シラス達の輝き
命の尊さ、儚さは、意外にも日常のちょっとした出来事で感じるものなのかもしれない。
ある日の夜のことだった。
なんてことない日常。いつもと同じように夕飯を食べて風呂に入り、そして母にちょっとしたことを頼まれた。
「シラスを裏の冷蔵庫に置いてきて欲しい」と言う。
本当にちょっとした頼みだった。その気になれば苦もなく直ぐに終わる仕事だった。
僕は少しばかり渋りながら引き受けた。自分の時間を邪魔されたくなかったのだろうか、振り返ってみるとあそこで快く引き受けなかったことを不思議に思う。
とにかく僕はシラスの入ったパックを持って二階から一階へ降りた。
ゲームを持ちながらでも割と簡単に階段を降りられた。
裏の冷蔵庫に行く為には一度台所の勝手口から外に出ねばならない。
台所から勝手口への段差を降りて、戸を開けようとした時にあることに気がついた。
パックを輪ゴムでとめなければならないことに。
そのシラスのパックは蓋が輪ゴム等でとめられておらず、開いたままだった。僕が手で押さえて蓋をしていたが、冷蔵庫にしまうときに輪ゴムでとめていなければ流石におかしい。
僕は輪ゴムを取ろうとして、勝手口と台所との段差を越えようとした。
その時だった。
僕の脚が段差に引っ掛かった。突然のことだったから僕が咄嗟に対応できるはずもない。
手に持っていたシラスのパックが宙を舞った。
シラスのパックが台所の床に落ちた。そこまでの高さではなかったのだが、不幸にもそのパックは蓋が開いていた。勿論、中身のシラスは着地の衝撃によって半数程が床に飛び散っていた。
僕はまだその時、「勿体無いことをした…」と感じるだけだった。
直ぐに僕はティッシュペーパーをとってきて床を…シラスを拭いた。
次の瞬間、僕は絶句していた。
シラスが潰れていたのだ。
先程までは、パックの中であんなにも輝いていたシラス達が。
死してもなお輝き続け、たとえ汚い床に落ちてしまってもその命の輝きだけは消えていなかったシラス達が。
黒か灰色か、周りの床の汚れとどうかしてしまうような何か。
拭いたティッシュペーパーを覗くと、シラス達は潰れ灰色になっていた。
その汚れがシラスによるものなのか、床の元からの汚れなのかは定かではない。
だが、その光景は僕の心に衝撃を与えた。
命の輝きを奪ってしまった…そんな気がした。
実際のところ人は日常的に何かの命を、その輝き奪っているのだろう。歩いている時に道端の草花や虫などを踏んで殺してしまうことなんてよくあることだろう。そしてそんな時、人は…勿論僕も、気付きもしないだろう。
だが、僕はその様を見せつけられた。この世の輪廻や食物連鎖の中で輝く「命」、それを消してしまったと。
シラス達は何のために獲られ、殺されたのか。
そう考えた時、僕は取り返しのつかない罪を犯したと気付き、そして悔やんだ。
何のために何百、何千、何万の稚魚達の未来を奪ったのか。何のために、僕達は他の種の命を奪い生きているのか。
それらの命を、僕は「殺した」。
「殺す」、というのはこういうことを言うのかもしれない。
たとえ命が失われても、その命はまた他の命ね中で活きて…生きていく。
食物連鎖などはその最たる例であろう。
そして、そんな風に僕達家族の中で生き続けるはずの命達を僕は奪ったのだ、殺したのだ。
償っても償いきれない気がする。
これは僕の思い込みでもあると思う。「考えすぎ、どうかしてる」と言われても仕方ないだろう。
でも、確かに僕は命の尊さを感じた。命を大切にしたいと心から思えた。
僕の中に芽生えたこの感情。これが僕の潰したシラス達が生きていた証…いや、この感情としてあのシラス達は僕の中で生き続ける。必ず生き続けさせてみせる。
すまない、そしてありがとう、シラス達。
ある日の夜のことだった。
なんてことない日常。いつもと同じように夕飯を食べて風呂に入り、そして母にちょっとしたことを頼まれた。
「シラスを裏の冷蔵庫に置いてきて欲しい」と言う。
本当にちょっとした頼みだった。その気になれば苦もなく直ぐに終わる仕事だった。
僕は少しばかり渋りながら引き受けた。自分の時間を邪魔されたくなかったのだろうか、振り返ってみるとあそこで快く引き受けなかったことを不思議に思う。
