねて見ることで、避難ルートの確認に使える

 ・水害ハザードと土砂災害を重ねて見ることで、最も危険な場所がわかる

 

 ※ 洪水・内水、高潮、津波のハザードを重ねると、浸水深さが一部浅く表されるため、水害ハザードについては別々に見た方がよい。

3)マップをいろいろ編集できる

①ハザードの透過率を調整できる

ハザードの色合いは固定されているが、ハザードの透過率を調整して下地のマップの表示が透けて見えたり隠したりすることができる。

 

※ ハザードが透けるとはいえ、下地のマップの線はハザードの下に隠れてしまうため、薄くしか見えなくなってしまいます。したがって、ハザードを出したり消したり操作して見るとよいかもしれません。

 

図 洪水ハザードマップ(透過率2%)

 

図 洪水ハザードマップ(透過率49%)

 

図 メニュー

 

②マップ上に図を描くことができる

 ・マップ上に直線、曲線、円、多角形、フリーハンド図を描くことができる。

 ・線の色、太さ、透過率も選べる。

 

図 直線の作図

 

図 フリーハンドで作図

 

③マップ上にマークを付けることができる

 ・付けたいマークはいろいろな種類から選べる。

④マップ上に文字を書くことができる

 ・場所を指定して、文字を書くことができる。

 ・文字の色、大きさ、背景色を選べる。

⑤マップ上の2点間の距離や囲み内の面積を計測することができる

 ・直線距離はもちろん、フリーハンドで描いた曲線の距離も計測できる。

 ・ポリゴンで描いた多角形の面積を計測できる。

 

図 2点間距離の計測

 

図 多角形面積の計測

 

図 文字・図形等を追加した例

4)その他いろいろなことができる

表示設定、断面図、並べて比較、重ねて比較、印刷、画面を保存、共有、外部タイル読み込み

 

● 「重ねるハザードマップ」でどのような活用ができるか?

「重ねるハザードマップ」の便利な機能をいろいろと見てきましたが、このような機能をうまく使いこなせるにはそれなりに経験を必要とします。パソコンに不慣れな高齢者などは恐らく全機能は使いこなせず、活用できる範囲はごく限られてしまうかもしれません。

このようなことを考慮したうえで、このハザードマップを使ってどのように有効活用できるか考えてみましょう。

 

最大の特長は、住所を指定すれば即座にその位置を中心としたハザードマップが現れることではないでしょうか?

 

① 住所検索ができる

たとえば、自宅の周辺の災害リスクを知りたい場合、つぎのような使い方になります。

 

一般的な市区町村発行のハザードマップでは、まずハザードマップを開き、それを拡大しながら目を凝らして自分の家をマップ上で探す必要がありました。

 

しかし、重ねるハザードマップを使うと、他の(Google マップのような)一般的なマップと同様に、自宅の住所を入力することでその周辺のマップがすぐに現れ、それに重ねて洪水などの種々のハザードを表すことができます。しかも、自宅周辺の災害リスクが画面上にポップアップで表示されるので、即座に災害リスクを知ることができます。

これだけでも十分な価値はあると思います。

 

さらに、このマップで自宅の位置を見ながら、市区町村発行のハザードマップと見比べてみると、市区町村発行のハザードマップ上で自宅の位置を比較的容易に見つけることができるでしょう。

 

このくらいの操作であれば、パソコンに不慣れな方でも十分使えるのではないかと思います。

 

つぎに、重ねるハザードマップと茅ヶ崎市のハザードマップを並べてみました。どちらの地図が場所を調べやすいか一目瞭然ではありませんか?

まあ、重ねるハザードマップの方はハザードを「重ねる」必要上、ハザードの色がぼやけているのはしょうがないですね。

 

図 重ねるハザードマップと茅ヶ崎市のハザードマップの比較

 

② マップ上で必要なハザード(災害種類)を選べる

開いたハザードマップ上で、種々の災害(洪水・内水・土砂災害・高潮・津波)を選ぶことで、災害の種類別に自宅周辺の災害リスクを知ることができます。

さらに、災害が発生した際には、道路防災情報(冠水想定箇所・交通規制区間)を選ぶことで、自宅周辺の交通事情をリアルタイムで知ることができます。

 

この操作についても、それほどの経験が無くても容易にできるのではないでしょうか?もちろん、ここまでならばスマホでも同様な操作はできるので、パソコンを持っていない方、パソコン操作に不慣れな方でも容易に活用することができると思います。

 

③ マップの編集機能を活用する

マップの編集機能は、ハザードマップにいろいろな記述や描画を追加して、オリジナルなハザードマップを作るのに活用することができます。

 

では、オリジナルなハザードマップはどのようなときに必要になるのでしょうか?

・自宅周辺の災害リスクを自身で確認する(自助)

・地域の人たちのために、地域特有の災害リスクをわかりやすく知ってもらう(共助)

主にこの2つの目的に活用できるのではないでしょうか?

 

重ねるハザードマップの編集機能は、実際使ってみて、慣れるといろいろなことができますが、パソコン操作にそれほど慣れていない人にとってはちょっと難しいと感じられるかもしれません。

特に、地域の人たちのための、わかりやすいハザードマップを提供するのが目的の場合、主に地域の防災活動を推進されている自主防災組織(自主防災会)の皆さんが作るわけですから、その中でパソコンに堪能な方が代表して作ることになると思います。

 

図 重ねるハザードマップによる矢畑オリジナルハザードマップ(ハザード有る無し)

 

 

上の図が重ねるハザードマップで編集した画像で、それに洪水ハザードを重ねたものがその下の画像です。

 

洪水ハザードは出し入れが可能で、もしハザードを重ねた状態で見づらければ、ワンクリックでハザード無しの状態にできます。また、ハザードの色の透過率を上げていけば下地のマップが見やすくなります。

 

図 茅ヶ崎市ハザードマップによる矢畑オリジナルハザードマップ(ハザード有のみ)

 

重ねるハザードマップでは付属の編集機能を使って編集していますが、編集内容をパソコンに保存でき、必要な時にマップ上に呼び出すことができるので便利です。

茅ケ崎市のハザードマップについては、マップを切り取って、パワーポイント上で作図しました。

編集そのものについては、パワーポイントの方がバリエーションが豊富で融通が利きます。手間については、慣れればそれほどの違いは感じられないかもしれません。

 

重ねるハザードマップをベースにしたものと、茅ヶ崎市ハザードマップ(PDFファイル)をベースにしたオリジナルハザードマップを並べてみるとどうでしょうか?

 

・洪水ハザードマップなので、水色を基準にした方が洪水をイメージしやすい。一方、重ねるハザードマップでは、ハザードがピンク色や黄色で表されている。

・市のハザードマップでは、道路と建造物の線の色が同じため、特定の場所を見つけづらい。一方、重ねるハザードマップでは、道路を実線で、建造物はグレーで塗りつぶした四角で表示しており、道路がくっきり見えているためマップ上で場所を特定しやすい。

・重ねるハザードマップにハザードを重ねると、下地のマップが見づらくなるが、ハザードの色の透過率を上げることで下地のマップを見やすくすることができる。

 

地域で行うハザードマップの説明会などで、参加者に地域オリジナルのハザードマップを配付するような場合、つぎのような裏技で作る方法もあります。

 

図 重ねるハザードマップのベースを使い、パワーポイントで編集

 

まず、重ねるハザードマップでできる編集なしのハザードマップを作り、その画像を切り取ってパワーポイントに貼り付け、パワーポイントの編集機能を使って必要なコメントや描画を行って編集します。

 

こうすることによって、マップ上の道路がくっきりと描かれた上に、ハザードを適度な透過率で重ね、さらに必要な関連情報をある程度融通性をもってマップ上に描くことができます。

● まとめ

重ねるハザードマップと市区町村公開のハザードマップでは、以上のようなメリット、デメリットがありますが、おおむねつぎのことが言えると思います。

 

・場所の検索には重ねるハザードマップが断然便利。

・重ねるハザードマップでは、知りたい場所の災害リスクをワンクリックで知ることができる。

・重ねるハザードマップでは編集はマップ上ででき、保存もできる。

・地域の人たちに防災のプレゼンをするとき、地域の災害リスクをネット上で見せながら説明するのに便利。

 

最後に上げた、重ねるハザードマップを使ってプレゼンする場合は、画面上で見せて説明しただけではすぐに忘れられてしまうので、プレゼンで使用する主な画像を事前に紙に印刷しておいて、プレゼン参加者に配ってあげる配慮が必要だと思います。

 

せっかく地域の人たちに説明会に来ていただくのですから、配付するハザードマップは可能な限り見やすく、わかりやすいものが必要です。せめて、マップ上で自宅の位置がすぐにわかるようなハザードマップを差し上げてください!

 

● 自主防災組織(自主防災会)の皆さんのための補足

自主防災組織で防災活動を推進されている方々に、重ねるハザードマップの中の利用価値のある機能を見ていただきたいと思います。

●「地形分類」でその場所の成り立ちから災害リスクを知る

「地形分類」では、マップ上をクリックすることによって、「扇状地」「氾濫平野」といった地形分類と、その地形分類の成り立ち、災害リスクが分かります。

 

つぎの図(上)は洪水ハザードマップです。ここで、赤い丸印の場所はハザードの色塗りがありませんので、凡例によれば「浸水なし」ということを表しています。

ところが、同じマップ上で「地形分類」を重ねてみると、図(下)に示した多色塗りのマップになりました。これは、色区分により地形を分類したものです。

 

図 洪水ハザードマップ(単独)

 

図 洪水ハザードマップに「地域分類」を重ねたマップ

 

例えば、先ほどの赤丸印の部分は蛇行した水色で塗られていますが、赤丸印の中をクリックするとつぎのようなポップアップが現れます。

 

図 地形分類における災害リスク

 

図 地形分類における災害リスク(拡大図)

 

ここには、つぎのことが書かれています。

・土地の成り立ち

 かつて河川の流路だった場所で、周囲よりもわずかに低い土地。流路の移動によって河川から切り 離されて、その後に砂や泥などで埋められてできる。

・この地形の自然災害リスク 

河川の氾濫によって周囲よりも長期間浸水し、水はけが悪い。地盤が軟弱で、地震の際の揺れが大きくなりやすい。特に埋立(盛土)した地域では液状化の発生傾向が非常に強い。

 

つまり、洪水ハザードマップでは「浸水なし」と表されていた場所が、土地の成り立ちから見ると「この場所は、浸水はないわけではなく、もし浸水するとむしろ水はけが悪いため長期間浸水し続ける危険がある」という災害リスクが示されています。

