福島の問題 3 | xyavのくしゃくしゃブログ

福島の問題 3

3.甲状腺スクリーニングによる被害


もう一つの例は、甲状腺スクリーニングによる被害です。


「無料で受けられる痛くもない検査なのだから何の問題もないではないか」


そう思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、しかし、先日福島県伊達市の霊山(りょうぜん)地区で行われたシンポジウムで地元の方々とお話ししたところ、徐々にスクリーニングの弊害とも言える現状が明らかになりました。


「ようやく風評被害が落ち着いたところでスクリーニングを行ったことで、『やっぱり福島は危険なんじゃないか』と言われるようになってしまった」と、スクリーニングの存在そのものが風評被害を助長した、という意見もありましたし、子供が「A2」(注・検査結果で小さなしこり、嚢胞(のうほう)がある)と言われた時の心理的負担を話される方もいました。


中でも問題になったのが過剰医療の可能性で、医療者側が見つかったがんを過剰に手術をしている、と取られる傾向にありますが、しかし実際の所は、不安になった親御さんが「お子さんは癌です、だけど小さいから待ちましょう」という方針に納得できず、早めに手術を受けさせたがる、ということも多かったとのことです。


本来はスクリーニングの前に以下のようなコンセンサスを得ておく必要があったと思います。


普通行わないスクリーニングを行う事で、甲状腺がんが偶然見つかる可能性があり、もしがんが見つかった場合、手術しなくてはいけない、という意見が主流ですが、しかしそれは、スクリーニングをしなければ見つからなかったがんである可能性もあり、また手術には合併症や傷跡の残る可能性があります。


もし、「本来見つからなかった」がんを手術しなかったら何が起こるのかは、分からず、「A2」です「再検査です」と言われた時、には次の検査まで不安で過ごさなくてはいけませんが、それでもお子さんにスクリーニングを受けさせますか?


このようなコミュニケーションを充分行わずに始まってしまった甲状腺スクリーニングが、お子さんや親御さんの心を深く傷つけ、さらに、「先行調査のうちに小さな癌を見つけておけば本格調査での検出率が下がるか、原発の影響は少ない、と言おうとしているのかもしれない」などと、むしろスクリーニングを行う事で政府への不信を強めた方もいらっしゃいます。