とにかく僕はシラスの入ったパックを持って二階から一階へ降りた。
ゲームを持ちながらでも割と簡単に階段を降りられた。
裏の冷蔵庫に行く為には一度台所の勝手口から外に出ねばならない。
台所から勝手口への段差を降りて、戸を開けようとした時にあることに気がついた。
パックを輪ゴムでとめなければならないことに。
そのシラスのパックは蓋が輪ゴム等でとめられておらず、開いたままだった。僕が手で押さえて蓋をしていたが、冷蔵庫にしまうときに輪ゴムでとめていなければ流石におかしい。
僕は輪ゴムを取ろうとして、勝手口と台所との段差を越えようとした。
その時だった。
僕の脚が段差に引っ掛かった。突然のことだったから僕が咄嗟に対応できるはずもない。
手に持っていたシラスのパックが宙を舞った。
シラスのパックが台所の床に落ちた。そこまでの高さではなかったのだが、不幸にもそのパックは蓋が開いていた。勿論、中身のシラスは着地の衝撃によって半数程が床に飛び散っていた。
僕はまだその時、「勿体無いことをした…」と感じるだけだった。
直ぐに僕はティッシュペーパーをとってきて床を…シラスを拭いた。
次の瞬間、僕は絶句していた。
シラスが潰れていたのだ。
先程までは、パックの中であんなにも輝いていたシラス達が。
死してもなお輝き続け、たとえ汚い床に落ちてしまってもその命の輝きだけは消えていなかったシラス達が。
黒か灰色か、周りの床の汚れとどうかしてしまうような何か。
拭いたティッシュペーパーを覗くと、シラス達は潰れ灰色になっていた。
その汚れがシラスによるものなのか、床の元からの汚れなのかは定かではない。
だが、その光景は僕の心に衝撃を与えた。
命の輝きを奪ってしまった…そんな気がした。
実際のところ人は日常的に何かの命を、その輝き奪っているのだろう。歩いている時に道端の草花や虫などを踏んで殺してしまうことなんてよくあることだろう。そしてそんな時、人は…勿論僕も、気付きもしないだろう。
だが、僕はその様を見せつけられた。この世の輪廻や食物連鎖の中で輝く「命」、それを消してしまったと。
シラス達は何のために獲られ、殺されたのか。
そう考えた時、僕は取り返しのつかない罪を犯したと気付き、そして悔やんだ。
何のために何百、何千、何万の稚魚達の未来を奪ったのか。何のために、僕達は他の種の命を奪い生きているのか。
それらの命を、僕は「殺した」。
「殺す」、というのはこういうことを言うのかもしれない。
たとえ命が失われても、その命はまた他の命ね中で活きて…生きていく。
食物連鎖などはその最たる例であろう。
そして、そんな風に僕達家族の中で生き続けるはずの命達を僕は奪ったのだ、殺したのだ。
償っても償いきれない気がする。
これは僕の思い込みでもあると思う。「考えすぎ、どうかしてる」と言われても仕方ないだろう。
でも、確かに僕は命の尊さを感じた。命を大切にしたいと心から思えた。
僕の中に芽生えたこの感情。これが僕の潰したシラス達が生きていた証…いや、この感情としてあのシラス達は僕の中で生き続ける。必ず生き続けさせてみせる。
すまない、そしてありがとう、シラス達。
今日をもってアメーバを
やめません(キリッ←
まあ私がやめるわけは無いというわけでして。
でもアメーバ禁はしてみる←
今日から1週間の間、自分にちょっとした課題を出す。それを自分で達成できたと思ったら帰ってくる、そうゆうことにしようかと。
なうチェックはしそうだけど←
あ、スカイプもできるお←←
なんだかアメーバ禁の意味が無いような気もしなくではないけど…努力は大事だと思うんだ。
だから頑張ってみるぜぇ
ではでは、1週間後にまた会えたら会いましょ ノシ
第1回集え作家!6時間対抗小説対決参加小説『楽哀怒喜』
ボクはロボット。
ボクは今、旅をしている。
ボクを創ってくれた博士の頼みで。
博士はとっても偉い学者さんらしく、凄い賞を数え切れないほど受賞しているそうなんだ。
その上、美人さん。
どのくらい美人さんかっていうと…ボクが百人いたとしたら、その全員が口を揃えて「美人さん!」って言うくらいの美人さんかな!
ね、凄い美人さんだってわかったでしょ!
え?博士はボクにどんな頼みをしたのかって?