 

さらに、それに加えて、「地盤が軟弱で、地震の際の揺れが大きくなりやすく、特に埋立(盛土)した地域では液状化の発生傾向が非常に強い」ことまで示されています。

 

自主防災組織関係者の皆さんには、地域での防災活動推進の際には、ぜひここまでの情報をくみ取った上で、「災害には油断せず備えて」いただくことを地域の皆さんに伝えていただきたいと思います。

● 防災訓練は防災意識向上に最適な場

地域で防災訓練を企画される関係者の方々、日々の防災活動ご苦労様です。

防災訓練は地域における住民の方々の防災意識を高めるために大変重要なイベントになっていますよね。

 

防災訓練に参加される方にとって、防災訓練の内容が充実していることは言うまでもありませんが、それ以外に、持ち帰っていただくお土産にも工夫することで、参加される方に、より多くの「気づき」を与えることができますよ。

 

● お土産に携帯トイレを薦める理由

ここで紹介するのは、1回分ずつ個装パッケージになった携帯用トイレ「ポイレ」です。小便、大便に使用でき、水なしで排泄物を可燃処理で、防災、停電や渋滞などの非常時のトイレの備えにおすすめです。

 

どこがお薦めかと言えば、1回分ずつ個装パッケージになっていることなのです。実際の災害時のための備蓄用には、ある程度の回数分をまとめてパックし、廃棄用の袋もいつも使っているようなポリ袋を別途購入して備蓄しておくのが経済的です。

しかし、今回の目的は、防災イベントに参加された方へのお土産で、まずは1回でも使ってもらって後は各自購入して備蓄してもらう「気づき」を促すことなので、1回分で十分なのです。

 

 

パッケージは、ごらんのようにピンク色でとてもおしゃれなので、ともすればトイレをイメージするような感じではなく、もらう方としてもうれしいのではないかと思います。

 

値段は、20個入りで3,170円(アマゾン)、1個当たり159円なので、防災備品としてはわりと安価です。これが、非常食となると、1食当たり300円以上するので、お土産としては費用がかさんでしまいます。非常食は、ローリングストックしてうまくコントロールしないといけませんね。

 

以上、防災訓練でのお土産について、携帯用トイレを紹介しました。

コスト、見栄え、用途のいずれの点からしても、防災イベント用には最適かもしれませんね。

 

・「防災訓練のおみやげに非常用トイレセットはいかが?

・「防災訓練のおみやげ(2)ミニライト・笛セットはいかが?

 

 

 

 

 

 

 

前回記事「ハザードマップはこう使う!」ではハザードマップとはどういうものか、またどのように見て使えばよいのかについて紹介しました。

 

ハザードマップとは、災害時に影響が及ぶと想定される区域や避難に関する情報を地図にまとめたものです。また、平常時から住民に防災意識を持ってもらい、災害時に円滑に避難行動を行い、人的被害の軽減を図ることが主な目的とされています。

簡単に言うと、ハザードマップとは皆さんの住む地域の「災害の危険を表した地図」のことです。

 

ハザードマップを上手に使うと、お住まいの地域にどのような自然災害の危険があるかを把握することができます。自宅周辺だけでなく、通勤・通学に使用する地域や、買い物やレジャーなど日常生活で頻繁に使用する地域の災害の危険も確認することができます。従って、平常時からハザードマップを見て、危険地域を確認していざ災害が発生したときどの方向に避難するか?また避難所はどこか?を確認しておくことが重要になります。

 

今回の記事では、防災の第一歩になるハザードマップが現在どれだけ活用されているか、国による調査結果をもとに見ていき、つぎにもっと活用してもらうための対策について考えていきたいと思います。

●ハザードマップを見たことがない?!

このように、ハザードマップは災害大国日本に住む人たちの防災行動の第一歩であるはずなのですが、実際のところ活用状況はどうなのでしょうか?

 

 

内閣府令和2年版防災白書に記載されていますが、「令和元年台風第19号等による災害からの避難に関するワーキンググループ」にて報告された、台風第19号による大規模な水害によって人的被害が生じた市町村のウェブアンケート「住民向けアンケート結果」によると、台風第19号が発生した時点でハザードマップを見たことがある人は75.5%で、一方、24.5%の人は見ていないことがわかっています。

 

驚くべきことに、「ハザードマップ等を見たことがない」人が21.7%、「見たことはあるが、避難の参考にしていない」人が24.2%に達しており、合計45.9%の人がハザードマップを活用していないことがわかっています。この上、ハザードマップが公表されていない地域の人2.9%を加えると、48.8%というほぼ半数近くの人がハザードマップを活用できていないことになります。

 

ハザードマップを見たこともない人が多いのは残念ですが、せっかくハザードマップを見ても避難に活用していない人も少なからずいるのはもったいないですね!

● ハザードマップを見ていた人ほど避難していた!

また、台風19号の際の避難行動について、つぎのような結果が得られています。

 

・ハザードマップを見たことがある人

 

・ハザードマップを見たことがない人

 

「ハザードマップ等を見たことがあり、かつ自宅が洪水や土砂災害等の危険地域にある人」は43.5%の人が「避難した」と回答したのに対し、「ハザードマップを見たことが無い人」で避難したと回答した人はわずか16.4%、「ハザードマップが公開されていない地域の人」で避難したと回答した人もわずか11.4%でした。

 

この結果からわかるとおり、ハザードマップを見たことがある人ほど避難したと言えます。つまり、ハザードマップを見るという行動が、「いざというときに避難する」という行動に結びついていたと言えます。

 

ただし、この結果については逆の見方もできます。すなわち、「防災意識の高い人ほど自発的に避難について考え、そのためにハザードマップを活用する」ということです。

 

避難行動を決断できるようになるためには、ハザードマップを見るのが先か?防災意識を高めるのが先か?などと、どちらを先にするかと考えてもあまり意味がなく、目の前にあるものから手に触れて行動を開始したいものです。

● なぜ、ハザードマップはあまり活用されないのか?

それでは、どうしてハザードマップがあまり活用されていないのでしょうか?

国交省「ハザードマップのユニバーサルデザインに関する検討会」令和3年12月23日(国土交通省 第 1 回 資料 7-1)で報告された「ハザードマップに関する現状と課題」によるとつぎのような調査結果が得られています。

 

Q. 自分が住んでいる市区町村の水害ハザードマップを見たことがありますか

 

令和3年8月に、ハザードマップが作成されている市区町村に居住する一般住民1500人に対しwebアンケートを実施したところ、ハザードマップを見たことがある人は約7割、逆に見たことがない人は、31%であることがわかりました。

 

また、見たことがある人について、「見ようと思ったきっかけ」を問うたところ、①「避難に備える」、②「市町村から配布された」の順に多いことがわかりました。

見ない人について、「見ない理由」を問うたところ、①「これまで水害の危険が迫ってない」、②「水害の危険が無いと思っている」の順に多いことがわかりました。

 

ハザードマップを見るきっかけとなった理由のうち、「避難に備える」と答えた方は防災意識が高く、自主的にハザードマップを見られた方なので、全く心配いらないと思われます。

 

また、「市町村から配布されたので見た」という方は、その気は無くても「目の前にハザードマップがあったので手に取って見た」という単純なメカニズムではあったにしても、住民にとって避難行動に一歩踏み出せたという意味で、「ハザードマップを配付すること」は大変効果的であったのではないかと言えます。

 

一方、見ない理由については、「今まで、水害の危険がない」「今後も危険が無い」とは、どんな情報をもとにしてそのように思っているのでしょうか?本来その根拠となるのが「ハザードマップ」のはずなのですが・・・。つまり、「今までなかったからこれからも無い」と思い込んでいるだけのようです。

検討会では、防災意識の低い住民への周知・啓発が課題であるとしています。

 

Q. ハザードマップは避難や避難判断に役立っていると思いますか

Q. 「あまり役にたっていない」、「まったく役に立っていない」と回答した方は、なぜそのように感じていますか。 N=123 ※複数選択あり

 

つぎに、ハザードマップを見たことがある人について、ハザードマップが役に立っているかどうかについて問うたところ、ハザードマップは避難や避難判断に、「大いに役に立っている」「ある程度役に立っている」と回答した人は79%、また「まったくに役に立っていない」「あまり役に立っていない」「わからない」と回答した人が21%でした。

 

また、「役に立っていない」と回答した人のうち約40%の人は、理由として「自宅にとどまってよいか避難所に行く必要があるか分からない」「どのような危険があるか分からない」などと回答しています。

 

このように、ハザードマップを見てもなかなか災害の危険や避難の必要性を認識することができない人も一定数おり、ハザードマップ本来の目的は十分達せられていない状況です。

● 若い人ほどハザードマップを見ない!

株式会社ゼンリンによる「自然災害リスクに関する意識調査」(2023年ハザードマップの利活用や日ごろの備えに関する実態について)の調査委結果から、ハザードマップ活用の年代別状況を見てみましょう。

 

 

 

ハザードマップを知らない、見たことが無い、見ても災害を把握していない人が全体で61.7%もいました。年代別にみると、ハザードマップ利用と災害リスク確認経験は高年層ほど高く、20代の約5人に1人は「ハザードマップを知らない」という結果である一方、60代以上では50%以上の人が「ハザードマップを見て災害リスクを把握している」という結果でした。

 

この原因を考えてみると、20代の若い世代ほど日常生活の優先順位が高く、30~40代になって子育てが一段落すると生活にやや余裕ができて災害にも関心を示し始め、さらに50代以上になると老後生活を含めた身の回りのことに関して考える機会が増え始めると考えられます。

 

そう考えると、ハザードマップの周知と活用推進は、各年代に応じた対応が求められるのではないかと思われます。

● 課題のまとめ

以上をまとめてみると、この調査結果から言えることは、まず31%もの人が「ハザードマップを見たことすらない」ということ、また見たことがある人であっても、そのうちの21%の人が「役に立っていない」との認識です。

 

年代別にみると、ハザードマップ利用と災害リスク確認経験は高年層ほど高く、20代の約5人に1人は「ハザードマップを知らない」という結果でした。

 

ハザードマップのさらに活用するための課題をまとめてみると、つぎのようになります。

① 国や市町村によるハザードマップの存在と活用方法の周知が十分でない。若い世代ほどハザードマップを見ていない。

② ハザードマップ自体にも問題があり、見ても避難行動計画に落とし込めない人が多い。

③ 住民側でも自らハザードマップを見て避難行動計画を立てようと考えない。

 

3つ目の課題は、住民の「防災意識」が必ずしも高くないことに原因があるのではないかと考えられます。別途記事(「日本は災害大国なのに防災意識が低いのはなぜ?」「防災意識の低さをナッジ理論で分析してみた!」「防災意識を高めるためのナッジ理論の応用あれこれ」)でも紹介しましたが、日本人は防災大国に住んでいるにもかかわらず防災意識は必ずしも高くなく、防災訓練などに参加したことがある人も43.6%に過ぎない状況にあります。参加しない理由は特に切羽詰まったものでは無く、防災にかかわる行動が日常生活(仕事、家庭生活、子育て、介護など)に比べて優先順位が低いのではないかと考えらえます。

 

以下では、これらを解決するための対策例を示してみたいと思います。

 

● ハザードマップをもっと活用していくための提案

(1)まずはハザードマップを見てもらうために

これには、ハザードマップを見てもらう機会を多く作ることが必要かと思います。

すでに市町村で実施されているものとして、ハザードマップとその活用ガイドブックとをセットで全戸に紙で配付するというやり方があります。

 

先のアンケートの中で、ハザードマップを見るきっかけとして、「市区町村からの配付」があったからという理由が多く上げられており、その有効性は実証されていると思われます。

 

茅ヶ崎市の例では「洪水・土砂災害ハザードマップ」「風水害からあなたとあなたの大切な人を守るガイドブック」とが全戸配付されています。

 

 

特に若い世代への周知するにはどうすればよいでしょうか?

