【昔から事故だらけの原発 1976年~の事故】

原発「後処理」費用、30兆円にも 電事連の長期試算で


原子力発電所で発電をした後の放射性廃棄物処分や発電所撤去、核燃料再処理などのいわゆるバックエンド(後処理)費用が、電気事業連合会による初の長期試算で、2045年までに全国で約30兆円にのぼることが明らかになった。電力自由化で競争が激しくなるなか、電力業界からは、こうした負担を軽くするため、政府の新たな支援策のほか、核燃料再処理計画の凍結を求める声も浮上しつつある。電力自由化論議の本格化を控え、電事連が中心となって昨年後半から試算を積み上げてきた。


原発の使用済み核燃料から再利用のためのプルトニウムを取り出す再処理工場が、青森県六ケ所村で05年7月に運転開始を予定している。試算はこの工場の稼働期間を40年と仮定し、同工場を止めるまでの総費用を計算した。


また、現在52基が商業運転中の原発についても、稼働期間を40年と想定し、一定の増設を見込んだうえ、解体・撤去のための積み立て費用や高・低両レベルの放射性廃棄物の貯蔵・処分など一連の費用を織り込んだ。


その結果、六ケ所村と全国の原発にかかる総費用は約26兆6000億円に達した。これには、


(1)再処理中に発生する超ウラン元素(TRU)廃棄物の処分


(2)再処理工場そのものの解体・処分のための積み立て費用は含まれていない。


(1)と(2)については、現在、管理対象の廃棄物となる放射線レベルなど処分基準が制度化されておらず、「ルール次第で大きく変動する」(関係者)ためだ。


概算では、TRU処分を3兆円程度、工場の解体・処分の積み立てを1兆円程度と見

積もり、総額は約30兆円という。うち、再処理関係だけで10兆円程度とみられる。
電事連は期間中の原発の総発電電力量は、稼働率を8割と仮定して約16兆キロワット(kW)時と試算しており、1kW時あたり2円弱の負担となる。


原発の撤去や再処理費用の一部は積み立てが始まっており、すでに電気代に織り込まれている費用もある。しかし、電力各社が再処理工場に長期的に支払う費用負担などは含まれていないうえ、事故などで工場の稼働が止まると、人件費や修理費、金利などで毎年800億~1000億円の損失を生み、新たなコストが加わる。


電力業界はもともと、政府とともに「原発の発電コストは安い」とPRしていたが、後処理に巨額のコストがかかるとの試算は、その主張と矛盾しかねない。すでに、「廃棄物の発生者責任が原則」(経産省幹部)と電力会社の負担を求める政府と、公的支援を求める機運が高まっている電力業界との対立も生まれつつある。


さらに、再処理で取り出したプルトニウムを使ったMOX燃料を通常の原発で使うプルサーマル計画には、各地の抵抗が強いことも重なって、コストの面から計画の凍結を求める意見も業界内外で出始めている。

(朝日新聞 2002/03/31)