福島の問題 1 | xyavのくしゃくしゃブログ

福島の問題 1

越智小枝さんは相馬中央病院・内科医 医学博士 公衆衛生学修士で、福島の現状を報告しています。


リウマチの疫学を学ぼう、と公衆衛生大学院への留学を目指していた私の元に、インペリアルカレッジ・ロンドンから合格通知が届いたのは2011年2月28日で、その時は、まさかそのわずか11日後に起こる事件のために自分の進路が大きく変わるとは、想像もしていませんでした。


しかし、浜通りに対する偏見がどれだけ残っているのか、ということに、私はうかつにも気づいていませんでした。


「『フクシマに行くの』って友達に行ったら、『そんな危険なところに行くな』『行くんだったら長居せずさっさと記録だけ取って帰ってこい』って言われたわ」


先日相馬市にホームステイにやってきた米国の大学生が話されていたことです。


「このツアーを企画した2012年には、真っ赤にペイントされた手袋が学長の所に送りつけられてきました。『うちの国の学生を殺す気か。お前の手はすでに血塗られている』ということのようです」


いくら真面目に線量を測定し、発表しても、この福島に対する偏見が払拭されるまでにはまだまだ時間がかかりそうです。


もちろん福島県に原発事故由来の放射能が存在することは確かで、私は個人的にはその測定値を安全と判断して相馬市に移住しましたが、しかし同じ量の放射線量を「危険だ」と感じる人々も大勢いらっしゃいますし、その考えを無理にくつがえそうとは思いません、安全とはあくまで主観的なものだからです。


しかし一番の問題は、まだ見えぬ放射線被害に議論が集中するあまり、「目に見える健康被害」が全く注目されぬまま放置されていることです。


この3年間で、福島県ではさまざまな健康被害が生じていますが、そのほぼすべてが、放射線による被害ではなく、さらに言えば、その多くは事故の後にでも防ぎ得た被害なのです。