敦賀原発申請で活断層見逃しか 日本原電、耐震性検討せず


日本原子力発電が2004年、敦賀原発(福井県)3、4号機増設を国に申請した際、敷地内を通る断層は「5万5000年前以降の活動はない」と耐震性検討の対象にしなかったが、実際は1万数千年前以降という新しい時期に活動した可能性が高いとの分析結果を、中田高広島工業大教授(地形学)らがまとめた。


当時の原発耐震指針でも対象にすべきだったとの結果。中田教授は「地質学の常識を無視した意図的な評価だ。耐震安全性を緊急にチェックするべきだ」と話している。

1、2号機の原子炉建屋から約300メートルにあり、南側の海底に延びる浦底断層。原電は、最大長さ約6.5キロで耐震性に影響を与えないとしているが、政府の地震調査研究推進本部は、長さ約25キロでマグニチュード(M)7.2程度の地震を起こすとしており、既に断層規模の評価にも疑問が指摘されている。

原電は増設の申請に向け、断層が通る敷地内の2カ所をボーリング。地層に含まれる火山灰などから、5万5000年前より古い時期に地震が起きたと結論付けた。うち1カ所は、3万-1万3000年前の砂礫(されき)層の上に、数千万年前より古い時代の岩が張り出していた。原電は砂礫層より下だけが断層で、上は断層ではないと評価した。

中田教授によると、古い地層や岩盤が新しい地層などの上にある場所は、断層が動いて古いものを押し上げたと考えるべきで「これを断層でないと言ったら、すべての研究が否定される」と強調している。

また、渡辺満久東洋大教授(地形学)は「岩の上にたまっていた砂礫層が、地震で突き出した岩の下に流れ込んだとしか解釈できない」と指摘。近くの複数の河川の流れが断層のずれで同じ方向に曲がった痕跡があり「1万数千年前以降にM7級の大地震が起きた可能性が高い」としている。

04年当時の耐震指針は、活動時期が5万年前より新しい活断層を検討対象にしていた。06年に「13万-12万年前以降」と指針が改定され、原電は周辺断層の再評価をしている。


経済産業省原子力安全・保安院の森山善範原子力発電安全審査課長の話 ボーリングによる浦底断層の活動性評価は根拠が不十分だったので、トレンチ(溝)を掘って断面を直接確認するよう2005年に日本原子力発電に指示している。ボーリングだけで評価するのには問題があると考えている。3月には再評価結果が報告されるので、それを待ちたい。


日本原子力発電の話 経済産業省原子力安全・保安院の追加調査の指示を受け、浦底断層についてもあらためて調査中で、新しい原発耐震指針に照らした評価を進めている。原発への影響についても調査結果を反映させ、耐震安全性を評価したい。

(中日新聞 2008/01/30)