季節は変わった。時代は変わった。ブログは放置してた。無責任に書きなぐった話を読み返して、9年ぶりかな😩😩続きを書くか、新しいのを始めるか、両方にして訳分からなくなるか、思案中🤪😜

英明に1本の電話があった。

雪花の母、響子の実家からだった。響子が、癌に侵され余命いくばくもないこと、そして、一目、雪花に合いたがっているので、合わせてやってほしいとのことだった。

英明は、今更、母親と言われても、雪花が混乱するからと言って断った。

それ、以後も何回か懇願する電話があったが、英明は頑として受け入れなかった。


雪花は、何も知らずに過ごしていた。

中間試験の時だった。いつもより早く帰宅した。真理子は出かけているらしく、家には誰もいなかった。

雪花は自分の部屋で、試験勉強をしていた。その時、玄関のチャイムがなるので、出てみると、宅配の人がいた。

「サインお願いします」

「はい」

とサインをし荷物を受け取り、何気なく差出人を見ると、京都からだった。

香典返と荷物内容のところに書いてあった。

雪花は、英明宛だったが迷わず、開いた。

薄墨で母、響子の死と葬式、それに対する、形式的な文言が並んでいた。

「!」

雪花は、差出人の電話番号に電話をかけた。

何回かのコールの後、女性が電話に出た。

「はい、室生でございます」

一瞬、雪花は言葉に詰まった。

「もしもし」

先方が問うてくる。

「あっ、はい、あの、雪花ですが・・・・」

今度は先方が詰まる。

雪花は続ける。

「あの、母が亡くなったんでしょうか?」

「・・・・・・雪花ちゃん・・・・・・」

電話の向こうで泣き崩れるのがわかる。

「あの、もしもし」と雪花が続ける。

暫くして、男の人の声に変わった。

「雪花ちゃんか?」

「はい」

「私は、響子の父、君のお祖父ちゃんだ。さっきのは君のお祖母ちゃんだが突然のことで、気が動転してすまないね」

雪花は祖父から、母が最後に雪花に会いたがっていたことを聞いた。

雪花は、言った。

「明日、そちらに行ってもいいですか?」

祖父は一瞬言葉につまり

「しかし、学校もあるだろうし、お父さんが・・・」というと雪花は、

「明日で試験が終わります。早くに学校が終わるので、学校が終わったら、そちらに伺います」

「しかし、雪花ちゃん、お父さんが反対なさるだろうし」

雪花はしばらく無言だったが、「明日、伺います。」と言った。

祖父も、反対は出来ないと思ったのか、

「じゃあ、何時の新幹線に乗るか連絡してくれるかな?」

「わかりました。では、今日は失礼します」と言い電話を切った。


(続く)




雪花は中学3年になった。

皐月とは時折会って、おしゃべりをした。

相変わらず多忙な日々を送っていた。


絢美は中等部に進んだ。編入当初は中学はJ女子を狙うと言っていたが、受験勉強が面倒で結局そのまま、上に上がった。

絢美は思ったより身長が伸びないのが、悩みの種だった。少し、ぽっちゃりしてきた。

(はあーあ、もっとスラッとしたスタイルにならないかな・・・・・バレエ続けてればよかったかもなあ・・・・今更身体動かないしなあ・・・・)

絢美は時折、皐月を駅で見かけた。(結構、かっこいいかも・・・・・)


絢美の学校で学園祭があった。父と母がやって来た。

絢美は、3年生の女子生徒に囲まれている、背の高い男の子を見つけた。

(杉浦くん)

皐月は友達が、この学校にいるので、学園祭に遊びに来たのだった。

絢美の横に同級生が寄ってきて

「ねえ、かっこいいと思わない」と言う。

絢美はとっさに「知ってるよ、あの人」

「えっ、じゃあ紹介して・・・・」

「いやだよ」

「なんで、知り合いなんでしょ」

「そうだけど」

「知り合いなんて、嘘でしょ」

「違うよ、本当に知ってるもん」

「嘘だ~」

「本当だよ」

「じゃあ、紹介してよ」と、食い下がる。

絢美は、仕方なく、皐月に近づいていった。

「あの・・・・」

皐月が絢美の方を向く。

「いつも、お姉ちゃんがお世話になってます」なんか、変な挨拶だが、それ以上の言葉が思い浮かばなかった。

皐月は普通に「ああ、雪の妹さん」と言う。

絢美はホッとした。

絢美は少し、甘えたように「あの、もしよかったら、学校案内しましょうか?」と、言うと皐月は

「ありがとう、でも、友達がいるから・・・」と断った。

横から、同級生が絢美のわき腹をつつく。

「あっ、あの、この子、同じクラスの宮園さん、紹介しろってうるさくて・・・」と少し拗ねたように言った。

皐月は、笑いながら「ああ、どうも、宜しく」と言う。

そして皐月は「じゃあ」と言うと、友達と立ち去った。

3年生の女子が絢美のことを見ていた。

内心、どきどきしていた絢美だが、平気そうな顔をして、同級生を促し立ち去った。


絢美は思った。(お姉ちゃんと皐月は付き合ってるのだろうか?もし、自分が皐月と付き合ってるってなったら、お姉ちゃんはどう思うだろうか?)