 

これもすでに実施されているところもありますが、学校教育の中で年に数回、台風の季節前に防災教育を実施するのが重要かと思います。小・中・高のいずれの教育の中でも防災教育を行ってハザードマップの存在だけでも教えられれば、いずれハザードマップは断然馴染みのものになるでしょう。

 

これについては、地域の防災組織から市町村に対して要望書などの形で、すべての学校に対して実施するよう呼び掛けていくことが必要かと思われます。

参考までに、高知市の小学校の防災教育(RKC高知放送)を紹介します。

 

高知市「災害から子どもたちの命を守る 防災教育を行う高知市の小学校の取り組み」2024/7/1放送

 

また、30~50代の人たちに対しては、企業の中で防災教育を努力義務として実施してもらうことができないでしょうか?企業では防災訓練の実施は義務化されていますが、ただ単に避難するだけの訓練ではなく、ハザードマップの活用についても盛り込んでいただきたいものだと思います。

 

各企業の防災担当の皆さん、よろしく検討お願いします。

何といっても、日本は防災大国なのですから、教育もしっかりやりましょうね!

(2)ハザードマップを使いやすいものにしよう

ハザードマップを見たときに、すぐさま自分が住んでいる地域(町内など)がマップ上のどの辺で、自宅はどの位置にあるかがわかってほしいと思います。しかし、提供されているマップはA4の8枚分もの大きさがあるため、慣れないと自宅の場所を見つけるのに苦労するかもしれません。

 

記事「ハザードマップはこう使う!」では、ハザードマップの課題としてつぎのことを上げました。

 ①パソコンやスマホでマップを捜せない人もいる。

 ②凡例その他の表示が小さくて見づらい。

 ③各地区の名称と区画線が見づらい。

 ④自宅の位置を捜せない。

 ⑤「想定雨量」の意味がよくわからない。

 

①②については、紙のマップを全戸配付することで改善にはなるかもしれません。

⑤については、意味がわからなくても何とかなるでしょう。

③④については、現状のマップに工夫が必要になります。それは、現状のハザードマップは市町村全域のマップが基本になっているため、全体像は見渡せても、広域すぎて自宅の場所にたどり着くのに苦労するのです。

 

そこで提案です。全体マップに加えて、もう1枚、地域だけの拡大したマップ(ローカルマップ)を作るのです。ここで「地域」というのは、地域ごとに組織されている自治会単位か、町名単位か、またはそれらがいくつか集まったブロック単位であって、マップを一目見れば学校や馴染みのお店や通りなどがわかってしまうようなイメージです。

 

 

洪水ハザードマップであれば、そのローカルマップ上に浸水深さが色で塗られており、これなら自宅が浸水するかどうか一目瞭然だと思います。自宅が浸水地域にあることがわかれば、藁をもつかむ思いで、避難方法を考えるのではないでしょうか?

 

上図は、私の住む茅ヶ崎市矢畑地区周辺のローカル洪水ハザードマップです。

 

図中、点線で囲まれた部分が矢畑地区で、A~Fは矢畑をA班からF班の6つに分割したときの班の名前です。これにより、自分の所属する班をマップ上ですぐに見つけることができます。さらに、学校、郵便局、消防署、またメインの通りが太線で描かれているので、それらを頼りに自宅の位置を見つけることができます。後は自宅の場所が何色に塗られているか見れば、自宅の浸水深さを知ることができます。

 

この矢畑のローカルマップは茅ヶ崎市の全体マップを拡大して作ったため、細い通りや各戸の家の線がまだ見づらいですが、最初から拡大されたマップを用いてローカルマップを作れば、もっと細かい表示のハザードマップとなるでしょう。

 

このローカルハザードマップは、当面は各地域の防災関係者が作って各戸に配付するしかないでしょうが、いずれは市町村で作って各戸配付をしていただきたいものです。また、WEBでは、ハザードマップ上で住所を指定するとその位置に自宅のマークが表され、そのマップがダウンロードできるような改良を、市町村で頑張って実施してほしいと思います。

(3)ハザードマップを見て避難行動計画を立てよう

ハザードマップ活用の最終目的は「避難行動計画を立てる」ことです。そして、その避難行動計画を作るためのサポートツールが「マイ・タイムライン」です。

 

マイ・タイムラインとは台風の接近によって河川の水位が上昇する時など、洪水時に自分自身がとる防災行動を時系列的に整理し、取りまとめる行動計画表です。急な判断が迫られる洪水発生時に、自分自身の行動のチェックリスト、また判断のサポートツールとして役立ちます。

 

 

記事「いつ避難するの? 今でしょっ!」で紹介しましたが、茅ヶ崎市が提供しているマイ・タイムラインを少しアレンジしたものが上の図です。

 

この中で、一番上にくる最も重要な項目が「浸水深さ」と「浸水継続時間」で、マイ・タイムラインを作成するときに最初に記入すべき項目になっています。そして、この項目は、ハザードマップを見なければ記入できないものです。この項目を記入した時点で、おそらくかなり真剣さの度合いが高まってくるでしょう。

 

つぎに「避難場所」を記入するのですが、避難場所も浸水しては意味がないので、これを決める際にもハザードマップを見て、浸水の無い場所を確認して決めることになります。ここまでくると、ハザードマップはもはやあなたの必需品になっていることに気づくでしょう。

 

マイ・タイムラインには、順次「相談者」「支援者」「備蓄品・持ち出し品等」を記入し、次いで「避難のタイミング」「移動手段」を記入するようになっており、すべて記入すれば完成となります。

 

自分の家族構成や生活環境にあった避難に必要な情報・判断・行動を把握してマイ・タイムラインを作成し、「自分の逃げ方」を手に入れましょう。

 

台風等の大雨災害は事前に備えることができる災害です。洪水から命を守り、逃げ遅れないためにいつ、何をすべきなのか、普段からすべき対策、大雨になる前にすべき対策を、ハザードマップを活用しながら、検討し、あらかじめ避難行動を決めておくことができる「マイ・タイムライン」を作成して風水害に備えましょう!

 

 

● みんなで楽しくハザードマップを学ぶ!

もし、皆さんの地域などで何かのイベントが開かれたとき、防災コーナーなどを設けて、つぎのような「ハザードマップを用いたクイズ」などを開催したらいかがでしょうか?

① ハザードマップを使った「わたしの家はどこ?」ワーク

 ・拡大図を配布し、「自分の家に〇をつけてください」と促す。

 ・「どこに避難しますか?」「どの道を通りますか?」と問いかけ、避難行動をイメージしてもらう。

② クイズ形式で楽しく理解を深める

 ・「矢畑地区で一番水が深くなる場所はどこでしょう?」

 ・「鶴嶺中学校は避難所として使える?使えない?」

  正解後に「なぜそうなのか」を地図で解説すると理解が深まります。

③ フィードバックを得るための簡単な質問で次に生かす

 ・「この地図、見やすかったですか?」

 ・「自分の家の場所、すぐに見つけられましたか?」

 ・「避難所の場所、わかりましたか?」

 

回答は紙に○×で記入してもらうか、口頭で聞き取りでもOKです。

 

上の例は、専門的には、「DIG(災害想像ゲーム)」と呼ばれているもので、いろいろな教材が提供されていますが、上の例はその中でも最も簡単な内容で、ハザードマップに触れることでハザードマップを自分に身近なものとしてもらうことが目的です。

● おわりに

今回の記事では、ハザードマップを見たことが無い、または見たことがあっても活用できていないことが如何に多いかを知っていただき、現状の問題点を整理し、その上で、ハザードマップをもっと活用していくための提案をさせていただきました。

今回の提案では、地域の人たちの手でできるものから、市町村など行政との連携でできるものまで、いろいろ紹介させていただきました。

 

本来、ハザードマップを見て活用するのは皆さん一人一人(自助)なのですが、どうしてもできない人に対しては、市町村が何らかの施策を実行するか、地域の人たちが協力し合って助けてあげる(共助)必要があると思います。

 

例えば、一人暮らしの高齢者に対しては、行政または地域の自治会が個人別のマイ・タイムラインを作成して提供してあげるのが最も理想的ではないでしょうか。本気で町の防災を考えるならば、そこまでやらないと、まだまだその気になっていないと言われても仕方がないような気がします。

 

あなたの地域でハザードマップの活用を推進していくに当たり、この記事が参考になれば幸いです。

 

● いつ避難するの? 今でしょっ!

 

 

上の写真は、2021年7月3日午前10時半ごろ、静岡県熱海市を襲った大規模な土石流で、逃げ遅れた多くの人が犠牲になりました。

● あなたには決断と行動する勇気はありますか?

あなたはある状況に遭遇して何らかの決断を迫られたとき、すぐに決断して行動することはできるでしょうか?

 

 

たとえば、満員電車に乗っていて、自分が座っている椅子の目の前に高齢の方が乗ってきたとき、あなたはすぐに立ち上がって席を譲ることができるでしょうか?それとも、他の誰かが先に席を譲ってくれないかな、といつまでも行動できないでしょうか?

「当然、すぐ譲る」ですって?