それはね…
「おい、進路がずれている。0.03mm左に修正しろ」
…またかぁ。
こいつはブレイン。
ボクの頭の中に住んでいて、名前の通りボクの脳ミソみたいな役割を果たしてくれているんだ。
とっても高性能な自立型コンプューターらしいんだけど、とっても無愛想で口うるさい奴なんだ。
「誰が無愛想で口うるさいと…?」
…その上地獄耳だ。
「着いたぞ、目的地だ」
いつの間にか、目的地に着いてたみたいだ。
目的地であるとある町は、色とりどりの草花に彩られ、そこに住む人々は皆笑顔だった。
住民達は皆ボクを歓迎してくれた。
ボクの体が可能な限り人間に似せてあるといっても、一目見ればボクがロボットであることは直ぐにわかる。
それでもボクを快く迎えてくれたのは、この町がそれだけ平和でボクが危険なロボットだとは微塵にも思ってないからだろう。
あ、勿論「実はボク、この平和をぶち壊す為にやってきた、悪のロボットなのでしたー☆」なーんてことは無いから安心してね。
それにしても、ここは良いところだなぁ~。食べ物は美味しいし、色んなお祭りなんかも行われたりしていて、毎日が“楽しい”。
町の人の話によると、この町はいつでも平和で人々は楽しみ以外知らないくらいに毎日を楽しんでるんだって。
良いなぁ~こんなところに住めたら毎日楽で楽しいだろうな~、そんなことを思いながらボクは数日間この村で過ごした。
「おい、そろそろ行くぞ」
四日目の朝、ここに来てからずっと黙りっぱなしだったブレインが口を開いた。
行くってどこに?ボクは遊び疲れた体を起こしながら聞いた。
「次の目的地だ、お前は博士から託された使命を忘れたのか?」
ボクはまだここでみんなと遊んでいたいよぉ、ずっとここに居たいくらいなんだよ…と自分の意見を言おうとしたが、ブレインの言う「博士から託された使命」はボクにとってもとても大事な使命だったことを思い出し、陽気な人々との別れを惜しみながら町を後にした。
町の人々は最後まで笑顔のままだった。
そうそう、ボクの使命についてまだ話してなかったね。
ボクの使命は、“人の感情”集めること。
ボクの体には人間と接することでその人の感情をトレースし、更には保存することができる装置が入っているらしいんだ。ボク自身、仕組みはよくわかっていないんだけどね。
ボクを創った博士は、ロボット工学だけでなく様々な分野を研究している。
その中でも、今回のボクを使った研究には一番力を入れているんだ。
だからボクも精一杯頑張らなきゃ!
おっと、そうこうしてる間に次の目的地に着いたみたいだ。
次にボクがたどり着いたのは、飢餓や貧困に苦しんでいる町だった。
町は寂れ、人々は苦しみを訴え続けていた。
ボクはまだ幼い一人の少年に出会った。
荷物の中からお菓子を取り出してその少年にあげた。ブレインの指示だった。
ボクはその少年に話を聞いた。
彼はいわゆる戦災孤児であり、戦争で家族を失い独りぼっちになったらしい。
ボクは彼の心をトレースした。
辛い、苦しい、そして何よりも…“哀しい”。
彼の心は悲哀に満ちていた。
「次だ、行くぞ」
嫌だ、もう動きたくない。
こんな惨状を目の当たりにしたら、もう世界なんてどうでもよくなるただ、哀しい。
「お前が動こうとしないのなら、私が連れてゆく」
ブレインにはボクを強制的に動かせる能力がある。
だが今はそんなことどうでもいい…。
「ここが、最後の目的地だ」
そこは先ほど町からさほど遠くないところにあった。
あの町と同じく町の家々は破壊されていた。
だがあの町と違い活気はあった。
そう、戦争だ。
その町は戦地となっていた。
銃声が、怒号が、そして血が飛び交う。
ボクの肩に何かが当たった。銃弾だ。
一人の兵士がボクに向かって突進してくる。
だがボクの体は長旅に耐えられるよう、強固な装甲に覆われている。ボクに銃は効かない。
ボクはその兵士を捕らえ、話をした。
最初のうちは抵抗していたが、逃げられないとわかって開き直ったのかその兵士はべらべらと喋り始めた。
ボクは彼の話を聞きながら、彼の心をトレースした。
彼等は復讐の為に戦っているのだという。
その心の根本にあるものは憎しみ…“怒り”。
彼は自慢気に自分の武勲を語り出した。敵の戦車を命懸けて破壊したこと、この近くの町でも前線で戦い『町民のふりをした』敵を殲滅したことなど。
この近くの町…?
