ヴェル・エールに捧ぐ | 記憶と空

記憶と空

日々の記憶の欠片。

風が吹いていた。

君の亡骸を抱いたまま、僕は時の経つのも忘れてただこの広い空を見上げていた。
冷たくなった君の体。
頬を染める色はないけれど、その陶器のような白く美しい顔。

ずっと離したくはなかった。
僕は何度も何度も抱きしめてキスをして…。
僕の中から君の姿が消えないようにその行為を繰り返した。

僕は後悔していた。

何故、離れてしまったのか。
何故、信じていられなかったのか。
何故、ずっと抱きしめていなかったのだろうと。

何度考えても答えは出なくて…。
君の元へ逝きたいと願っても、そんな事は許してくれる筈もない事も十分にわかっていた。

それは君と交わした約束。

あれからどの位の時が流れたのだろう。
僕はまた此処に立っている。

君を失ったあの日。
自分を責めたあの日。
もう一度、君に会いたいと願ったあの日。

僕の願いは叶わなかった。

でもこの場所に来る度、優しい風に君を感じた。
もう二度と会えないと思っていた。

けれど…。

ああ、君はずっと此処にいたんだね。

MALICE MIZER「ヴェル・エール~空白の瞬間の中で~」