絢美はいろいろと考えた・・・・


(続く)



皐月は、雪花に何がいいと聞き、雪花が「レモンティー」と答えると、コーラとレモンティーを注文し、空席を探した。

2人掛けの席につくと、皐月はレモンティーを雪花に渡しながら、「結構、濡れたな」といい、自分のハンカチを差し出したが、雪花は、「ああ、タオル持ってるから」といい、皐月のハンカチを断った。

「学校来なくなったけど、あれからどうしてた?」

「上海に行ってた」と言い、笑った。

「ほんと?」

「うん、本当」

皐月の父親は仕事の関係で上海に単身赴任している。皐月の不登校に手を焼いた母親が、環境を変えようと、皐月を連れて父親の所に行ったので、皐月は上海に1年ほど滞在したそうだ。

父親はまだ向こうにいるとのことだ。

皐月の話だと、日本人学校に通って、日本人の多いマンションに住んで、日本食を食べてほとんど日本での生活と変わらなかったそうだ。

街は広く、雑多で皐月は面白かったが、空気の悪さと人の荒っぽさに母親は閉口したらしかった。

そして、1年ほど滞在して、日本に帰国した。今は、地元の公立中学に通っている。

「雪、学校、どこいってるの」

「U大付属」

「やっぱな、お前、頭いいもんなあ」

雪花はあいまいに笑っていた。

「でも、よくわかったね、あんなに離れてたのに」

「あはは、お前わかりやすいから」

「なんで?」

「立ち方とか、歩き方とかさあ、なんか特徴あるからな」

「あっ、そうか」

「ヴァイオリンも続けてるのか」

「うん」

話しているうちに雨がやみ、皐月と雪花は席を立った。

皐月はPCのメールアドレスを雪花に渡した。雪花は自分のアドレスを渡して、雪花の自宅近くで別れた。


珍しく、家族揃っての夕食だった。雪花は無言で箸を口に運ぶ。

絢美は学校のことをしゃべっていた。絢美はあの件以来、雪花を無視していた。

そして、意味ありげに、「お姉ちゃん、今日、男の子と帰ってたよね?誰」と聞いた。

「ああ、小学校の同級生、帰りに偶然会ったの」

「ふ~ん、なんか、すごく仲よさそうに見えたから」

「ああ、小学校の時、結構仲よかったからね、途中、転校してまた帰って来たんだって」

「そう」

絢美は淡々と答える雪花が面白くなく、話をやめた。


(続く)


英明はやっとの思いで、絢美の転校先を見つけてきた。

R学園、私立の中堅よりやや下になるが短大までエスカレーター式に上がれる。地味な学校ではあるが、校風はのんびりしていて、いじめの問題もないそうだ。

(絢美には会ってるだろう・・・・無理して受験なんかしなくてもいい、楽しく過ごせばいい・・・)


「えーっ、R学園~」絢美は転校先を真理子から告げられた時、不平を漏らした。

「何、言ってるの、パパ大変だったのよ、私立に編入なんて、お金もかかったし・・・・」

「だって、J女子ってパパ言ってたのに」

「J女子なんて、お勉強大変よ」

「だって~」

「だってじゃないの、落ち着いたいい学校よ。パパ苦労したんだから、文句言っちゃだめよ」

「う~ん」

都心にある、J女子や雪花の通う国立付属と違い、R学園は郊外にある。制服も好みではない。なんとなく地味な感じもする。

(あ~あ)絢美はため息をついた。なんか自分ばかり損をしているように思った。


絢美はR学園に編入した。おとなしい子が多かった。学校は思ったより悪くなかったが、通学に1時間近くかかるのが、思ったよりきつかった。絢美はバレエをやめた。今までも、特に好きというのではなく、雪花がやっていたから続けていたのに過ぎなかった。

(しかし、お姉ちゃんよく、あんな生活できるなあ。塾にヴァイオリン、バレエに週3回とはいえ、学校のダンス部にも入ってる・・・・・)


雪花は、毎日、多忙なスケジュールをこなしていた。

ある日、バレエのレッスンの帰り、突然のにわか雨に見舞われた。どこか雨宿りの場所を探し、走っていると、

「雪!おい、雪だろ!」

雪花が雨を通して、声のほうを見ると、背の高い男の子が、傘をさしてこっちに走ってきていた。

雪花を傘に入れると、「覚えてないか?」

「皐月?」

「久しぶり!」

「行こう」皐月は雪花を引っ張るように、近くのファーストフード店に入った。


(続く)