寒空の下で、パックリ割れた唇に、大根の煮物が沁みる。

夜風に縮こまった金玉とするめの皺がそっくりで、オレの無気力とスーパーの売れ残りの油の浮いたドーナツの穴も瓜二つ。

レンジで加熱し過ぎて皿にこびりついた餅のような疲労感がオレの心の粘膜をカパカパにしても、それを潤すアロマなんて無い。

オレは機械の磨耗そのもの。

オレは時間の消耗そのもの。

地位より富より眠りたい。

惰眠をむさぼって金玉に苔をむしたい。

巣穴に籠もってLEGOで戦車部隊を作っていたい。

諦めのように曲がらなくなった薬指をいたわりながら、大学ノートに迷路を描いていたい。

がんばるほどに退屈になって行く、再再再再再再再再再再再放送のドラマを観ているかのようなオレの人生のような迷路を。

その奥深くでオレは冬眠するよ。

ところが入り口から、春の日差しのようなキミの声が聞こえてきて、オレの強張った心身の節々をゆっくりと溶かして再稼動させる。

それは目覚めそのもの。

夢の中で食べたチーズ味のスナックそのもの。

オレが描きたかった迷路のゴールそのもの。

キミの声すら夢であったとしても、オレは性懲りもなく寒空の下へ飛び出すよ。

再放送の妄想と再再再再再再再再再再再放送の屈辱の狭間のラテ欄へと。

根が恥部