今から約35年前、1983年、
ローマ教皇ヨハネ・パウロ二世が来日し、
原爆の被害があった広島と長崎でミサを行った。
その時, 教皇は日本語で「戦争は人間のしわざです。」
「戦争は死です。」と話し核兵器の廃絶を訴えた。
小説「人間のしわざ」は、ヨハネ・パウロ二世の
広島と長崎のミサから30年後に書かれた作品で、
作者は芥川賞作家の青来有一。
ヨハネ・パウロ二世の言葉、「戦争は人間のしわざです」を
テーマに書かれた小説である。
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人間のしわざ
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青来有一は、長崎県長崎市生まれ、
市役所に勤める傍ら小説を書き、「ジェロニモの十字架」で
第80回文學界新人賞を受賞し作家デビュー。
2001年、「聖水」で第124回芥川賞受賞。
その後も役所勤めを続け、現在、長崎原爆資料館長でもある。
「人間のしわざ」は、家庭を持つ女「わたし」が語り手で、
大学時代、相思相愛でありながら行き違いがあって
別れた男と30年後、再開し海辺のホテルで情事に耽る。
男は戦場カメラマンとなって、世界各国の紛争地で
死体と流血と廃墟を撮り続けている。
女は、激しい性愛に耽るなかで、
男からソマリアの内戦での「黒人兵の死体」や、
チェチェン紛争での処刑の光景など、
悲惨で苛酷で残虐な「人間のしわざ」を聞かされる。
そして、切支丹への弾圧で命を落とした
殉教者たちの姿をそこに重ねる。
戦地の惨状が「人間のしわざ」なのに、
神は何もしてくれないのか・・・・・・・、
人間に、救いはないのか・・・・・・・、
男は、神の不在を証明するために、
アジアや中東、アフリカ等の過酷な戦場で、
悲惨で残忍な「人間のしわざ」を撮り続けている。
「人間のしわざ」の結末は・・・、
二人は情事のあと、海岸に向かい、
男は女の手を引き海の中へと入って行く。
男の手が離れ、波に飲み込まれ溺れかかるが
必死で海岸の向けて泳ぎ始め、
やっとの思いで砂浜にたどり着く。
ふと海岸沿いをみると、男も
海岸に打ち上げられ生きていたのだ。
作者は、この小説の結末で
人は未来がなくても救われなくても、
生きていかなければならないと
言いたかったのだろうか。
不毛で悲惨な戦争や原爆や原発事故などの
「人間のしわざ」に対して、私たちは、
なしうるすべを持っていか。
神は・・・・・、
なぜ、神は「人間のしわざ」から
人を救わないのだろう、
神が「人間のしわざ」から
人を救わないなら、
人は、「人間のしわざ」から、
この不毛で未来のない時代から
人を救うしかないのだろうか・・・・・・・、
重くて、苦しい小説である。
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