 

では、その高齢者が、目の前ではなく自分の席より一人分ぐらい横にずれたところに立っていたらどうですか?

「たぶん、譲ると思う」ですか?

 

それでは、その高齢者が、自分の席より二人分、三人分横にずれたところに立っていたらどうですか?

「う~ん、もしかしたら何もしないかも・・・」

 

少数の勇気のある人を除いて、多くの人はこの例のように行動するのではないでしょうか?

 

これって、何かに似ているとおもいませんか?

そうです。災害が起こった時の避難の行動です!

 

たとえば、天気予報で明日50年に1度の大型台風が上陸し甚大な被害を被る可能性がある、とわかった時、あなたはすぐに行動するでしょうか?それとも半日前でしょうか?もしかしたら、上陸直前になってしまうのでしょうか?恐らく、ぎりぎりまで様子を見て、避難するのは上陸の直前になってしまう人が多いのではないかと思います。

 

これって、さっきの高齢者の立っている距離感と似ていませんか?「高齢者に席を譲る」ということを「ハザード」に例えると、高齢者の立ち位置の距離感と「席を譲る」行動の決断は、台風の距離感と「避難する」行動の決断と重なって見えませんか?

 

 

前回記事「ハザードマップはこう使う!」では、ハザードマップを活用して、自宅に危険はあるのか?あるとすればどんな危険か?災害が発生したらどこにどのルートで避難すればよいか?を見てきました。

 

しかし、ハザードマップは名前のとおり「危険物を表した地図」のことなので、避難のタイミングについては書かれていません。

 

一口に災害といっても、地震と水害は違います。地震は予測不可能なため、避難するのは災害が起こってしまってからになります。一方、水害は天気予報などで予測可能なため、災害が発生する前に避難行動を開始することが可能です。

 

そういうわけで、今回の記事では、台風や大雨による水害に的を絞り、いざ大規模水害が予測されたとき、いつどのタイミングで避難すればよい?について考えていきたいと思います。

 

 

● 大型台風の上陸が近づくとき、あなたならどう行動する?

あなたは大型台風が上陸するという情報を知ったとき、果たしてつぎの順番で行動することができるでしょうか?

 

 ①まずは、そのときの危険度が正しく認識されること

 ②ついで、避難の必要性があるか無いかを判断すること

 ③最後に、いつどのタイミングで避難するかを決めること

 

①の「危険度を正しく認識する」ことについては、平常時からハザードマップなどで自宅周辺の危険度を知っておくことがまず第一で、つぎに、まさに今遭遇している災害について、テレビやインターネットなどで直近の災害情報を正しく知ることが重要です。

 

②の避難の必要性については、①の情報をもとに判断することになりますが、この判断は大変難しく、悩みに悩むことになるかもしれません。いっそのこと、迷った場合は「避難する」と決断するのがよいと思います。

 

③の、避難のタイミングについては、台風など水害の場合は、簡単に言えば、台風上陸の1日前と考えればほぼ問題はありません。しかし、台風の速度や進路が変わったりして、台風上陸の予測が変わる場合もあるので、台風情報については上陸予測の2日前ぐらいから目を離さずにいなければなりませんが、迷う場合はすぐ避難してください。

以上ができたら申し分ないのですが、どうでしょうか?

結構ハードルが高いと感じませんか?

 

● 一人では行動できない場合はどうする?

これら①②③について全部自分一人でやろうとすると大変かもしれません。むしろ、一人で悩まないで周りの人と一緒になって考えるのが大切だと思います。

基本となるのは、家族のみんなで話し合うことです。一人暮らしの人ならば、できるだけ近くに住んでいる親類(自分の子供夫婦など)に電話するなどして相談することが必要です。または、遠慮せず、隣近所の家に声掛けして相談してみることです。

いざというとき、本当に避難しなくてよいのか、自分一人で判断するのはとても不安だと思います。

 

そこで、登場するのが「警戒レベル」です。

内閣府や市町村では、「警戒レベル」について広報していて、災害時に避難すべきかどうかについて、災害の状況に応じて5段階の「警戒レベル」を決めています。

そして、災害が発生しているとき、その状況によってこの警戒レベルがどのレベルにあるか、常時テレビやインターネットでお知らせしています。

災害の時は、警戒レベル発令のニュースに耳をすまし、もし自宅のある地域に「避難指示」などが発令されたら、それに従って迷わず避難することが重要となるでしょう。

 

すなわち、この「警戒レベル」の発令は、迷いを断ち切るスイッチの役割を果たすものと考えられます。

 

 

 

 

● 「警戒レベル」はこうして生まれた!

平成30年7月豪雨では200名を超える死者・行方不明者が発生するなど、各地で甚大な被害が発生しました。気象庁から注意報や警報が、市町村から避難勧告や避難指示(緊急)など様々な情報が出されましたが、受け手である住民に正しく理解されていたかなど、様々な課題がありました。

 

こうしたことを踏まえ、住民の皆さんが災害発生の危険度を直感的に理解し、的確な避難行動をとることができるよう、令和元年(2019年)6月から、避難に関する情報や防災気象情報等の防災情報を5段階の「警戒レベル」を用いて伝えることとなりました。

 

しかしながら、令和元年台風第19号においても、多くの人が避難の遅れなどにより被災したことから、住民の「自らの命は自らが守る」意識を一層徹底するとともに、避難情報のさらなる見直しを行うこととなりました。

 

 

それでもなかなか事態は改善されず、上の写真で示した2020年に発生した熊本県での水害の際には60人以上の方が亡くなられました。

 

2020/8/23産経新聞ニュースによると、この時の雨量予測は、警戒レベルの基準を大幅に上回る「100年に1度」規模の水位上昇があったのですが、なぜか発表されず、残念なことに県内で60人以上の方が亡くなられました。雨量の予測は川が氾濫する9時間前にすでに行われており、警戒レベルの基準を大幅に上回る「100年に1度」規模の水位上昇があったとされています。原因は、気象庁と国交省との連携の問題とされていました。(参考:2020/8/23産経新聞ニュース

 

この後、令和3年(2021年)4月に災害対策基本法が改正され、同年5月から新たな避難情報を用いて避難情報を伝えられるようになりました。

● 「警戒レベル」とその対応は?

警戒レベルは、災害発生の危険度が高くなるほど数字が大きくなります。警戒レベルが出されたとき、それぞれの段階で、住民の方々はどのような行動をとればよいのでしょうか?

 

・警戒レベル1 「早期注意情報」 ・・・災害への心構えを高める

これは気象庁から発表されます。災害発生の危険性はまだ低い段階ですが、これが発表された場合には最新の防災気象情報などに留意するなど、災害への心構えを高めてください。

 

・警戒レベル2「大雨・洪水・高潮注意報」・・ハザードマップなどで避難行動を確認

 

気象庁から「大雨注意報」や「洪水注意報」等が発表され、災害発生に対する注意が高まってきた段階です。ハザードマップで災害の危険性のある区域や避難場所、避難経路、避難のタイミングの再確認など、避難に備え、自らの避難行動を確認しておきましょう。

 

・警戒レベル3「高齢者等避難」・・・危険な場所から高齢者等は避難

 

避難に時間がかかる高齢の方や障害のある方、避難を支援する方などは危険な場所から安全な場所へ避難しましょう。また、土砂災害の危険性がある区域や急激な水位上昇のおそれがある河川沿いにお住まいの方も、準備が整い次第、この段階での避難が強く望まれます。また、それ以外の方もふだんの行動を見合わせたり、いつでも避難できるように準備をしたり、危険を感じたら自主的に避難をしましょう。

 

・警戒レベル4「避難指示」・・・危険な場所から全員避難

 

対象地域の方は全員速やかに危険な場所から避難してください。この段階では、この地域に住む方は、有無を言わせず、全員避難しなければならない「最後通告」のようなものです。

 

・警戒レベル5「緊急安全確保」・・・命の危険。直ちに安全確保

 

命が危険な状況ですので、直ちに安全な場所で命を守る行動をとってください。このレベルではすでに安全な避難が難しい状況です。予定していた避難場所への避難が危険な場合には、自宅の上の階や、崖から離れた部屋に移動するなど、その場でとることができる少しでも身の安全を確保するための行動をとるようにしましょう。

 

 

● 避難行動のスイッチ

警戒レベルの発令は、避難するかどうかの迷いを断ち切るために極めて有効なスイッチになります。

 

上に述べたように、最新の警戒レベルでは、警戒レベル4での「全員避難」のように極めて明確な命令調になっており、心理的には迷ったときに受け入れやすいものになっています。

 

ただし、このようなアナウンスがテレビから流れてきていても、心理的には、「この指示は本当に私の住んでいる地域に当てはまることなのか?」や、「この指示は本当に今時点のことを言っているのか?」などと、つい自分には当てはまらない理由を捜して、せっかくの発令を無視しようとしてしまうのです。

 

そこで再び、記事「ハザードマップはこう使う!」で紹介した、避難行動のスイッチを他にも紹介したいと思います。

 

 

どのタイミングで避難すべきか?住んでいる場所、人それぞれの状況によって違うことを前提として、普段から避難のタイミングを家族で話し合っておくことは当然のこととして、逃げ遅れしないための「避難のスイッチ」を意識することが重要としています。 

 

番組では、ここでクイズを出しています。

(質問)次の中から、避難のきっかけとして正しいものはどれですか?

   ① 大雨警報などの注意情報

   ② 幼稚園・学校・介護施設などの休み・早退の発生などの情報

   ③ 川の濁り・用水路があふれそうなどの情報

 

さあ、いかがでしょうか?

実は、やや引っ掛けぽいですが、これらのどれもが正解だとしています。つまり、逃げなければならないときは、いつもと違った、ほんのちょっとしたことでもいいから「何か気になること」を見つけて「避難行動のスイッチ」とすることが重要だとしています。

● 避難方法・タイミングを前もって決めておくためのツール 「マイタイムライン」の活用

茅ヶ崎市では、あなたと大切な人の命を守るためのマイ・タイムラインを作成するツールとして、「かんたんマイ・タイムライン」をハザードマップ別冊のガイドBOOKに掲載しています。

 

 

 

 

マイ・タイムラインとは台風の接近によって河川の水位が上昇する時など、洪水時に自分自身がとる防災行動を時系列的に整理し、取りまとめる行動計画表です。急な判断が迫られる洪水発生時に、自分自身の行動のチェックリスト、また判断のサポートツールとして役立ちます。

自分の家族構成や生活環境にあった避難に必要な情報・判断・行動を把握してマイ・タイムラインを作成し、「自分の逃げ方」を手に入れましょう。

 

台風等の大雨災害は事前に備えることができる災害です。洪水から命を守り、逃げ遅れないためにいつ、何をすべきなのか、普段からすべき対策、大雨になる前にすべき対策を、ハザードマップを活用しながら、検討し、あらかじめ避難行動を決めておくことができる「マイ・タイムライン」を作成して風水害に備えましょう!

