この小説が大好き。
大好きっていうか、野坂昭如みたいに、わたしは目を逸すことができない。
井上光晴の原作小説は、何年も前に読んだ。
部落と被爆者で、差別し合ってるのが悲しいなあと思ってた。
戦争がこういう考え方を作ってしまった、戦時下(終戦直後ですけど)ではみんな、正常な考え方できなかったんかなとか思ってたけど、今回これ見てなんかそれも違う気がした。
「あの人よ、うちにつまらん事したのは」とく子ちゃんの気丈な瞳がとても印象的。
医者の奥さん、強くてうつくしかった。
カルピスに混ぜるくだりはゾッとした。
部落だなんだの前に、娘が乱暴されて殴り込みに行くの当然やん。
最後親父が「仲間を売った」とかなんとか息子を責めるのマジキチですわ。
医者、最後助けろし。
のぶおは逃げて逃げてどこに行くんだろう。
幸せな妊娠をした、幸せそうなマダムたちの笑顔も、不穏なBGMと重なると不気味でしかない。
ネズミとニワトリは何かの例えですか?
小競り合いをしててもみんな同じに原爆に焼かれちゃったってこと?
わたしこの小説、さいしょ群像劇だと思ってたんだあ。
暴行した人、された人、被爆者なのを隠す人、関係ないのに被曝症状出る人、被差別部落の人。
この飲んだくれのお医者さんは、暴行(ではないけど孕ませて逃げた)経験、被爆者、部落と三重苦なんですよね。
それぞれ違う立場の人たちが出てくるけど、お医者さんは全ての立場の苦しみを知ってるわけよね。
何か……できないでしょうかね。
差別をなくすには、差別してる・されてるってことをまずオープンにしないとすすまないのでは。
それは本人たちにとってはとても辛い事だろうけど、
それなくして問題解決はできないとおもう。