日曜の昼下がり、僕は塾に行くと母親に告げて家を出た。
期末テスト1週間前の日曜。同級生は皆、誘惑と戦いながら、テスト勉強に励んでいる頃だろう。
いつからだろうか、僕にそれが出来なくなったのは。
元々は真面目で、成績も常に上位10%くらいだった僕のことだから、今の自分の状況に罪悪感を感じている。わけではない。のが本音だ。
僕は金を使わずに時間を潰せるという理由で、近くの市立図書館に向かった。
けれど、読みたい本が取り扱いされてなかったので、次は何となく近くの本屋にふらふらと向かった。
なぜ僕が読みたい本が地元の市立図書館に無かったか。それは、地元で起きた連続児童殺傷事件の犯人による、手記だから、だ。どうやら、「発行されたことによる被害者遺族の精神的苦痛に、地方自治体として寄り添う姿勢が云々かんぬん......」ということ、らしい。
僕がそんな本を探し求めるようになった原因は、数日前から僕を襲う殺人願望だろう。
僕はその日から、理想の殺人計画の妄想を続けている。(今のところ、現実味を帯びていないので実行に移すことはないだろう。ご安心ください。)
その内容はいつかまた別の機会に記すとして、今回はこんなことが言いたかったのではない。
殺人願望を抱いてる僕は、連続児童殺傷事件の犯人が書いた手記を探している。そんなときイヤホンからは、既に亡くなった音楽家の曲が爆音で流れてくる。彼の死因は自殺だ。周りの音が一切聴こえないように、僕の耳の中だけで鳴り響く。
そういえば、僕には殺人願望よりずっと前からは自殺願望がある。
本屋を出て近くのスターバックスに向かうのはそんな僕だ。流行りのイギリス製の革靴を履いているのも、期間限定メニューを感じのいい笑顔で受け取るのも、そんな僕だ。(ちなみに、僕の左腕には、白と赤の筋が人様にはとても見せられないほど走っている)
親に嘘をついているのに、テスト勉強も出来ないのに、殺人願望があるのに、「不謹慎」な本が欲しいのに、自殺願望があるのに、僕は何食わぬ顔で息をしている。
「調子に乗るな」と誰かの声が聞こえる。そんなこと、僕がいちばん分かってる。
じゃあ、僕はどうすればいい?
その場から逃げなさい、という大人が大勢いるかもしれない。でも、所詮僕に居場所なんてないんだろ?
僕には何もできないのだ。何もできないうえに、何処にもいれないのだ?
高校を辞めたいとも言えない、人を殺すことも、麻縄で自分の首を吊るすこともできない。
ただ、誰もに何もを取り繕ったまま、並のフリをすることしかできないのだ。
好きなものを好きと言うことすら、嫌なことを嫌と言うことすら、できないのだ。
じゃあ、僕はどうすればいい?
と、問うことすら。