忘れないうちに私の誤った愛し方を刻む。

これは短命で、色濃く、

私を変えるきっかけとなった話。


2023年8月、

わたしは昔から人に必要とされていないと不安になる依存症の様なものがあった。

それは歳を取ると強くなる一方で年々不安にかられた。

私は基本レズビアンなので結婚には縁がないのだが孤独死と老いに恐怖があった。

前置きが長くなるので省くのだが、

33歳の当時、 

私には彼女も居たが折り合いも悪くなり

彼女とはお別れし、

暫くオンラインゲームに熱中した。

そこで顔も知らない男性に依存したのだ。

元々恋愛感情が乏しい私は

『依存』を『好き』だと思っていた。

2年ほど依存した後

ゲームといえど男性を好きになれたのだからと、

依存と好きの区別が付かないまま

15年ぶりにリアルの男性と関わりだした。


しかし、何人かとは会ったが心は動かなかった。

とりあえず、私を相当好いてくれた人が現れたので1年ほど関わったが好きにはなれなかった。

正直、自分が恋している状態なのかも理解できないのだからもう誰でも良いと思っていた。

それでもどこかで誰かを本気で愛したいとも思いマッチングアプリを再開した。



そんな時に君に会った。

10歳も若くて背の高い横顔の綺麗な男の子。

鬱系が好きでボカロもわかる。

V系もかじってて自分の生き写しみたいな子。

『鬱系が好きなんて私くらいだと思ってた…』

何故かカラ笑いが込み上げて来た。

何日かその子とやり取りをしたが、

特に大きな進展も無い。

『ま、10歳も離れてるしね』なんて思いつつ、

睡眠薬をのんでいたのもあり、

『冬にまどまぎの映画があるみたいだからよかったら一緒にいきましょ!』と私がメッセージを送った事からこの物語は始まる。


そこからその子と電話をするようになった。

初めての電話でその子は

浸すら鬱アニメや鬱ゲーを熱く語った。

暫くしてそんな自分に気付いたらしく

『あ、凄く話してしまった…。

こんな事、誰にも話すことないけん…ごめんね』

凄く話すなあ…。とは内心思ったが、

「私も好きだから大丈夫よ!」と答えた。

好きな事を語れないのは苦しい。

私も同じ思いをしたことがある。

だから私はこの子の話を沢山の聞いてあげようと思った。私で役に立てるならと。


そしてそのまま

『映画の前にとりあえずカラオケでもいきませんか?』と誘われた。

わたしは不安もあったがOKした。

その事を友達にもに話すと『騙されてるのでは?』なんて言われたもので、貴重品は置いていった。

会う前日は服選びに戸惑った。

若作りって思われたら嫌だな…、

なんて事を考えてたら可愛い服は着れず

結局は黒一色になった。


お互いに到着したので電話をかける。

「今日は私なんかの為にわざわざ時間使ってくださいましてw」と彼に電話で言いつつ

アリスガーデンに向かう。

実際会ってみて印象は違った。

可愛らしい顔をしていたので

もっと俺強え系で堂々としている子だと思ったのだ。


電話を切ったその子は

『初めまして』と小さくお辞儀した。

小さな鞄を肩に掛け、片手で折りたたみ傘を持ち、

背丈が180cmもあるその子は猫背で…

ふわふわの髪をしており何か影を纏っている子犬の様な泣きそうな瞳をしていた。


食事まで時間があったので

とりあえず目の前のドンキホーテに入った。

『がらくた見るの好きなんよね』

「私も好きだよ」

緊張が漂う中、その子は足を止めた。


そこは香水コーナーだった。

私が「香水、好きなん?」と聞くと

その子は『うん、コレクションしてるんよ。

なんかほしいのある?買ってあげる』と言う。

わたしは心の中で試されてる?と思いつつ

咄嗟に「いや、いいよいらないよ!」とお断りした。


時間が来たので私のオススメのランチのお店へ。

『自分がお金払うけん、

君のオススメのお店に行きたいな!』と

言われていたので和食の店に決めていた。

食事が届く間、

お互いのオススメの鬱アニメや映画を語った。

その子は私が見たものはほぼ見ていたので

私はU-NEXTで彼のオススメをチェックリストにいれた。

食事中、その子は

『なんか夢みたいだ、リア充みたい』と呟いた。

私は「なにそれ?wご飯食べてるだけじゃんw」と笑って答えた。


食事も終え、本命のカラオケへ。

正直、ジャンルは合えど世代は合わないだろうと期待していなかった。

しかし、いい意味で期待を裏切ったのだ。

ボカロも聞いてた世代がぴったりで、

歳の差なんて感じなかった。

誰も知らないであろう攻殻機動隊のロシア語の曲まで知っていた。

初めての理解者だった。

『もっと話したいから煙草つきあってくれる?初めてカラオケがこんなに楽しいと思った!臭いが付くけん嫌かね?』

会ったときの泣きそうな瞳はキラキラと輝き

私には犬の尻尾がみえた。

煙草は苦手だが私は「いいよ。」と答える。

本当に犬みたいだなって思いながら。


『攻殻機動隊の曲、ほんと吃驚して聴き入った!』なんて褒めるもんで

私は「そう?よかった」と澄ました顔をして

心では違う曲も覚えよって意気込んだ。


一通り歌って語って別れの時間がきた。

私が財布を取り出すとその子は制止し、

お会計を済ませた。

『次あった時に何かご馳走して!』と言われて私は財布を収めた。


次…。会ってくれるんだ。


店を出ると後ろから自転車が近付いてきた。

それに逸早く気付いたその子は

『危ないよ』と私の肩を寄せてくれた。

久しぶりにドキッとした。

そんな自分にも驚いた。

ドキッとする気持ちがまだ残ってたんだなって。


今でもあの通りを歩く時が

一番君を感じて胸が痛む。


途中まで同じバスに乗り、その子は駅で降りた。

バスを降りた彼からお礼のラインがなった。

わたしが『また遊ぼうね』と送ったら

『また遊んでくれるの?』なんて来て

『今度ご馳走してってカッコつけて心では不安だったのかな?』ってクスっとした。


『控えめで子犬みたいだな。結局犬系男子だな』って愛おしくなった。

これからもこの子の幸せを見守りたいなって。


これが恋になるなんて思いもよらなかった。