 

まず、ページの左上に、ハザードマップで確認すべき自宅周辺の浸水深さ、及び土砂災害の危険度をチェックする欄があります。その下には、「かんたんマイタイムライン」が掲載されています。

 

 

ここには、「準備段階」と「災害時」の2つの段階で、「いつ」と「何をするか」を決めるよう、極力簡単な図で表現されています。さらに、「避難先」として「親戚・知人宅」及び「避難所」を記載し、「相談先」について名前と連絡先を記載するようになっています。

 

マイタイムラインは、基本は一緒ですが市町村ごとに工夫を凝らしています。参考までに、矢畑自主防災会でアレンジしたものを紹介します。

 

 

茅ケ崎市発行の「かんたんマイタイムライン」に比べれば記入する箇所は多くなっていますが、それでもできるだけ簡単に作成できるように工夫しています。

 

「マイタイムライン」は、必ずしも自分一人だけで作るのではなく、家族や隣近所の方と相談しながら作ってみてください。そして、マイタイムラインを玄関の壁に貼っておき、いざという時はそれを見て、そのとおりに行動することが、最もわかりやすくてよい方法かと思います。

● それでも避難できない人のために

ハザードマップを見て、ニュースで警戒レベルを聞いて、マイタイムラインを何度も見て、それでもまだ避難行動に踏み出す自信のない方には、前述した複数の「避難行動のスイッチ」をじわじわ数え上げて、自分への避難行動のプレッシャーを徐々に強めていく方法もあります。

たとえば、

 《「警戒レベル4」がついに発令された》

 +《近くの小学校が早引きになった》

 +《自宅の前の道路に雨水が溜まりだした》

 +《近くの小学校に避難所が開設された》

 +《避難指示の放送がさっきから何度も繰り返されるようになった》

 +《お隣さんは今避難してしまった》

 +・・・など、など。

たくさん上げてもキリがないので、せめて2、3の条件が見いだされたらいよいよ決断してください。このようなときは、耐えるのではなく、避難行動のプレッシャーに負けてぜひ避難を開始してください。

ご幸運をお祈りいたします!

 

● ハザードマップはこう使う!

6月22日の朝TVを見ていらたNHKで「明日をまもるナビ」というのをやっていて、テーマは「水害から命を守る・自ら行動する」で、その中でハザードマップについて解説していました。

 

 

以前から、私もハザードマップの活用方法についていろいろと考えるところがあって、この番組を最後まで見てしまいました。果たして自分が考えていることが解説されるかどうか?自分で考えていないことが出てくるか?という視点で見ていました。

この番組で解説されていたのは日本大学危機管理学部教授である秦康範氏で、ゲストにタレントの磯山さやかさん、アンガールズの山根良顕さんのお二人でした。

 

解説はとても分かりやすく、これを見ていた多くの人が解説内容について理解されたのではないかと思います。内容はいろいろあったのですが、特に私の印象に残っているのはつぎの言葉です。

・雨量は明らかに年々増えている。今まで大丈夫だったことが今後も大丈夫だとは言

 えない。

・(あたりまえですが)平時から自宅周辺の災害リスクについて把握することが重要。

・ハザードマップ上の色のついていない場所が浸水の危険がないというわけではない 

 い。

・「大雨警戒レベル」は避難行動の一つのスイッチ。

・どのタイミングで避難すべきか?住んでいる場所、人それぞれの状況によって違う。

 普段から避難のタイミングを家族で話し合っておく

・逃げ遅れしないため、避難のスイッチを意識する。つぎのどれもが有効。つまり、逃げなければならないときは「何か気になること」を見つけて避難を決断することが重要。

  (例)大雨警報などの注意情報

      幼稚園・学校・介護施設などの休み・早退の発生

      川の濁り・用水路があふれそう

・自分の大切な人を守るための行動宣言を書いてみる。

 → 守りたい大切な人は誰? そのために何をする?

・過去の経験が避難を妨げることがあるので要注意。「経験の逆機能」(「経験の純機

 能」の逆)

 → 「今まで大丈夫だったのだから今度も大丈夫だろう」

 

いずれもなるほどとうなずけるのではないかと思います。

はたして、みなさんの中でこの番組を見た後で、すぐにハザードマップを開いて自宅の周りの危険を確認された方はいらっしゃったでしょうか?

 

今回の記事では、まずはハザードマップとはどういうもので、どのように使うのかについて見ていきたいと思います。

 

 

 

 

● ハザードマップとは?

それではまず、ハザードマップはどのようなものかを見てみましょう。

上の図は、茅ヶ崎市の洪水・土砂災害ハザードマップです。マップが水色と白色で塗分けられていますね。

 

ハザードマップとは、災害時に影響が及ぶと想定される区域や避難に関する情報を地図にまとめたものです。また、平常時から住民に防災意識を持ってもらい、災害時に円滑に避難行動を行い、人的被害の軽減を図ることが主な目的とされています。

簡単に言うと、ハザードマップとは皆さんの住む地域の「災害の危険を表した地図」のことです。

 

ハザードマップを上手に使うと、お住まいの地域にどのような自然災害の危険があるかを把握することができます。自宅周辺だけでなく、通勤・通学に使用する地域や、買い物やレジャーなど日常生活で頻繁に使用する地域の災害の危険も確認することができます。従って、平常時からハザードマップを見て、危険地域を確認していざ災害が発生したときどの方向に避難するか?また避難所はどこか?を確認しておきましょう。

下図は八戸市の津波ハザードマップです。八戸港から川沿いにかけて最大20mの津波に飲み込まれる危険が示されています。たったの水深30cmで人は動けなると言われていますので、この地域は津波には十分な注意が必要です。

 

● ハザードマップはここで見る!

ハザードマップは、もしあなたが「〇〇市」に住んでいらっしゃるならば、インターネットの検索欄に「〇〇市 ハザードマップ」と入力すると、〇〇市のホームページが開き、そこにハザードマップが表示されるはずです。もしくは、市によってはハザードマップを市民に周知活用してもらうために、全世帯に紙で配付しているところも多くあります。

 

茅ヶ崎市では、「まっぷ de ちがさき」というサイトがあって、あらゆる情報をマップ上に表しています。ハザードマップは「防災情報」のところから入っていくと見つかります。とても便利なのですが、メニューが多いのでたどり着くまで根気が必要かもしれません。

 

 

 

 

インターネット上では国土交通省が運営するハザードマップポータルサイトがあります。このポータルサイトでは、「わがまちハザードマップ」と「重ねるハザードマップ」との2種類のハザードマップが提供されています。

 

「わがまちハザードマップ」からは地図画像や住所の入力から、自宅だけでなく遠く離れて住んでいる高齢の両親の周辺のハザードマップも確認することができます。

 

一方、「重ねるハザードマップ」では、地図上にいろいろな種類の危険を重ねて表示することができます。

 

また、国土交通省が公表している道路防災情報WEBマップは、自然災害の発生時に通行規制が敷かれる可能性のある区間を表示していますので、これらも活用していただきたいと思います。

 

 

● ハザードマップを住まい選びに活用

 

また、ハザードマップは住まい選びにも活用することができます。

たとえば、これから新しく住まいを購入しようとしている方は、特に立地条件に注意が必要です。誰もが好き好んで浸水の危険がある場所に新築しようとは思いませんよね?「価格が特別安かったので、掘り出し物だと思って家を購入したけれども、後で実はこの地域は災害リスクが高いことが分かった」と言っても後の祭りです。

 

 

このようなことを防止するために、2020年8月には不動産取引の重要事項説明時に水害ハザードマップの説明をすることが義務化されています。不動産購入の際の説明を受けるときに、ただぼんやりと聞いていると後でとんでもないことになってしまうことがあるので注意してくださいね。

●ハザードマップの種類と対象災害

ここからは、ハザードマップの種類とその対象となる災害について見ていきたいと思います。ハザードマップは災害の種類によって分類され、つぎのようなものがあります。

• 洪水ハザードマップ: 

 河川の氾濫による浸水想定区域や深さ、浸水継続時間などが示されています。

• 津波ハザードマップ: 

 地震に伴う津波により予測される浸水の範囲や深さが示されています 。避難場所や 

 避難経路も併せて示されています。最大クラスの津波を想定した浸水区域と水深が

 示されたものですが、これよりも大きな津波が発生する可能性がないわけではない

 点に注意が必要です。

 

 

上図は湘南海岸の津波ハザードマップです。茅ヶ崎付近は比較的津波が高くないとされていますが、場所によっては海岸から500m程度まで浸水の危険が示されています。

• 土砂災害ハザードマップ: 

 土石流、がけ崩れ、地すべりなどの土砂災害警戒区域が示されています。洪水ハザードマップと一緒になっているものもあります。下図では、ピンク色が急傾斜地の崩壊、赤色が土石流の起点で扇型に土石流が流れ落ちる危険を表しています。

 

• 内水ハザードマップ:

 下水道や小規模な河川があふれた場合に想定される浸水区域が示されています。下図のとおり、大きな河川と関係なく、町中いたるところで、水はけが追い付かない道路等に沿って分布しています。

 

• 高潮ハザードマップ:

 台風などによる高潮で予測される浸水区域が示されています。高潮(たかしお)は、台風や発達した低気圧が海岸部を通過する際に生じる海面の高まりのことを言い、地震によって発生する「津波」とは発生のメカニズムが異なりますが、大きな波が海岸線に押し寄せてくることは津波と変わりありません。海に近い河川の周辺にも被害が及びます。

 

• 地震ハザードマップ(液状化ハザードマップ):

 地震による揺れやすさや液状化の危険度が示されています。地域の地盤特性による震度の違いや、建物被害の可能性を確認できます。下図では、かなり大雑把な結果ですが、海の近くは液状化の危険が無いとは言えず、山の方へ行くほど液状化の危険は無くなっています。

 

• 火山ハザードマップ:

 火山噴火による影響範囲(火砕流、溶岩流、降灰など)が示されています。

下図は富士山噴火のハザードマップですが、そこでは危険度と避難すべきエリアが6段階に表されています。

 

 

•地震による地域危険度調査

 これはハザードマップとは呼ばれていませんが、地震が発生したときに付随して発生すると考えられる危険について、マップ上に表したものです。

これには、建物倒壊危険度、火災危険度、道路閉塞確率、(徒歩または車での)地区内通過確率などがあります。

下図は、例として建物倒壊危険度を上げました。地震の揺れ、地盤の液状化により、建物が倒壊する危険性を建物の構造、建築年代などのデータを用いて測定したものです。

 

• 火災危険度マップ:

 クラスターという考え方を用いた火災時の延焼を表したものです。クラスターとは、延焼被害が起きた場合に運命を共にする建物群のことをいい、クラスター内の建物から1件でも出火し、そのまま放置した場合、クラスター内の建物全てが消失する単位のことをいいます。

主に、木造家屋の密集地が危険度の高い場所になります。

 

 

いずれのハザードマップも、危険度に応じて色分けされ、避難所や救急医療機関も記載されています。上記の内容を分類し、見やすく図で表したものを示します。

 

なお、ハザードマップは市町村が作るものとされ、地域によって多少の違いはあるものの、ほぼすべての地域が網羅されています。

 

 

 

● ハザードマップの活用はこんなに重要!

