<タレントの卵・営業日記>その6 | キャリアウーマンのそれぞれ -「タレントの卵・営業日誌」連載中-

<タレントの卵・営業日記>その6

これは先日からの「無謀なる野望 」の続きです。


先に序章にあたる部分と、<タレント養成所時代>

<タレントの卵・営業日記>その1 からをお読みになってから、お楽しみ下さい。




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タクシーがマンションの入り口の前に着いた。
料金は3000円ほど。
かずみちゃんは滝沢さんから貰った一万円で支払った。



かずみちゃんの住むマンションの隣には小さなコンビニがあった。


「みきちゃん、ジュース買っていこ。」


「あ、うん・・・。」


私はかずみちゃんの後に付いて、コンビニに入った。
かずみちゃんはジュースやお茶、お菓子をカゴに入れてレジに向った。

私が慌てて財布を取り出すと


「滝沢さんから貰ったおつりがあるから、いいよ(笑)」


と、さっさと支払いを済ませ、マンションへ向った。




エレベーターのついていない5階建てのマンション。
かずみちゃんの部屋は2階にあった。


「散らかってるけど、どうぞ。」


促された私は、かずみちゃんより先に玄関に入った。
中を見ると台所部分が少し広めの1LDK。
奥の部屋は畳になっているようだ。




靴を脱いで、1歩入った台所のあたりで立っていると
かずみちゃんがテキパキと部屋の片付けをし始めた。


「そんなところに立ってないで、上がって~。」


「あ、お邪魔します。」


かずみちゃんは読み掛けの雑誌などを部屋の隅に置き
壁際の小さいテーブルを引っ張り出してきた。





出されたテーブルの前に私が座っていると
かずみちゃんがさっき買ったジュースに氷を入れて運んできてくれた。


「今日はごめんね。突然呼び出したりして・・・。」


「ううん。私こそ、滝沢さんとのアフターの邪魔しちゃって・・・。」


かずみちゃんは3段ほどの低い整理ダンスの上から灰皿を取り
バックからタバコを取り出し、火をつけた。
私もつられるように、自分のタバコを出して火をつけた。


「今日は滝沢さんがお店に来るのがわかってたから
 みきちゃんについてきて貰いたかったの。」


かずみちゃんは細長く煙を吐き出した。





滝沢さんはかずみちゃんのお客さんで、同伴もしてもらってるはず。
かずみちゃんが早出の日は、アフターに誘われるのもわかっていたのだろう。

今までのかずみちゃんなら、2人きりでアフターに行っても
上手くかわして危険なこともなかっただろうに・・・今日に限って何故?
私にはかずみちゃんの意図が読めなかった。


「2人きりの時、何かマズイことでもあったの?迫られたとか・・?」


「あー・・・迫られた方がマシだったかもしれない。(笑)」


「へっ?!」





お店ではかなり紳士的な態度で飲んでいる滝沢さんが
まさか、かずみちゃんを強姦したとか・・・?!

一瞬、私の頭の中で想像が妄想に変わりかけた。






「あ!みきちゃん、何か変なこと想像してるでしょ?!
 違うよ、違う!襲われたとかじゃないってば・・・(笑)」


「顔に出てた?!(笑)」


「ステージを降りたら、普通の高校生だねぇ?
 すぐわかったよ。みきちゃん、顔に出まくり(笑)」


まだまだ人生の修行途中の私。
心の中で思ったことが、すぐ表情に出ていたようだ。







「んー・・・じゃあ何?何があったの?」


下手に気を使って遠回しに会話を駈け引きすることを諦めた私は直球な質問を投げた。


「うん・・・実はさぁ・・・。
 滝沢さんからプロポーズ?みたいなこと言われて・・・。」


「えっ?!良かったじゃん♪一応社長さんだし。」


「う~ん・・・それだけだったら相談しないってば。」






かずみちゃんの話しを要約すると、次のようなことだったらしい。


同伴の前やアフターの時、食事に行ったり買い物に付き合ってあげたり、もらったり
そんなプチデートのようなことを繰り返しているうちに
滝沢さんが、かずみちゃんに対して本気になった。

結婚を考えてるから店を辞めて欲しいと滝沢さんは思っている。


そして・・・
滝沢さんとかずみちゃんの仲の良さをママが快く思っていないらしいこと。





フムフムとここまで話しを聞いていたが、私は不思議に思った。


何故、ママが快く思わないのだろう・・・?

確かにお店のルールでは、お客さんとの店外恋愛は禁止だけど、結婚となれば話しは別なんじゃないの?


でも、かずみちゃんに店を辞められるとホステスの平均年齢が上がって
お客さんが減るから、ママは快く思わないのだろうか?


かずみちゃんが滝沢さんを好きだったら、それで問題ないんじゃない?
ママが反対しようと、一緒になりたかったらそれでいいじゃん。


ここまで考えて、私はかずみちゃんに質問した。





「ねぇ、なんでママが快く思ってないと、かずみちゃんは思ってるわけ?」


かずみちゃんに全く心当たりがないなら、一緒に考えてあげたいし
心当たりがあるなら、解決方法を考えてあげたい。
そんな純粋な高校生の気持ちからの質問だった。


「うん・・・・・」


かずみちゃんがしばらく黙り込んだ。






こういう時、私が慌てて話し掛けるより
かずみちゃんから話し出すのを待つ方が良いことを本能的に知っていたので
私は同じように黙ったまま、かずみちゃんから話し出すのを待った。


冷えたオレンジジュースの入ったグラスの水滴を指先で触っていたかずみちゃんが
目線をグラスに向けたまま呟いた。


「滝沢さん・・・ママと寝たことあるんだと思う。」




エェッ!?(* □ )~~~~~~~~ ゜ ゜
鬼瓦権蔵のような顔のママが?!

滝沢さんと?!



私は口から心臓が飛び出すかと思うくらいに驚いた。
年齢だって1回り以上違うように見える。
どこをどう考えれば、あの2人が大人の関係になれるんだろう?!

私は目を丸くしたまま絶句した。


滝沢さんに惹かれているかずみちゃんの女の勘なのか?
それとも単なる勘違いなのか?


勘違いであってくれ・・・



私は祈るような気持ちで、かずみちゃんの次の言葉を待った。







また続きかよ?!と思っても 1クリックヨロシク<(_ _*)> (笑)



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