始めに

年末の恒例行事になりつつある #声優アーティスト楽曲大賞 毎年この企画に何を選ぼうかなと考えながら過ごしているとしっかり曲をディグれるので割と重宝しています。分からない方は主催のツイートやあるいはツイッターのワード検索を見てみるといいでしょう。

 

 

 

レギュレーション

決まりはそこまでありませんが個人的には以下がバランス良いかなと思っています。

  • 歌唱者:声優が歌っている。肩書として声優を最初に名乗っているかで判断。
  • 名義:個人名義。レーベル所属かどうかは問わない。キャラソンは含まない。ユニットの場合はコンテンツ系ではなく独立してアーティスト活動していること。
    • 主催ルールではキャラソンはアリです。私は個人レギュでキャラソンは対象外にしています。
  • リリース時期:1月1日から12月31日までのリリースが対象。過去シングルからアルバム収録されている曲は対象外。また翌年リリースの先行配信は含めない。
    • 最近は先行配信なのかデジタルシングルカットなのか判断が難しくなってきているのでどちらでもいいかなと思い始めています。
  • 曲数:1アーティスト1曲で全10曲。140文字に収めやすいというのもあります。1アーティストに集中させるのも芸がないので1アーティスト1曲までにしています。
    • 1ツイートに収めるのが目的になると本末転倒なので、入らなければ複数ツイートに分割するのが良いかと思います。
どんな曲があるか気になる方は以下をチェックすると幸せになれるらしい。

 

選曲の前に全体的な所感

さてまずは2022年のサマリです。当社調べでは2022年の女性声優全曲は597曲でした (先行配信や過去シングルのアルバム収録などを含む)。2021年が最終的に613曲だったのでやや減ですが、楽曲のレベルは横ばいかむしろ高まっている印象はあります。

 

一方でソロデビューアーティストは3組 (青山吉能、夜道雪、IBERIs& (プレデビュー)) で2021年の11組から大幅減でした。ただ2023年は既に2組のデビュー情報が解禁されていますし、現地ライブやイベントも復活していく方向なのでこれは一時的なものかなと想定しています。

 

曲の傾向はいわゆるボカロ曲が声優楽曲でもかなり目立ちましたが、他には依然としてブラックミュージック系やEDM/ガールズヒップホップ的なK-Pop系が強いのと、2000年代に回帰するようなバンドサウンドやポップスも多かった印象があります。

選曲

前置きが長くなりましたが、今年の選曲はこんな感じでした (順不同)。自分は音楽的な趣味から声優アーティストとしては女性アーティストを中心に聞いているのでそんな選曲になっています。

  1. デネブとスピカ/DIALOGUE+
  2. パレオトピア/水瀬いのり
  3. Believe like Singing./ヒーラーガールズ
  4. 曖昧蜃気楼/石原夏織
  5. 菫/坂本真綾
  6. FAQ/サンドリオン
  7. くらげ/熊田茜音
  8. アンダンテ/上田麗奈
  9. Esquisse/鬼頭明里
  10. La-Pa-Pa Cream Puff/伊藤美来

各曲選評

(1) デネブとスピカ / DIALOGUE+

作詞:田淵智也 作曲:田淵智也 編曲:堀江晶太

2022年8月24日リリースのシングル表題でTVアニメ「継母の連れ子が元カノだった」のOP主題歌。もはや安定の作編コンビですが、AメロではファンクなノリからBメロに向かってストリングスアレンジで盛り上げ、サビでは最高にポップを極めつつ切なさあふれるメロディーの良さが光ります。2番では2サビスキップからのピアノソロ→Dメロから3サビに突入し、最後はまた別のメロ(Eメロ?)から大サビ突入。息をつく間もなくグッドなメロディーで畳みかける田淵らしい楽曲で1周目から大賞入り確定と感じた1曲でした。

 

2022年のDIALOGUE+は諸般の事情で中々8名全員が集合することができず苦しい1年だったと思いますが、2023年は全員復活して2ndアルバムやZeppツアーなども控えており何とも楽しみです。

(2) パレオトピア / 水瀬いのり

作詞:栁舘周平 作曲:栁舘周平 編曲:栁舘周平

2022年7月20日リリースの4thアルバム「glow」収録のアルバム曲。圧倒的なメロディーととてつもない音の作りこみと情報量で畳みかけるオペラのような壮大な曲ですが、意外にも曲長さは3分14秒と短くイマドキな曲でもあります。またお前かダテシューという感じでクレジットを見て納得するタイプの名曲ですね。2021年の人気曲であるStarcast/石原夏織も栁舘周平さんの提供曲でした。この人が関わったら名曲確定演出な今一番の注目作家でしょう。

 