近年の気候は地球温暖化の影響もあって大雨が降りやすいものになっているので、今まで大丈夫だったからと言ってこれからも大丈夫だとは決して言えません。一方、ハザードマップの精度については解析技術の進歩に伴い年々向上してきており、シミュレーションによる浸水範囲などは実際の災害時の浸水範囲とほぼ一致する結果が得られています。

 

雨量の経年変化を見てみると、「滝のように降る」と表現される1時間あたり50mm以上の雨が降る回数は、ここ40年間で1.5倍にも増加しています。

 

 

このように危険が目の前に迫っている中、重要なことは、ハザードマップを参考にして、まずはあなたの住む場所に大きな危険がないか調べることです。

 

そして、あなたの住む場所がどれだけ危険かがわかったら、たとえば海の災害を回避するためにはそもそも海の近くに住まないとか、火山による災害から回避するためにはそもそも火山の近くに住まないなどの検討が必要かもしれません。また、大雨についても、洪水による被害を回避するためには川の近くに住まないとか、土砂崩れの災害から回避するためには山のふもとや崖下に住まないなどの検討が必要かもしれません。

 

 

長年住み慣れた土地を離れるのは大変な決断がいるかもしれませんが、ハザードマップに示されたその土地の危険度が非常に高いようであれば、危険地域から少しでも遠い所に住まいを移すなどが根本的な対策になるのではないでしょうか?

 

もし、どうしても今の土地を離れられないならば、なおのこと、災害が発生したときの被害状況や避難先、避難ルートをハザードマップを使って事前に調べておく必要があると思います。

 

● ハザードマップはこう見る!

このようにハザードマップには重要な災害情報が表されているのですが、「どのように見ればよいのかわからない」という方も多くいらっしゃいます。

そこで、ここからは予測可能な水害に的を絞ってハザードマップの読み方を見てきたいと思います。

 

大雨による危険には、洪水、内水氾濫、土砂崩れありますが、これらの災害に備えるためには、このすべてのハザードマップを見て自宅周辺や外出先などの危険度を把握し、いざという時のために備えなければなりません。

 

 

 

 

ここでは例として茅ヶ崎市の洪水・土砂災害ハザードマップを取り上げてみましょう。

① 全体についての第一印象

まず、マップの全体を見渡して、色のついている部分とついてない部分があるのがわかりますね?直感的に、色のついている部分は何かのしるしではないか?と推測できます。しかもこのハザードマップは水害のマップなので、水色の部分が浸水する地域なのではないか?と考えられます。

 

さらによく見ると、水色に塗られた部分の一部に、グレーの縦長で大きな幅のうねりが見られます。そしてそこには「相模川」と書かれています。これに気付けば、「ああ、相模川が氾濫した結果で洪水が起こっているのかな?それでは、相模川に近づかないで、反対方向に避難すればいいかもしれない!」ということがわずかな時間で推測できるでしょう。

 

以上がハザードマップを最初に見た時の第一印象です。つまり、ハザードマップを一度でも見れば、わずか数分の間で危険と避難対策を理解できる可能性があります。みなさんも、まずはぜひ一度ちらりとでも結構ですのでハザードマップを見てくださいね!

② マップをちゃんと見るためのルールを確認

つぎに、第一印象で得たことが本当にそうか、とマップに記載されたルールを読んで確認します。

 

マップの上の方に小さい文字で何か書いている部分に目を凝らして見てみると、そこには水色の濃さを段階的に並べた凡例があります。「洪水に関する情報」と書かれた部分です。

 

 

ここには、ピンク色は河岸浸食の危険がある最も危険な地域であり、濃い水色は3m~5mの浸水が予想される地域であることなど、マップに塗られた色の意味が記載されています。

 

ここを読むことで、このマップを正しく読むためのルールがわかりました。また、この凡例の上の部分には土砂災害に関するルールが示されていますので同様に見てください。

 

このマップルールの記載については文字が小さいため、高齢者の立場だとどこに書いてあるのか見つけるのが大変かもしれません。もっと気づきやすい場所に大きな文字で記載してもらえたら助かるのですが。

③ 自分の家がマップ上のどこにあるかを捜す

洪水についてのルールがわかったところで、今度は自分の家がマップ上のどこにあるかを捜します。このマップには茅ヶ崎市全体の道路や駅、小・中学校(避難所)、郵便局、警察署、消防署などの公共の建物、河川などが描かれています。また、各地区の地区名とそれらの境界線が描かれています。これらの情報を頼りに、自分の住んでいる地区を捜します。

 

自宅の大体の位置がわかったところで、自宅があると思われる部分をパソコン画面の中心に持ってきて、マップを拡大表示します。マップはPDF形式でできており、パソコン画面の右下に拡大・縮小のマーク(⊕・⊖)があるので、そのうちの⊕マークを何度かクリックするとマップを必要な大きさに拡大できます。

 

マップ上の地区名の表示は小さく、その境界線もあまり目立つ色ではないので、マップを3倍から5倍くらいに拡大しなければわかりづらいと思います。

例として、私が住んでいる矢畑を中心として⊕をクリックして拡大表示したものを示します。

 

 

 

 

拡大したマップで自分の家の前の道路を捜すと、そこには四角で表した家屋が並んでおり、自宅がなじみの道路の角から何番目かなどを目安にして、ようやくマップ上で自宅を見つけ出すことができました。マップによってはマップ上の自宅にしるしを付けることができるものもあるので、一度しるしをつけてしまえばその後は簡単に自宅を見つけられます。

 

 

また、矢畑地区では、ハザードマップで自宅の場所を少しでも楽に見つけられるよう、矢畑地区とその周辺だけを切り取って拡大し、情報を追加したハザードマップを作り、自治会員のみなさんに提供しています。

 

矢畑地区周辺のハザードマップには、それに重ねていろいろな情報を記載しています。

 ・主要道路の名称

 ・消防署

 ・最寄りの避難所

 ・矢畑地区内のA班~F班の6班の区画線

 ・想定雨量(拡大表示)

 ・浸水深さの凡例(拡大表示)

 

これだけでハザードマップがぐんと見やすくなったのではないでしょうか?

この地区別のハザードマップは、できれば市町村で作って全戸に配付していただけると、マップが見やすくなると共に身近に感じられ、防災意識も高まるのではないかと期待されます。

④ 自宅の周りの危険を知る

この例で示した矢畑地区はかなり広い範囲で水色に塗られており、浸水リスクが高いことがわかります。なぜ浸水リスクが高いかといえば、グレーで示された川が左右を流れているため、マップにはその川が氾濫した結果が表されているのです。

 

川の両端がピンク色に塗られていますが、これは前述した河岸浸食の危険が示されています。もし自宅がピンク色の場所にあるなら、避難しないと家ごと川に流される危険があります。

 

もし自宅の場所が水色に塗られているとすれば、そこは凡例に示されているように、3m~5mの深さに浸水する危険があることがわかります。なお、このマップでは、国道、県道、高速道路が赤色で示されているので、混同しないように注意してください。

 

⑤ 避難場所を捜す

例えば、あなたが浸水リスクが3m~5mの場所に自宅があった場合、台風がやってきて、天気予報などで水害の危険があることを知ったならば、あなたは避難行動を起こさなければなりません。どちらの方向に避難しなければならないかを知るためには、拡大マップではなく全体マップを使って全体像を把握しなければなりません。

 

そして、ハザードマップで見て浸水の危険のない、すなわちマップ上に色のついていない(白色の)方向を見つけ、その方向に避難しなくてはなりません。矢畑地区の周辺を見ると、西側には相模川と小出川が流れており、その周辺が水色一色であるため、それらの河川の氾濫が及ばない東側に避難しなければならないとわかるでしょう。

⑥ 避難する場所を決める

さて、避難する方向が決まったら、最後に避難する場所を決めなければなりません。このテーマは重要なので解説も少し長くなります。

 

避難場所については、人それぞれの個別の事情により決めることになります。

内閣府から発行されている「警戒レベル・避難先」についてまとめたパンフレットの中で、4つの避難場所について解説されています。

 

    ・行政指定の小中学校(避難所)などへの避難

 ・安全な親戚・知人宅への避難

 ・安全なホテルなどへの避難

 ・マンションなどにそのまま待機する在宅避難

 

 

まず、小中学校を考えてみましょう。ハザードマップをみると、自宅の周辺には避難所マークが付いた小中学校がいくつかあると思いますが、そこには災害時に避難所が開設されるのでそこに避難することができます。

 

ただし、小中学校に開設される避難所は、大規模地震の際に住家を失った人が生活をすることが想定されているため、必ずしも水害に適している場所にあるとは言えない場合もあります。

 

矢畑地区のマップで見たとき、鶴嶺中学校については、浸水により孤立するおそれが低い緑色の避難所マークが付いています。一方、鶴嶺小学校については、浸水により孤立するする恐れが高い赤色の△マークが付いており、避難する人は大雨がピークになる前の半日から1日前に避難しなければ道路が冠水してたどり着けなくなります。

 

従って、水害の場合は鶴嶺小学校よりは鶴嶺中学校に避難するか、またはもっと東側にある避難所に避難するのがよいと思います。

 

 

 

つぎに、安全な親戚や知人宅への避難について考えてみると、避難する家が災害を受ける場所から十分離れたところにあることが必須です。避難先にも災害の危険があるのでは避難したことになりません。

 

安全なホテルなどへの避難については、災害が及ばず、自宅に一番近いところにあるホテルに宿泊することになります。この選択は、災害が比較的軽微で、一晩程度で浸水が収まると思われる場合に有効かもしれません。災害の影響で何日間も自宅周辺に近づけなくなるほどの大規模な災害が予想される場合は、いずれは避難所か親戚の家などに頼らざるを得なくなるでしょう。

 

また、もしあなたが鉄筋コンクリートづくりのマンションに住んでいて、部屋が3階より上の階にあるならば、あなたはどこにも避難せず、在宅であっても浸水被害に遭う可能性は低いでしょう。ただし注意しなければならないことは、あなたのマンションが浸水地域のど真ん中に建てられている場合は、周りの水が引けるまで外出ができず、備蓄してある飲食物や簡易トイレで数日間生活しなければならないこともあるため、その間の備蓄品を準備しておくことが重要です。

 

いずれの場所に避難するにしても、余裕をもって、災害ピーク時の半日から1日前には避難を開始しましょう。

 

● 避難場所にはつぎのことも考えておこう!

