小さい頃、実はナポリタンは嫌いな料理だった。
母親は子供達が喜ぶだろうと「ご飯はスパゲッティにしようか」と言ってくれていたと思うが、それを聞くと、げんなりして食欲が失せそうになっていた。甘いのか辛いのか分からない味付け、炒めすぎて歯ごたえがなくなってる野菜、べたべたと油っぽくって、べちゃべちゃと口の周りが汚れる食べ物。
ただ、ケチャップは好きだったのだ。目玉焼きにはケチャップ派だったのだ。しかし、ナポリタンはダメだった。母親の作り方が好みじゃなかった。大人になって一人暮らしになり、「作り方を間違えなければ、ナポリタンだって美味しく作れるはずだ!」と、ほぼ毎日作り続けたことからも、そうだったんだと思う。
そこでたどり着いたナポリタンの作り方はこうだ。
1、具は玉葱、ウインナー、ピーマン、それぞれを適当に切っておく。
2、鍋で湯を沸かし、塩を入れ、スパゲッティを表示時間プラス1分程茹でる。このスパゲッティの茹で時間が調理時間となるので、ここでは8分程度と仮定し、続ける。
3、その間にフライパンに少量の油を入れ、弱めの中火で玉葱を炒める。ここで油を多く入れすぎるとベタベタとした嫌いなナポリタンになる。
4、5分ほど炒めたらウインナーとピーマンを投入。2分ほどしたら、茹で汁をレードル半分程度すくって入れ、ケチャップを適量加えて混ぜ合わせる。
5、茹で上げたスパゲッティを加えて混ぜ合わせる。決してここで長時間炒めてはいけない。20秒くらい和える感覚だ。皿に盛って完成。
こう作ると、玉葱もぎりぎりシャクシャクしない程良い過熱感、油っぽくなく、スッキリとした味わいのナポリタンになる。
「麺を炒めないナポリタンなんてナポリタンじゃない!」というナポリタン原理主義の方が多いと思うが、麺を炒めるためには大量の油が必要になる。それが嫌いだったのだ。ベーコンもダメだ。断固ウインナーだ。ベーコンだと余計な脂が染み出してきてしまう。だからこっちの外道のナポリタンが自分にとっては美味いと。
話を小さい頃に戻そう。嫌いだな、正確に言えば好きじゃないなと思ってはいても、食べれば腹は膨れるので文句はつけずに黙々とフォークを進めていた。しかし、その沈黙の中に一つの楽しみを探していたのだ。
「輪切りのピーマンないかな」
千切りだったときはガッカリとし、おそらく調理中にちぎれてピラピラしたものには無念を感じる。なぜ輪切りのピーマンでなくてはいけないのか。理由はよくわからない。しかし、自分の心の根源的なところで、それを求めている。
大きさのベストは真ん中より下の部分の細くなっているところ。だから自分で作るときは上部は千切り、下部を輪切りにしてる。首尾よく、クローバーみたいな輪切りのピーマンを見つけたときは「今日もいい日だ」とスパゲッティをかみ締める子供だった。