ボクはブレインに頼んだ、この近くの町のリストを出してくれと。
ブレインはボクの脳でありデータベースでもある。
この近くにある町は、一つだけだった。
あの飢餓や貧困に苦しんでいた…あの少年が居た町だ。
刹那、ボクはその兵士を殴っていた。何度も、何度も。
ブレインが強制的にボクを止めるまで、その兵士が生き絶えてもなお殴り続けた…ただ、“怒り”の任せるままに。
目を覚ますと、ボクは博士の研究所に戻っていた。
ブレインが連れて帰ってくたのだった。
目の前には博士がいた。彼女はその端正な顔立ちをくしゃくしゃにして泣いていた。
ボクは尋ねた、何故泣いているのかと。
「貴方の体に保存された感情と、貴方の記憶を見たからよ。辛い思いさせちゃったわね…ごめんなさい」
そう言って博士は頭を下げた。
でも、とボクは言った。
「ボクは旅に出て良かったと思っています。博士の為っていうのもあったけど…何より、自分の為になったと思っているから。
それにね、博士。楽しいこともあったんだよ」
ボクは笑顔でそう言った。
博士の涙は止まっていた。
「博士。ボクはここに帰ってきて…博士にまあ会えて…とても嬉しいんだ。これが、“喜び”なんだね」
博士の顔に、笑顔が戻った。
人間は“喜怒哀楽”といった様々な感情を持っている。
皆さんはどの感情が必要だと思いますか?
ボクは、どれも大切な感情だと思います。
“怒り”や“哀しみ”は必ずしも悪い感情とは言えない。逆に“喜び”や“楽しさ”も、必ずしも良い感情とは言えない。
それぞれの感情と向き合ってゆくこと、それが大事なんじゃないかとボクは感じました。
これが今回の旅を改めて振り返ってみての、ボクの報告です。
ボクは今、旅をしている。
ボクを創ってくれた博士の頼みで。
博士はとっても偉い学者さんらしく、凄い賞を数え切れないほど受賞しているそうなんだ。
その上、美人さん。
どのくらい美人さんかっていうと…ボクが百人いたとしたら、その全員が口を揃えて「美人さん!」って言うくらいの美人さんかな!
ね、凄い美人さんだってわかったでしょ!
え?博士はボクにどんな頼みをしたのかって?
それはね…
「おい、進路がずれている。0.03mm左に修正しろ」
…またかぁ。
こいつはブレイン。
ボクの頭の中に住んでいて、名前の通りボクの脳ミソみたいな役割を果たしてくれているんだ。
とっても高性能な自立型コンプューターらしいんだけど、とっても無愛想で口うるさい奴なんだ。
「誰が無愛想で口うるさいと…?」
…その上地獄耳だ。
「着いたぞ、目的地だ」
いつの間にか、目的地に着いてたみたいだ。
目的地であるとある町は、色とりどりの草花に彩られ、そこに住む人々は皆笑顔だった。
住民達は皆ボクを歓迎してくれた。
ボクの体が可能な限り人間に似せてあるといっても、一目見ればボクがロボットであることは直ぐにわかる。
それでもボクを快く迎えてくれたのは、この町がそれだけ平和でボクが危険なロボットだとは微塵にも思ってないからだろう。
あ、勿論「実はボク、この平和をぶち壊す為にやってきた、悪のロボットなのでしたー☆」なーんてことは無いから安心してね。
それにしても、ここは良いところだなぁ~。食べ物は美味しいし、色んなお祭りなんかも行われたりしていて、毎日が“楽しい”。
町の人の話によると、この町はいつでも平和で人々は楽しみ以外知らないくらいに毎日を楽しんでるんだって。
良いなぁ~こんなところに住めたら毎日楽で楽しいだろうな~、そんなことを思いながらボクは数日間この村で過ごした。
「おい、そろそろ行くぞ」
四日目の朝、ここに来てからずっと黙りっぱなしだったブレインが口を開いた。
行くってどこに?ボクは遊び疲れた体を起こしながら聞いた。
「次の目的地だ、お前は博士から託された使命を忘れたのか?」
ボクはまだここでみんなと遊んでいたいよぉ、ずっとここに居たいくらいなんだよ…と自分の意見を言おうとしたが、ブレインの言う「博士から託された使命」はボクにとってもとても大事な使命だったことを思い出し、陽気な人々との別れを惜しみながら町を後にした。
町の人々は最後まで笑顔のままだった。
そうそう、ボクの使命についてまだ話してなかったね。
ボクの使命は、“人の感情”集めること。
ボクの体には人間と接することでその人の感情をトレースし、更には保存することができる装置が入っているらしいんだ。ボク自身、仕組みはよくわかっていないんだけどね。
ボクを創った博士は、ロボット工学だけでなく様々な分野を研究している。
その中でも、今回のボクを使った研究には一番力を入れているんだ。
だからボクも精一杯頑張らなきゃ!