①災害が落ち着いた後の生活も考える

災害による被害が甚大であることが予想される場合は、避難場所はハザードマップを見て広い範囲で色のついてない場所で、かつ、できれば食料品店や雑貨店に歩いて行ける場所にある避難場所を捜して避難するのが、災害が落ち着いた後の生活を見越した避難先と言えるでしょう。

 

②自家用車の避難も忘れずに

また、水害では自家用車についても避難させることを考えなければなりません。浸水深さが1mを超えそうな場合は、そのまま水に浸かるにまかせていると、後で車の買い替えをしなければならなくなったり、または何万円もする高価な部品を交換しなければならなくなったり、きっと後悔することになるでしょう。

③自家用車の避難場所

車の避難場所としては、浸水の危険が少ないところにある有料駐車場や屋上に駐車場がある商業施設などがよいでしょう。ただし、その場合は早い者勝ちとなるため、早めの決断と行動が必要です。いっそのこと、車ごと浸水の危険が無い親類の家に避難するか、または浸水の危険がない近くのホテルに宿泊することも一つの選択肢として考えられます。

 

いずれの場合も、避難場所については災害が起こる前にどこに避難するか決めておき、いざ災害が起こった時にあわてずに済むようにしましょう。

 

● 災害想定について

ようやく最後のセクションになりました。

ここまでのところ、実は、洪水ハザードマップの想定雨量についてはあえて説明せず後回しにしてきました。

 

本来、災害想定というのは、被害をシミュレーションするための設定条件と言えるもので、防災活動に携わる方々はもしかしたら最初に確認するところだと思います。

しかし、災害想定の考え方は意外にややこしいところもあるため、そこで嫌になって見るのをやめられてしまっても困るので、地域の防災活動に携わる方でなければ特に意識しなくてもよいかもしれません。

 

洪水ハザードマップならば「想定雨量」というのがあり、また津波ハザードマップならば「ハザードマップ作成のもととなった想定津波」というのがあります。

 

 

● 想定雨量とは?

ハザードマップに書かれている「想定雨量」とは、どれだけの量の雨が降れば町の中がどれだけの水で浸水するかをシミュレーションする際の条件になっています。つまり、想定雨量のところに記載されている雨量の雨が降った時に、マップに水色で示されたような浸水状態になるということです。

 

茅ヶ崎市では、洪水ハザードマップを作成するための「想定雨量」を、「想定し得る最大規模降雨」としています。想定最大規模降雨は、ある一箇所の河川における降雨だけでなく、近隣の河川における降雨が同じように発生するという想定で、過去に観測された最大降雨量に基づき設定されています。茅ヶ崎市における想定雨量は、1000年に1度の割合でしか発生しないほど大量の雨量とされており、相模川においては2日間で567mm以上、小出川・千の川・駒寄川においては1日で354mm以上となっています。

 

下図は、国土交通省作成の「相模川の洪水浸水想定区域図(想定最大規模)」で、河口から10kmぐらいのところで幅広く深さ0.5~3.0mの浸水が発生しています。

 

 

地域ごとの最大降雨量については、降雨の特性が似ている地域ごとにこれまで観測された降雨データを解析することにより求め、降雨継続時間別、面積別に最大となる降雨量から想定最大規模降雨量が導き出されています。(参考「浸水想定(洪水、内水)の作成等のための 想定最大外力の設定手法 」国交省 ※この資料は、あまりに専門的なので、かえって見ない方がよいかもしれません。)

 

このように、ハザードマップで想定している雨量は、皆さんが想像できないほど大量の雨量を想定しており、ハザードマップにはこの雨量でシミュレーションした結果を表しています。逆に、そうでないと、ハザードマップの水色に塗られる範囲はとても狭くなってしまうためあまり役に立たず、見る人にとって危機感を感じないものになってしまうでしょう。

 

ちょっとややこしい説明になってしまいましたが、これを知って「1000年に1度しか発生しないので大丈夫」と考えるのは勘違いであって、「この1度が明日くるかもしれない」と考えるのが正しい理解と言えますので、ご注意ください。

 

実際のところ、令和元年の台風19号の際は、茅ヶ崎市では総雨量164.0mm、1時間最大雨量19mm(10月12日(土)7時00分から8時00分)という猛烈な雨が降り、相模川の水位も最高水位8.30m(10月13日(日)0時20分)まで上昇し、あと46㎝で相模川が氾濫するところまできていたとのことでした。そう考えると、ハザードマップで示された状況は、もしかしたらいつでもあり得ることではないかと心配してしまいます。

 

 

ましてや、前述したように、雨量は地球温暖化の影響で年々増加していることを考えると、あっという間に1000年に1度が100年に1度の確率に上がってくるかもしれませんので、決して侮らないでいてほしいと思います。

● 雨量の多さを体感することの重要性

近年のテレビやインターネットによる天気予報では、雨量を表すとき[mm/h]という単位記号を用いていることに気付くでしょう。これは1時間に一定の場所に降り注ぐ雨の量、つまり1時間に外に置いたバケツに溜まる雨の量(雨量の深さ)とイメージするとよいかもしれません。実際のところ、雨が降ってもバケツの中のように水が溜まるわけではなく、降った雨は下水道に流れ落ち、よほどの雨量でないと冠水することはありません。

 

みなさんはこの雨量は一体どれくらいのものか体感したことはあるでしょうか?例えば、0.5mm/hの雨量とはどの程度かといえば、傘なしで外を歩けるぎりぎりの雨量の程度でしょう。また、1.0mm/hの雨量を超えると、傘なしではびっしょり濡れて長時間は歩けない程度の雨のイメージです。近年ではときどきゲリラ豪雨というのがあって、一時的に10mm/h~30mm/hなどという雨量に遭遇することが増えてきていますが、この雨量ではせっかく傘を差してもすぐにびしょ濡れになってしまう程度の雨です。

 

 

では、少し戻って先ほど洪水ハザードマップ出てきた想定雨量「2日間で567mm以上」とはどのような雨量なのか考えてみましょう。567mmという数値を2日間=48時間で割ってみると、11.8mm/hということになり、想定雨量「2日間で567mm以上」とは「平均雨量11.8mm/hの雨が48時間降り続く」と言い換えることができます。そうすると、前述したように、傘を差してもすぐびしょ濡れになるほどのゲリラ豪雨が何と2日間も続くということで、これはもう想像を絶する大雨と言えるでしょう。

 

ちなみに、2019年(平成元年)10月12日に関東に上陸した台風19号のときの平塚市の雨量を、気象庁の気象データ検索で調べると、つぎのグラフのようになっており、ピーク時は25mm/h、また24時間でならしてみると10mm/h程度の雨がまる1日降り続いたことになります。平塚市は茅ヶ崎市とは相模川を挟んだ隣町なので、これがもう1日続けば相模川が氾濫していたかもしれません。(茅ヶ崎市のデータは、残念ながら公開されていません)

 

 

このようなことを体感しておくと、いざ自分の目で雨が降る様子を見たとき、「この雨量は尋常ではないからすぐ避難準備をしよう」といった感性を身に着けることができるでしょう。すなわち、水害における危険を敏感に察知する助けとなること間違いありません。

● ハザードマップの気になるところのまとめ 

ここまでみなさんと一緒にハザードマップを見て避難先を決定するところまでを見てきましたが、いかがでしたか?

 

パソコンやスマホを使って、やっとハザードマップを捜し当てたと思ったら、よく見えないし、どう見たらよいかわからず、あきらめた方も少なからずいらっしゃったのではないでしょうか?特に、高齢のみなさんにとってはハードルが高いかもしれません。もっと見やすく、使いやすくすべき改善の余地がいくつかあったのではないでしょうか?

 

私が気づいた点をつぎにまとめてみました。

 ①パソコンやスマホでマップを捜せない人もいる。

 ②凡例その他の表示が小さくて見づらい。

 ③各地区の名称と区画線が見づらい。

 ④自宅の位置を捜せない。

 ⑤「想定雨量」の意味がよくわからない。

 

パソコンやスマホを持っていない人やハザードマップを見つけられない人もいるため、茅ヶ崎市では「茅ヶ崎市洪水・土砂災害ハザードマップ」を作成し、別冊の「風水害からあなたと大切な人の命を守るガイドBOOK」とともに、2021年7月6日から全戸配布を開始しています。マップの大きさは何とA4サイズ8枚分で、字も大きく表示されています。なお、2025年9月には、新しい基準で作成された津波ハザードマップの改訂版も全戸配付開始となるとのことです。

 

また、矢畑地区では、ハザードマップ上で自宅の場所を少しでも簡単に見つけられるよう、矢畑地区とその周辺だけを切り取って拡大したハザードマップを作り、自治会員の皆さんに提供しています。このハザードマップと全体ハザードマップがあれば鬼に金棒です。市でも同様な地区ごとに拡大したハザードマップの提供をお願いできたらと思います。

● 《次回予告》いつ避難すればよいか?/警戒レベルと避難のタイミング

今回の記事ではハザードマップを使って、自宅の危険度と、どこにどのルートで避難すればよいか見てきました。

 

それでは、いつどのタイミングで避難すればよいのでしょうか?せっかく避難先が決まっても、いつ避難するかが決められないと、結局のところ避難行動が取れず被災してしまうことになりかねません。

 

ハザードマップには避難のタイミングについては書いてありませんので、この記事ではなく、また別の記事で紹介したいと思います。合わせて、「警戒レベル」を避難のスイッチにしたり、避難する場所やタイミングを事前に考えるための「マイタイムライン」の活用についてもお話ししたいと思います。お楽しみに!