アルバムglowはこれまでとかなり方向性が変わったことで賛否両論を巻き起こした作品ですが、八月のスーベニアやMelty nightなど名曲も揃っているのでこちらも要チェックですね。

(3) Believe like Singing. / ヒーラーガールズ

作詞:松井洋平 作曲:高橋諒 編曲:高橋諒

2022年5月25日リリースの両A面シングルからの1曲で、TVアニメ「ヒーラー・ガール」のED主題歌。最近では極めて珍しいコーラスとハモリを聞かせるユニットであるヒーラーガールズ。ストリングスを主体とした壮大なメロディーとサビのコーラスがとても良いです。もう1曲のFeel you, Heal Youも良いのですが、大団円さと希望に満ちた未来を感じさせるBelieve like Singing.の方が私は好みでした。

 

ヒーラーガールズは残念ながら2022年10月8日のラストライブを最後に活動終了となってしまいましたが、メンバーはますます活動の幅を広げているのでそれぞれの場で活躍していきグッドな曲を聞かせてくれることでしょう。

(4) 曖昧蜃気楼 / 石原夏織

作詞:RIRIKO 作曲:RIRIKO 編曲:RIRIKO

2022年8月3日リリースの10thシングル「Abracada-Boo」のカップリング。RIRIKOさん提供というクレジット発表の時点で期待しかなかったですが、その大きな期待を更に上回る名曲に仕上げてきました。キャリさんこと石原夏織というと声質から「負けボイス」や切ない曲がとても合うのですが切なく懐かしさも感じるメロディーや音作りは王道と言っても良いですし、夏の終わりに聴くのがぴったりな1曲になっています。

 

来年2023年はソロアーティストデビュー5周年イヤーで各種イベントに3rdアルバムも期待されますね。シングル6連発だったりこれまでアーティスト活動をささえていたプロデューサー (澤畠さん) が現場を離れているっぽい?とやや体制に不安を覚えるところもありますがまぁ何とかなるでしょう。とりあえず8月6日はバースデーライブがあり、この曲も歌うのはほぼ確実なので是非ライブを見に来てください!(迫真)

(5) 菫 / 坂本真綾

作詞:坂本真綾 作曲:岸田繁 編曲:岸田繁・扇谷研人

2022年5月25日リリースの両A面シングル表題でTVアニメ「であいもん」のOP主題歌。坂本真綾さんは声優アーティストの枠で語るのも恐れ多いですが、やはり毎年10選に入る良い曲をリリースされます。私は曲を聞くにあたってほぼ歌詞を聞いていないのですがこの曲では歌詞がとてもすんなりと入ってくるのが特徴的に感じました。圧倒的な歌唱力と声質の良さは言うまでもないですね。

 

真綾さんは出産後最初の復活ライブun_muteもとんでもなく良かったですし、2023年もタイアップが2つ決っているなど精力的な活動が既に見えていて期待が高まりますね。

(6) FAQ / サンドリオン

作詞:渡辺翔 作曲:照井順政 編曲:照井順政

2022年1月29日リリースの1stアルバム「märch (マーチ)」収録のアルバム曲。ピアノロック的なボカロ色もあるダークなEDM系なのですが、細かい音の作りこみやハードなメロディーに目まぐるしく変わるリズムや曲展開など圧倒されっぱなしでした。あとユニットということでソロでは難しい掛け合いや厚みのあるユニゾン・コーラスといった強みも生かされているのも良いですね。FAQ以外ではベストアルバム収録の「ダッサイ」もかなり良くて悩みました。

 

サンドリオンは元々作曲陣をそろえたかなりの楽曲派なアイドル系の声優ユニットですが、2022年はベストアルバム収録の新曲3曲を含めかなり気合の入った展開を見せていますし、2023年には日本コロムビアからメジャーデビューするということで(というかインディーズだったのが驚き)より一層の活躍が期待できそうです。

(7) くらげ / 熊田茜音

作詞:熊田茜音 作曲:宮崎まゆ 編曲:高橋修平

2022年2月23日リリースの1stアルバム「世界が晴れたら」収録のアルバム曲。これまでの熊田茜音の元気いっぱいなコモンイメージからは逆を行くチルでファンクなグッドソングです。本人作詞の曲でもあるのですが初作詞とは思えないほど良く整っていて、Dメロにアルバムタイトルを入れるなど、これまで溜め込んだインプットを解き放った狙いすました1曲になっていると思います。

 

このアルバム「世界が晴れたら」は代表的なタイアップ曲に加えて、この「くらげ」の他にもクールでダークなロック「drizzling」、しっとりとしつつもメロディアスなバラード「濃い藍、油性の恋」などバラエティに富んだ良曲ばかり収録しており2022年の声優アルバムでもトップクラスに良いアルバムだと思っていまるので是非にも聞いてほしいですね。あとフェスやライブ出演も多く精力的に活動をしているので機会があればこちらもよろしくお願いします。