おっと、そうこうしてる間に次の目的地に着いたみたいだ。
次にボクがたどり着いたのは、飢餓や貧困に苦しんでいる町だった。
町は寂れ、人々は苦しみを訴え続けていた。
ボクはまだ幼い一人の少年に出会った。
荷物の中からお菓子を取り出してその少年にあげた。ブレインの指示だった。
ボクはその少年に話を聞いた。
彼はいわゆる戦災孤児であり、戦争で家族を失い独りぼっちになったらしい。
ボクは彼の心をトレースした。
辛い、苦しい、そして何よりも…“哀しい”。
彼の心は悲哀に満ちていた。
「次だ、行くぞ」
嫌だ、もう動きたくない。
こんな惨状を目の当たりにしたら、もう世界なんてどうでもよくなるただ、哀しい。
「お前が動こうとしないのなら、私が連れてゆく」
ブレインにはボクを強制的に動かせる能力がある。
だが今はそんなことどうでもいい…。
「ここが、最後の目的地だ」
そこは先ほど町からさほど遠くないところにあった。
あの町と同じく町の家々は破壊されていた。
だがあの町と違い活気はあった。
そう、戦争だ。
その町は戦地となっていた。
銃声が、怒号が、そして血が飛び交う。
ボクの肩に何かが当たった。銃弾だ。
一人の兵士がボクに向かって突進してくる。
だがボクの体は長旅に耐えられるよう、強固な装甲に覆われている。ボクに銃は効かない。
ボクはその兵士を捕らえ、話をした。
最初のうちは抵抗していたが、逃げられないとわかって開き直ったのかその兵士はべらべらと喋り始めた。
ボクは彼の話を聞きながら、彼の心をトレースした。
彼等は復讐の為に戦っているのだという。
その心の根本にあるものは憎しみ…“怒り”。
彼は自慢気に自分の武勲を語り出した。敵の戦車を命懸けて破壊したこと、この近くの町でも前線で戦い『町民のふりをした』敵を殲滅したことなど。
この近くの町…?
ボクはブレインに頼んだ、この近くの町のリストを出してくれと。
ブレインはボクの脳でありデータベースでもある。
この近くにある町は、一つだけだった。
あの飢餓や貧困に苦しんでいた…あの少年が居た町だ。
刹那、ボクはその兵士を殴っていた。何度も、何度も。
ブレインが強制的にボクを止めるまで、その兵士が生き絶えてもなお殴り続けた…ただ、“怒り”の任せるままに。
目を覚ますと、ボクは博士の研究所に戻っていた。
ブレインが連れて帰ってくたのだった。
目の前には博士がいた。彼女はその端正な顔立ちをくしゃくしゃにして泣いていた。
ボクは尋ねた、何故泣いているのかと。
「貴方の体に保存された感情と、貴方の記憶を見たからよ。辛い思いさせちゃったわね…ごめんなさい」
そう言って博士は頭を下げた。
でも、とボクは言った。
「ボクは旅に出て良かったと思っています。博士の為っていうのもあったけど…何より、自分の為になったと思っているから。
それにね、博士。楽しいこともあったんだよ」
ボクは笑顔でそう言った。
博士の涙は止まっていた。
「博士。ボクはここに帰ってきて…博士にまあ会えて…とても嬉しいんだ。これが、“喜び”なんだね」
博士の顔に、笑顔が戻った。
人間は“喜怒哀楽”といった様々な感情を持っている。
皆さんはどの感情が必要だと思いますか?
ボクは、どれも大切な感情だと思います。
“怒り”や“哀しみ”は必ずしも悪い感情とは言えない。逆に“喜び”や“楽しさ”も、必ずしも良い感情とは言えない。
それぞれの感情と向き合ってゆくこと、それが大事なんじゃないかとボクは感じました。
これが今回の旅を改めて振り返ってみての、ボクの報告です。