 

次回記事「いつ避難するの? 今でしょっ!/ 避難の開始は躊躇なく!

 

 

● その他の記事

● 防災訓練への参加者をいかにして増やすかを「ナッジ理論」で分析

   矢畑自主防災会

 

吸い殻投票箱でたばこのポイ捨て激減

 

「防災意識の低さをナッジ理論で分析してみた!」では、防災意識の低さを防災訓練への参加意識の低さでナッジ理論を活用して分析してみました。今回はどうやったら防災訓練に参加してもらえるかを、またもナッジ理論を活用して考えてみたいと思います。冒頭の写真にあるのは、たばこの吸い殻で投票する投票箱で、これを設置したらたばこのポイ捨てが激減したという「ナッジ理論」を応用したたばこポイ捨て防止対策です。

 

前述の記事を読んでいない人のために、「ナッジ理論」(「nudge」ひじで軽くつつくという意味)の基本原則だけ再度上げておきます。

①インセンティブ(iNcentives):

 これをやると「得をする」、やらないと「損する」

②マッピングを理解する(Understanding mappings):

 これをやると「このようにいい結果が得らる」(行動と結果の紐づけ)

③デフォルト(Defaults):やるべき行動を「デフォルト(初期設定)」

④フィードバックを与える(Give feedback):

 やった結果をすぐ「フィードバックする」

⑤エラーを予期する(Expect error):

 エラーを予期して誤った行動をしないよう先手を打つ

⑥複雑な選択を体系化(Structure complex choices):

 行動の選択をわかりやすく体系化する

 

● 「インセンティブ」の視点

それでは「インセンティブ(損得の意識)」の視点から見てみましょう。

 

実際に災害に遭われた人は別として、多くの人は実際に災害が発生したときに自分や家族がどのような状況に陥るのかを具体的にイメージして実感することが難しく、そのため防災訓練に参加したことによってどれだけ「損」するか、「得」するかがわからないのかもしれません。防災訓練開催の案内の中には、この点についての表記(例えば、「災害が発生したとき役に立ちます」など)は欠かせないにしても、受け取る人は「ああまたか、そんなことわかりきっている」と頭の中にはそのメッセージが全く残らない可能性が高いと思われます。従って、防災訓練から受け取る直接的な損得とは別の、何らかのインセンティブ(損得)を示す必要があるのではないでしょうか?

「ナッジ」ですから、軽く肘でつつくような例を上げてみましょう。

 

 ・参加した人はおいしい炊き出しご飯が食べられます。

 ・参加した人には無料で非常食や防災グッズを差し上げます。

 ・参加した人には地域商店街の割引券を差し上げます。

 

この場合のインセンティブは、直接防災意識を高めるのではなく、防災訓練に参加してもらうことを目的とし、最終目的である防災意識を高めることについては防災訓練に委ねるという考え方です。防災に関して金銭をからめることは一般的ではないのですが、町ぐるみで防災意識を高めることが切実な場合には、自治会費や市民税の一部を減額するなども一つの施策かもしれません。

ただし、よほどのインセンティブが無いとそれだけでは後押しすることは難しいかもしれません。

 

 

 

 

● 「マッピングを理解する」の視点

つぎに「マッピングを理解する」の視点からはどうでしょうか?

最も一般的な方法としては、防災訓練開催の案内書に、「防災訓練に参加すればこんなによい結果が得られます。」と、得られる「よいこと」を具体的に書いて全世帯に回覧、または配付すること周知させることです。しかし、受け取る側に関心を抱かせるにはその表現の仕方に何らかの工夫が必要になります。例を上げてみます。

 

 ・《参加すればもらえてお得》

   参加者は無料で非常食など防災グッズがもらえます!

 ・《参加すれば意識が変わる》

   防災訓練に参加するだけであなたの防災意識はぐんと上がるでしょう!

 ・《防災訓練に参加された方の声》

   私は防災活動の大切さを改めて認識し、さっそく非常食を買いました。

   もっと多くの人に参加していただきたいと思いました!

 ・《いざというとき役立つ技術が覚えられる》

   救出方法を覚えて、いざというときご家族を助けてあげてください!

 ・《子供と一緒に楽しめる》

   会場に消防車も来ます。お子様連れで気楽に楽しみに来てくださいね!

 

このようなことを書いた通知を流すのですが、果たしてこの通知をちゃんと読んでもらえるのでしょうか?多くの人は読まないと考えるべきかもしれません。従って、案内は回覧や配付だけのものではなく、別の複数の方法で伝達する必要があります。つぎに一例を上げます。

 

 ・町内の掲示板や地域の学校内、その他目につきやすいところ、にポスターを貼 

  る。

 ・地域にある小中学校にお願いし、生徒に参加を呼びかけてもらう。

 ・防災訓練前日や当日に宣伝カーでアナウンスして回る。(地域消防団に依頼)

 ・インターネットを使って案内を配信する。

 

インターネットによる配信は、まず配信先の登録率を上げていかないといけないので、費用と時間がかかる大変な作業になると思います。これだけのためにもインセンティブが必要になるかもしれません。いずれにしても、できることはすべて行うしかないのかなと思います。

 

 

● 「デフォルト」の視点

 

続いて「デフォルト(初期設定)」をみてみましょう。

私の所属している矢畑自治会では、全体の世帯数が約1,550世帯で、これを10~20世帯ごとに「組」という単位に分け、全体で134組の「組」から構成されています。この「組」には組長を定め(任期1年間で組内の輪番制です)、この組長がそれぞれの「組」のとりまとめを行うという仕組みになっています。

 

矢畑自治会の班・組構成

 

そして防災訓練の際には組長宛てに通知を出し、「各組から2名以上参加」するよう要請しています。これは「ナッジ」ではなく「半強制的」なものです。このとき、組長は組内の人に参加を呼びかけるのですが、もし組内に希望者が現れてくれない場合には自分や自分の家族が参加しなければならないものと「(仕方なく)初めから考えて」参加することを覚悟してくれます。これはまさに「デフォルト」の効果と考えらえます。当自治会では、念には念を入れて、防災訓練開催数週間前に全組長に集まっていただき、防災訓練の重要性、訓練の要領などを丁寧に説明する機会を設けています。その結果、訓練スタッフも含めて毎年200人前後の方々が参加されています。

 

矢畑自治会主催の防災訓練風景

 

● 「フィードバックを与える」の視点

つぎに「フィードバックを与える」視点から考えてみましょう。自分が起こした行動に対してどのような結果が生まれたのか、可能ならばどのようなよい結果が生まれたかをうまく伝えることができれば、つぎの行動を誘導できます。フィードバックするためには結果を数値化して見える化しないとならないのですが、防災訓練への参加回数、防災備蓄品の点数、防災に関する家族間の話し合い回数など、いろいろと考えられはしても実際に調査するとなると苦労しそうです。

つぎに一例を上げます。

 

 ・訓練後にアンケートを取り、よかったこと、悪かったことなどの感想をまとめて参加者に通知などで伝える。

 

これにより、改めて訓練に参加することの意義をみんなで共有することができ、つぎのステップに進む足がかりとなります。矢畑自治会の防災訓練では、「よかった点・悪かった点」、「よかった訓練」、「また参加したいか?」、「今後どのような訓練を希望するか?」などのアンケートを取り、回答を簡潔にグラフ化して全世帯に回覧でお伝えしています。

 

● 「エラーを予期する」の視点

続いて「エラーの予測」の視点から見てみましょう。

防災訓練を運営する側のスタッフはそれこそ訓練当日は朝から大忙しですが、一方防災訓練に参加する側の人たちは、意外なことに開催日時や場所などを忘れたり、間違えてしまうことがしばしばあるようです。そこで、このような防災訓練へ参加しようと考えている人たちに対して、日時や場所などを忘れたり、間違えたりして参加できなくならないよう、開催情報を確実に伝える必要があります。

 

 ・開催通知、ポスター掲示、宣伝カーでのアナウンス、インターネットでの配信など複数の手段で開催情報を流す。

 ・開催通知は1~2ヶ月前と直前1~2週間前の少なくとも2回流す。

 

ここでの情報発信はエラー防止が目的ですが、二次的効果として防災訓練への参加を促す効果も期待できます。

 

● 「複雑な選択を体系化」の視点

最後に「複雑な選択を体系化」について見てみましょう。

防災訓練の内容についてはぜひ参加してみたくなるような魅力的なもので、それが地域の人たちに伝わっていたとしても、もしその訓練に参加するための手続きが複雑で面倒なものであったら、それだけの理由で参加を見送られる恐れがあります。従って、防災訓練にすんなりと参加してもらうためには、参加するための手続きを極力簡略化することが重要な条件だといえます。

開催案内には次のような文言があると安心できますね。

 

  ・参加手続きは不要です。どなたでも気軽に会場にお立ち寄りください。 

 

参加者には日常生活の延長として気軽に会場まで足を運んでいただければよいと考えます。あとは防災訓練の中でいろいろな気づきを持ち帰っていただければ大成功です。

 

いかがでしたか?

防災意識を高めるための施策を、「ナッジ理論」を活用しながら考えてきましたが、「災害」というめったに起きないけれども起きると大変なことになることへの意識を高めるためには、ちょっとした行動を促す(ナッジ)ことで本人には余り意識させずに、「気が付いたら防災に向けて一歩踏み出していた」と思わせる「ナッジ理論」の応用が有効であることがお分かりいただけたのではないかと思います。

 

● 「防災意識向上シリーズ」全体のまとめ

・日本における防災意識は必ずしも高いものではない。防災訓練への参加率の低さも同様である。

・その理由は、防災の行動は日常的な行動の中で優先順位が低いからである。

・「ナッジ理論」を活用してその理由を分析してみると、災害が実際に起こった時の「損」「得」の具体的なイメージがつかめていないと思われる。

・防災意識を高めるために、防災訓練への参加を促すことを考えてみると、まずは防災訓練そのものの内容が充実していることが大前提である。

・防災訓練への参加を「仕向ける」ために「ナッジ理論」を活用して考えてみた。「ナッジ理論」の6つの基本原則におけるそれぞれの視点から有効と思われる施策を上げた。

 

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■ 参考記事

「日本は災害大国なのに防災意識が低いのはなぜ?」

「防災意識の低さをナッジ理論で分析してみた!」

・「防災意識を高めるためのナッジ理論の応用あれこれ」

・「防災訓練のおみやげに非常用トイレセットはいかが?

・「防災訓練のおみやげ(2)ミニライト・笛セットはいかが?