(8) アンダンテ / 上田麗奈

作詞:山田かすみ 作曲:山田かすみ 編曲:笹川真生

2022年10月5日リリースのミニアルバム「Atrium」からの1曲。このミニアルバムは全曲素晴らしい出来で正直選曲は迷ったのですが、個人的に一番刺さったのがこの「アンダンテ」でした。上田麗奈一流の敢えて音程をぴったり揃えずずらしたようなかすれた歌い方や、ピアノの不協和音などが心にグっと来るようです。上田麗奈はアーティストとしての世界観構築が素晴らしく、次のライブが待たれるアーティストの一人ですね。

(9) Esquisse / 鬼頭明里

作詞:Soflan Daichi 作曲:伊藤翼 編曲:伊藤翼

2022年10月12日リリースの2ndアルバム「Luminous」アルバムのリード曲。鬼頭さんというと1stアルバム「Style」やミニアルバム「Kaleidoscope」のバンドサウンドなロックなイメージが強かったと思いますがこのアルバムはソウルフルな曲が中心で、その代表がこの「Esquisse」ですね。他にも「BYERONY」、「DEAD or CALL MY NAME」や「Oxidation」などいずれも良い曲で甲乙つけがたいのですが、ファンク好きな私の中では「Esquisse」に軍配が上がりました。アルバムリリースから少し間があきますが、2023年5月~6月にZeppツアーもあるので楽しみですね。

(10) La-Pa-Pa Cream Puff / 伊藤美来

作詞:ミズノゲンキ 作曲:睦月周平 編曲:睦月周平

2022年4月6日リリースのシングル「青100色」カップリング。シティ・ポップ路線を極めてきた伊藤美来が送り出した楽しさを詰め込んだようなポップそのものと言った曲。ライブでのクラップも楽しかったですね。4thアルバムや次のライブツアーも見えているものの、最近は曲の雰囲気やメロディーの作りこみ、ライブの演出も少し生温さを感じていて今後どうなるか少し心配なところはありますが、奮起に期待したいところです (上からマリコ)。

惜しくも選外な曲もご紹介

毎度10曲に絞るのは苦しくも楽しい作業なのですがそんな中で最後まで悩んだ曲です。
  • ロンリーナイト・ディスコティック/雨宮天:2022年開幕からいきなりカマしてきた天さん十八番。Love-Evidenceも良かったのですが僅差で選外。
  • Guide/早見沙織:A/Bメロからじわじわと解放して行ってサビのメロディーで大爆発するタイプのミディアムバラード。Awakeも良かったですがこれも僅差で選外。
  • ササクレ/夏川椎菜:ロックのようでありつつバラードやクラシックのようでもあるナンスらしい1曲。
  • 慈しみカンパニュラ/小倉唯:曲調がメジャーとマイナーで交錯するところが何とも好きなミディアムバラード。日本コロムビアへレーベル移籍後第1弾Love∞Visionも新しい方向性でとても良かったですが惜しくも選外。
  • はなれない距離/TrySail:TrySailとしてはやや珍しくも感じる可愛くポップな曲。声優らしく声を活かしたささやきを多用した曲で評価は高かったがこれも僅差で選外。
そのほか、2022年の声優アーティスト楽曲を決める過程で選んだ50曲のプレイリストも置いてみます。50曲にも入りきらなかった良曲がたくさんあるんですよね。やはりレベルが高い年だったと思います。

その他

ちなみに竹っぽい人が皆さんの投稿を集計してくれています。ありがたいことです。2021年はこんな感じでピンキーフック、Starcast、おもいでしりとり、クラクトリトルプライドが票を集めていました。2022年はどうなるんでしょう。今年は全く予想がつかないのでどんな結果になるか興味深いです。

最後に

こんなところまで読んでいただいてありがとうございました。2022年はアニメタイアップが一般邦楽アーティストに持っていかれたり、あるいはファン層がVtuberに流れている傾向が如実に見えてきている、気がします。結果として、声優アーティストとしてはヒット作が出づらい状態になってきたり、長期化するコロナ影響でCD売上やライブ動員もかなり下がっていて厳しい時代が続いているようにも思えますが、一方でアニサマのような大型フェスの復活やライブの声出し解禁も見えてきているなど明るい話題も多くなってきています。そんなこんなで2023年には以前の活気が戻ってきたり、良い曲がたくさん生まれ出会えたらといいなと、声優アーティストの1ファンとしては強く願うところです。

 

終わりだよ~