「あの、お腹は空いてないかしら?」

「・・あぁ、少し空いてるかな。」

「わかったわ。少し待ってて。」


少しなんて言ってても所詮俺は男。いろいろありすぎてものすごく腹が減ってた。

そして彼女が何やら呪文を唱え始めたんだ。

するといろんな美味しそうな食べ物が次々と出てきて俺は正直びびった。


「・・え?今の何?」

「魔法。私、魔女なのよ。」

「ふむ・・。この世界では何でもありなんだな。」


俺はいただきます、と言ってさっそく美味しそうなその料理を食べた。

すると何か彼女が言いたそうな顔をしていたから何?と聞くと


「あの・・、久しぶりにトマ以外の人と喋るからなんだか落ち着かないの。もし変な事言ったらごめんなさい。」

「いやいや俺の方こそいろいろしてもらって・・。」

「食事が終わった後でも私の話し相手になってくれるかしら?」

「もちろん。」


そう言うと、彼女がとても嬉しそうな顔をしたものだから、俺はつい照れて目をそらしてしまったんだ。

俺は魔女相手に何照れてるんだ・・。


食事が終わった後、彼女は周りの風景を一瞬にして変えた。

森だったはずが、今は彼女の家らしき場所になっている。

そこで僕等はいろんな事を話した。

黒猫のトマの事や、俺の日常生活の事。彼女が今までどんな風に暮らしてた、とか。

話題がつきたのは多分夜遅くだったんじゃないかな。

―――――「・・うー・・、何処だ?此処は・・。」

どのくらい気を失っていたのだろう。

そしていつの間にこんな知らない森に来ていたんだ。

すると夢で聞いたあの鈴の音がした。

リーンリーン。

振り向くと俺と同い年くらいの女の子と黒猫がいた。


「・・貴方、誰?」


ハッとした。あの夢で出てきた女の子だ。


「・・俺は杏樹。君は?」

「私はアリエスよ。この黒猫はトマ。」


俺はしばらく呆然と周りを見渡し、そして彼女の容姿に見惚れた。

それにこの黒猫、瞳の色が片方ずつ違う色で、まるで吸い込まれそうだ。


「俺、確か学校の図書室で不思議な本を見つけて・・。開いた途端、気を失って気付いたら此処にいたんだ。」

「・・そう。」


何故かわからないけれど、彼女は少し寂しそうで嬉しそうな微笑みをし、こう言った。


「この世界には私とトマしかいないわ。貴方が元いた世界に戻れるまで自由にしてて。」

「どうやって来たのかもわからないから、時間がかかりそうだけどそれでもいいかな。」

「ええ、どうぞ。困った事があったら私にすぐ行ってね。」

「・・ありがとう。」


何故俺はこんな状況に置かれてるにも関わらずこんなにも冷静なのだろう・・。

・・多分、小説の読みすぎだろうな―――――。

―――――キーンコーンカーンコーン。

授業が終わり、俺は荷物をまとめて図書室へ行く準備をした。

たまに友達に誘われてゲーセンとかカラオケとか行くけれど、

俺はそういった人が多い場所は苦手で。


面白い本はないかと探していると、不思議な本を見つけたんだ。

・・背表紙に何も書かれていない。

まるで何かの小説に出てきそうな展開だ。

wktkしながら手にその本を取って開いてみる。

その瞬間その本自体が光りだした。

「う、嘘だろっ・・。」

小説のような展開に動揺しつつ、俺は眩しくて目を瞑った―――――。